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チートで怠惰な聖女様のために、私は召喚されたそうです。〜テンプレ大好き女子が異世界転移した場合〜  作者: 櫻月そら
【第1章】異世界ものは大好きですが、フィクションで間に合ってます。
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第80話 お姫様と鷹 1

※2025年2月17日

鷹のロードのセリフがあまりにも読みにくいので、漢字も混ぜて改稿いたしました。

 

 アリアは予定通り、夜まで温室で過ごして私室へと戻ってきた。

 魔導師の塔から運ばれる食事はどれも美味しく、食中毒も起きなかった。


(運ばれ方には驚いたけど……)


 城内の厨房で作られた料理も、今日は問題がなかったとアルフォンスから手紙が届き、一安心したところだ。


 ニーナが下がると、部屋の中がやけに静かに感じる。


(日本にいた時もこっちに来てからも、夜はずっとひとりだったのに……)


 気持ちが沈むのは、やはり昨夜のアーヴィンとのやり取りが頭から消えないせいだろうか。


 アリアの手を振り払ったあと、彼は焦って「違う」と言い、他にも何か伝えようとしていた。その言葉を、嫌みも込めながら遮ったのはアリア自身だ。


(でも、それなりに傷ついたし……。あれくらいの嫌みなら返しても良くない? …………いや、良くはないか)


 せめて、彼の言い分を聞いてから怒るべきだったのかもしれない。そう思うと、アリアの気分はさらに深く沈んだ。


(今夜はライトを多めに点けておこうかな。うす暗い部屋にいるから、余計に落ち込むのよ)


 照明を点けようと椅子から立ち上がった時、窓ガラスをコツコツと叩く音が聞こえてきた。


(な、何!?)


 音がする方へ振り仰ぐと、大きな翼を広げてホバリングする鷹がくちばしで窓をノックしている。


(この()って……、ロード?)


 アリアが躊躇せずに窓を開けると、ロードは音もなくテーブルの上に舞い降りた。


(今さらだけど、この()を部屋に入れても大丈夫なのかな……。たしか、一度亡くなってから魔獣になった、って殿下が言ってたよね)


 アリアの視線を気にすることもなく、ロードはテーブルの上で羽繕いをしている。

 そして、満足したのか、スッとアリアの目をまっすぐに見つめた。


「オヒメサマ、ヒサシブリ!」


「ひ、久しぶり?」


 あの夜、図書室の前をものすごいスピードで通り抜けていった姿を、アリアも一瞬は見ている。

 思わず疑問形になったが、「久しぶり」という挨拶は間違っていないのかもしれない。

 

 しかし、問題はそこではなく――。


「鷹がしゃべった!?」


「世ノ中、シャベル鷹クライ居ル。慣レロ」


「あ、はい。努力します」


 この世界なら、しかも魔獣となれば、人間の言葉で会話できる鷹がいても不思議ではないのかもしれない。


「話せることは分かったけど、私はお姫様じゃないよ? 聖女でさえ、(仮)なんだから……」


「オヒメサマハ、オヒメサマナノッ!」


「う、うん? 分かった……」


(何かご立腹のようだし、まぁ、良いか)


 「お姫様」と呼ばれるのも、おとぎ話のプリンセスのようで悪い気はしないため、アリアは受け入れることにした。


「ところで、あなたはロードよね? 何しに来たの? あ、もしかして、殿下に言われて監視に!?」


「ウーン。用事ハ、イロイロ。デモ、監視ジャナイヨ」


「そっか」


 ロードの答えにアリアは胸を撫で下ろした。


「私からもお願いがあるんだけど……。良いかな?」


「内容ニヨル」


「抱っこさせてくれる? 今、すっごく癒やしが欲しいの」


 ワクワクしながら腕を広げるアリアを見て、ロードは人間のように溜め息をついた。


「シカタナイナ。特別ダゾ?」


 そう言ったロードは、大人しくアリアの腕の中に収まった。


「あー、これがいわゆる『もふもふ』かぁ。ちょっと筋肉質だけど癒やされるー。いつか、ふくろうカフェに行ってみたかったんだよねぇ」


「オナジ猛禽類ダケド、一緒ニスルナ!」


「すみません」


 どうやら、鷹としてのプライドを傷つけてしまったらしい。

 しかし、抱きしめたり、頭や背を撫でても嫌な顔をしないところを見ると、気は許してくれているようだ。


「オヒメサマ、イイ匂いガスル」


「え、食べないでよ?」


「チガウ。ナツカシイ匂イ」


「懐かしい……? 何だろ。日本人の匂いとか?」


「チガーウ。違ワナイケド、チガーウ。血ノ匂イ」


「血の匂い? こっちに来てから血は流してないはずたげど。あ、でも、月の……」


「ソレモ、チガーウ。ディー・エヌ・エー」


「DNA!? 血って、血縁のこと?」


「ソウ」


「もしかして、私のお父さんとお母さんのこと知ってるの!?」


「ソレハ、知ラナイ。ク、クルシィ……」


「あ、ごめんね」


 思わず抱きしめる力が強くなってしまった。


「オレモ、ゴメンネ。知ラナクテ」


「ううん、ロードは悪くないよ。ごめんね」


 お詫びに頭や首まわりを撫でると、彼は気持ちよさそうな顔をした。


「オレ、オヒメサマ丿子ニナル」


「え、ダメでしょ。ちゃんと殿下のところに戻らないと」


「アーヴィン、鳥ヅカイ荒イ」


「あはは、そうなんだ。でも、ロードがいなくなったら殿下が寂しがるよ」


「ソウカナー?」


「そうだよー。……さっき色々と用事があるって言ってたけど、内容を教えてくれる?」


「エートネェ……。オヒメサマノ周リ、ミーンナ過保護。ダカラ、直接ハナシニ来タ」


「え!? 私に話すこと、殿下は知ってるの?」


「ウウン、ナイショ」


「それ、ロードは大丈夫なの?」


「ドウカナー? デモ、話サナイト、ッテ思ッタカラ」


「そう……。ありがとう。聞かせてくれるの、私は嬉しいよ」


 魔獣の鷹から隠されていた情報を聞かされるとは、さすがに想定していなかった。

 しかし、いつまでも自分だけが蚊帳の外であることに不満を抱いていたアリアにとって、真相を知る不安よりも嬉しさのほうが大きかった。

お読みくださり、ありがとうございました(ꈍᴗꈍ)


やっと、出したい(出さなければいけない)シーンの一つに到達しましたε-(´∀`*)ホッ

鷹のロード。

気に入っている上に重要なキャラなのですが、セリフがすべてカタカナで読みにくくて申し訳ないです(汗)

これからも、ちょこちょこと登場します。


次話もアリアとロードが話すシーンが続きます。

どうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あーーーー!! すっかり忘れてた!! 行方不明になったご両親!! そうよそうだったね。 この世界に紛れ込んだかもしれないんだよね!! バミューダ・トライアングルみたいに!! [気になる点…
[一言] 喋ってるのに慣れろ言うてもなぁ(;'∀') こっちに喋る鳥があまりいないんだからシャーナイやろ。 ロードがこっちの世界来たら愕然としちゃうかな( ´∀` )
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