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チートで怠惰な聖女様のために、私は召喚されたそうです。〜テンプレ大好き女子が異世界転移した場合〜  作者: 櫻月そら
【第1章】異世界ものは大好きですが、フィクションで間に合ってます。
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第61話 魔導師の塔を探しに 3


「アリア様! 何かございましたか!?」


 話し声が聞こえたのか、司書長のクロウリーが駆け寄ってきた。


「いいえ、特には。司法大臣のハーマン様とお会いして、少しご挨拶をしただけです」


「そうでしたか」


「どうかなさいましたか?」


「彼が……、何か失礼なことを申しませんでしたか?」


(仮)(カッコかり)と呼ばれたことくらいでしょうか。他は、特に何も」


「申し訳ございません!」


 司書長クロウリーが、後頭部が見えるほどに頭を下げた。


「いえ、そんな。クロウリー様に謝っていただくようなことではありませんから。久しぶりに呼ばれたなぁ、と思ったくらいで。あのマーリン様ですら、『アリア様』と呼んでくださいますからねぇ」


 アリアが『あの』と言ったことで、彼はさらに深く頭を下げた。腕を下ろせば、床に手のひらが付くかもしれない。


「あの、本当に謝っていただく必要はありませんから。どうか、頭を上げてください」


「マーリンがご迷惑をおかけしているのでは?」


(呼び捨て? そんなに親しい仲だったの?)


「迷惑をかけられていない、というと嘘になりますが……。だけど、何となくですが、この城の中でも彼は信用して()(かた)なのではないかと思っています」


「そう言っていただけると幸いです。実は……、マーリンは私の妻の弟、私にとっては義理の弟にあたります」


「え!?」


「彼がご迷惑をおかけしているのではないかと、もう気が気ではなくて。妻からも、アリア様にご迷惑をおかけしないよう、よく見張っておくようにと言われているのですが……」


(奥様、それは荷が重すぎます……)


 アリアはクロウリーに同情した。

 しかし、都合が良い。信頼できると感じていた司書長がマーリンの親族だったとは。


「あの、マーリン様は普段どちらに?」


「うーん、じっとしていない人ですからねぇ。あぁ、でも、魔導師の塔にいる時間が一番長いでしょうね」


(ビンゴ! 魔導師団があるんだから、専用の施設があると思ったんだよね)


「魔導師の塔、ですか?」


「はい。彼らは実践や戦闘だけではなく、魔法の研究も行っているので研究所や宿舎、食堂などが塔の中にあります。マーリンは団長なので、この城の中に私室も用意されていますが、塔で寝泊まりしていることが多いそうです。『休憩室の奥が団長の巣になっていて困っている』と、彼の部下から私に苦情が来るんですよ」


「そ、それは大変ですね」


「えぇ、本当に……」


 司書長は、虚ろな目で窓の外を見つめた。


「あぁ、そういえば、魔導師の塔はここからでも見えますよ。あちらです」


 司書長が手で示した先には、象牙色でかなり高層の塔が建っていた。

 時折、窓から赤や緑の光や煙が見えるのは、何かの実験が行われているのだろうか。


「ずいぶんと立派な建物ですね……」


「はい。この図書室よりもハイクラスの環境ですよ。彼らは国にとって貴重な存在であり、王侯貴族の魔術の師匠となることも多いですから。そのため、私よりもずっと高給取りです」


 司書長が、ははっと軽く笑った。

 

(ここは笑うところ……?)


 アリアは窓に近づいて、塔の外観を目に焼き付けた。


「あの塔は私の部屋からは見えないので、そんな場所があるなんて初めて知りました。そうだ、今日はこのお城の図面を見せていただきたくて伺ったんです。あの塔や庭園を含めた見取り図はありますか?」


「あるにはあるのですが……。王族の方にしか、お見せできないものも多くて……」


(有事の際に使う、隠し通路とかも載ってるってことか)


「これでは、許可証になりませんか?」


 アリアが鞄の中から、アルフォンスの懐中時計を取り出して見せた。


「それは……! なるほど、承知いたしました。すぐにお持ちしますので、少々お待ちくださいませ」


 司書長は二、三回頷いたあと、急ぎ足で奥の部屋へと入っていった。


(殿下にアーモンドの花が国花だって聞いた時から、もしかしたら、って思ってたんだよね)


 アルフォンスの懐中時計には、枝付きのアーモンドの花が彫られていた。

 そして、手紙の封蝋の印璽も、アーモンドの花のデザインだった。


 そこから、王家の紋章もアーモンドの花なのではないか、とアリアは推測していた。


(それにしても、本当に使えるなんて……。アルフォンス様は、私のことをどう思ってこれを譲ってくれたんだろ……)


 アリアは回り続ける秒針を見ながら、アルフォンスの意図に思いを巡らせた。

お読みくださり、ありがとうございました。


ただいま、ヒロインのアリアが突っ走っていますが、ちゃんと恋愛もしますので(汗)


次話もどうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] >アルフォンス様は、私のことをどう思ってこれを譲ってくれたんだろ あなたが国の希望だからじゃない?( ´∀` )
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