第43話 二人きりの答え合わせ 4
おかげ様で、何とか投稿することができました。
「貴女のそういうところ……」
ソファにもたれかからずに、スッと背筋を伸ばしたアリアを見て、アーヴィンがぽつりと呟いた。
しかし、首を傾げたアリアに見つめ返されると、アーヴィンは慌てるように手のひらで口元を覆って顔を背けた。
「えっ……と、何かおっしゃいました? ごめんなさい、うまく聞き取れなくて……」
「いや、何でもない。気にしないでくれ」
「そう、ですか……」
(……何よ、気になるでしょ)
明らかにアリアを見ながら、何らかの言葉を発したアーヴィンが気になるが、どうせ問い詰めても答えないだろうと早々に諦めた。
「あの、殿下のお話のあとに、私からも質問しても良いですか?」
「先に聞こうか?」
「いや、でも……」
「いいから」
「じゃあ……。先ほど、『この部屋でのやり取りは、各国の巫女や魔導師でも知り得ることができない』とおっしゃいましたよね」
「ああ」
「魔導師に知られてはいけない、ということは何となく分かります。なぜ、そこに巫女も含まれるんですか? 他国に嫁いだとはいえ同郷、しかも皆さん王族ですよね?」
「あぁ……そうだな。しかし、他国に嫁いだのなら、もうそちら側の人間だと考えるべきだ。王を愛し、子ができたなら、その国を守るために力を使うだろう。後宮がある国では、王の寵愛を得るために巫女の力を使う場合もある。それに血縁だからと言って、良好な関係ばかりとは限らないだろう?」
「それは……そうですね」
アリアの脳裏に、伯父の顔が鮮明に浮かんだ。
「そして、今の質問は今回の襲撃に大きく関係してくる。話が早くて助かるよ」
「え?」
「二人目の聖女……つまり、貴女がこの国に現れたことは公表されていない。貴女の存在を知っているのは、王家と城に出入りしている一部の人間だけだ。もちろん召喚の儀式を行ったことも、この国の人間でさえほとんど知らない」
「でも、あの夜に襲ってきた男は私の存在を知っていて、外国の言葉を話していた……と」
「そう。この国の情報が外部に洩れている。ヒューマンエラーなのか、誰かが故意に洩らしたのか……。それはまだ判明していないが、聖女の力を悪用しようとしている者がいることは確かだ。これからは会議や調査が増えて、城内の雰囲気が悪くなるかもしれないが目をつぶってもらえると助かる」
「いえ、大変な状況だと理解していますから、それは大丈夫です。どうかお気になさらず。――会議や調査は、私も同席したほうが良いですか?」
アリアは狙われた当事者であるため、襲撃の際の様子を報告するには最も適している。
しかし、アーヴィンはすぐに首を横に振った。
「いや、私が貴女から聞いた情報を伝えるから、同席の必要はない。むしろ、大臣たちの前には姿を見せないでくれ。さらに付け加えるならば、できる限り自室から出ないでほしい」
(ほぼ軟禁状態で隠れていろってこと? そこまでする必要があるの……?)
「どのくらいの期間ですか?」
「悪い。今はまだ、はっきりした答えが出せない。本来なら、あの襲撃も祖母か母が予知できたはずなんだ。それができなかったとなると……、先のことも慎重に進めないと危険だ」
「んー、では、とりあえず一週間でどうでしょうか?」
「分かった。まずは一週間で。新しい情報が入れば報告する。状況によっては期間が延びるかもしれないが、不便がないように身の回りのことはリラに任せているから。必要なものがあれば何でも言ってくれ。すぐに用意する」
「お気遣いくださり、ありがとうございます。私も何か気づいたり思い出したことがあれば、すぐにご報告します」
「よろしく頼む」
とりあえず今後の話がまとまると、どちらからともなく深い息を吐いて脱力し、ソファに背を預けた。
お読みくださり、ありがとうございます。
久しぶりに投稿することができました。
「この作品は〇〇以上更新されていません」というズシンとくる文字が消えるだけで、少し気持ちが楽になりました。
第44話は書き上げているため、推敲が終わり次第投稿いたします。
のろのろ更新の作品にお付き合いくださり、本当にありがとうございます。
そして、いただいたご感想に返信ができていない部分があり、申し訳ありません……。
嬉しく拝読し、とても励みになっています。
完結まで頑張りますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。




