表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートで怠惰な聖女様のために、私は召喚されたそうです。〜テンプレ大好き女子が異世界転移した場合〜  作者: 櫻月そら
【第1章】異世界ものは大好きですが、フィクションで間に合ってます。
34/114

第34話 王太子殿下の本性

2024年 1月17日(水)


第34話、改稿済みです。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 魔法で光を集めた大きなカンテラが床に置かれていたため、その空間だけが明るかった。

 そこで大量の書物を床に広げていたアーヴィン王太子が書物を読みながら、スズと問答を続けていた。


「だから、何度も伝えた通り、貴女(あなた)は知らなくても良いことだ」


「そんなわけないでしょ! 私は当事者よ。ヒールを使えないことを知ってるくせに、アリアちゃんに嘘の情報を伝えた理由は何なの!?」


(やっぱり、その話……)


「殿下、私も知りたいです」


「アリア殿、あなたもか……。日没後は出歩かないように、と祖父から言われなかったか?」


「それは……」


「二人なんだから良いでしょ? 廊下には近衛騎士だっているし。それとも、この城の警備はそんなに穴だらけなのかしら?」


 スズはアーヴィンの様子を(うかが)いながら、挑発を続けていく。


「そもそも、聖女(仮)(カッコかり)って何なのよ。アンタたち、ものすごく失礼なことしてるの自覚してる!? 仮にも、国の象徴になる立場でしょ!?」


「それは……。申し訳ないと思っている。ただ、悪いが、その理由も今は話せない」


 アーヴィンの話し方や態度、声のトーンまでが、まるで別人だ。初対面の時のように世間知らずで、とぼけたような様子をまったく感じさせない。不遜な態度が、スズの怒りを買っているようではあるが。


(これが、この人の本性か。猫を被ってた、っていうよりも……。もしかして、不出来で頼りない王太子を演じてた?)


「スズさん、私のために怒ってくださってありがとうございます」


 アリアがそっと肩に触れると、スズの表情が少し和らいだ。


「殿下、何か理由があるのですね? 私をカッコ(カリ)と呼ぶことも、スズさんの力について偽りをおっしゃったことも」


「……あぁ」


 アリアと会話をしながらも、アーヴィンは下を向いたまま、古い書物のページをめくっている。


「……メリッサ様から伺いました。アルフォンス様は意味のないことはしない、と。私への対応についても何か理由があるはずだから、少しの間だけ我慢してほしい、とも」


「母がそんなことを……」


 メリッサの言葉を伝えると、アーヴィンは少し驚いたような声を出したが、やはり視線は合わない。


「私はメリッサ様のお言葉を信じます。しかし、あなたの言葉は信じられませんし、納得もできません。スズさんがおっしゃった通り、大変不快に感じています。今、現在のこの状況も」


 アリアの言葉に、アーヴィンの手がピクッと止まった。


「何か理由があるのでしたら、話せる時が来るまでお待ちします。しかし、申し訳ないと思っていらっしゃるのでしたら、きちんと相手の目を見て、それなりの礼儀は払ってください」


 アリアを見上げたアーヴィンは読んでいた本を脇に置き、スッと立ち上がった。今度はアリアが見下ろされる形になる。


私共(わたしども)の失礼な言動で少なからず傷つけてしまったこと、本当に申し訳ない。しかし現状、話せないことが多い。今後も、不快な思いをさせてしまうかもしれないが、どうかご容赦いただきたい」

 

 素直に謝罪の言葉を述べたアーヴィンは、四十五度ほど腰を折って頭を下げた。

 それに対して、アリアも柔らかい声で応える。


「承知しました」

 

 そして、謁見の間で見た彼の姿は演技だったのだと、アリアは確信した。


「今日のところは、それで許してあげる」


 そう言ったスズは腕を組みながら胸を張って、大げさに威張る仕草をした。


「スズ殿はもう少し、王族を敬うとか……。私は構わないが、うるさい臣下はいるんだ」


「私を誰だと思ってるの?」


「……聖女様です」


「その聖女に何か文句が? それとも、臣下からの苦情さえ抑えられないのかしら? 王太子殿下?」


 アーヴィンが溜め息を吐きながら、額を押さえた。


(聖女、強い……)

 

 今日のスズは、とにかく煽らないと気が済まないようだ。日頃の鬱憤もあるのだろう。

 二人のやり取りで、一年間どのように関係を築いてきたのかが、少しだけ見えた気がした。

お読みくださり、ありがとうございました。

明日も更新する予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まさかの本性!! 一体いつ謎は明かされるのか……。
[良い点] あら♡あらあらあらあら。 アーヴィン王太子、ただの甘ったれ役立たずかと思ったら、それは仮の姿だったの!? [気になる点] これはこれは! いい感じに素敵な王太子様に♪ [一言] まだ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ