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チートで怠惰な聖女様のために、私は召喚されたそうです。〜テンプレ大好き女子が異世界転移した場合〜  作者: 櫻月そら
【第1章】異世界ものは大好きですが、フィクションで間に合ってます。
31/114

第31話 現実世界女子による、情報交換という名の女子会。

早く恋愛っぽい部分を出したいので、更新できるように頑張ります!


2024年 1月11日(木)


第31話 改稿済みです。

どうぞよろしくお願いいたします。


 動画鑑賞を満喫した翌日の午後、スズからお茶に誘われた。


 約束の時間に案内された場所は、暖炉やレトロなステンドグラスの窓がある、こじんまりとしたサロン。寒さが厳しい季節ではないため、暖炉に火は入れられていない。

 来客用というよりも、王族がプライベートで使用する部屋だろう。


 アリアは初めて入る部屋だが、スズはすでにリラックスしている。この一年間で何度も使っていたのかもしれない。


 二人だけでゆっくり話がしたいというスズの希望で、スズ付き侍女のメアリとリラはお茶の用意を一通りしてから退室した。


「二日酔いは大丈夫ですか?」


「ありがとー。もう、大丈夫だよ。ごめんね、こっちから食事に誘ったのに中座して。日本で仕事の付き合いで飲む時とかは、もう少し上手く調整できてたんだけどね。ここのとこ、ちょっとね……」


 スズが気恥ずかしそうにしながら、ローテーブルの上の焼き菓子に手を伸ばした。


「いいえ、気になさらないでください」


(お酒の量が増えたのはストレスが原因ですか? とは、ちょっと聞きにくいな……)


 アリアは無難な話題を探した。


「あ、そうだ。ラベンダーや城下町のお土産、ありがとうございました。あれって、金平糖……、ですよね?」


「そう! 気づいた? チエさんより前に、こっちの世界に来た人がいたってことだよね。チエさんが転移した頃には、すでにこの国にあったらしいよ」


 スズが真面目な表情になった。


「金平糖を売ってるお店の人に創業時期を聞いてみたら、だいたい百年前くらいだって。一九二〇年頃ってことだから……」


「――大正時代ですね。その頃なら、日本でも金平糖が普及してます」


「うん。たぶん、この国に来た人が、何かしらの日本文化を残していったみたいだね」


「おそらく、この()というよりも、この()()に残ってるんだと思います」


「え?」


 ティーカップから口を離したスズが、少し険しい顔つきになった。


「メリッサ様が、日本の巫女装束の袴をお召しでした。それに、巫女の国にも転移してきた人がいた可能性もあるらしく……。はっきりとした伝記は残っていませんが、ある時を境に服装や文化が大きく変わった転換期があるそうです」


「それはもう、()()いうことなんだろうね……」


「はい。想像以上に転移者は多いのかもしれません」


「そうだね。それに、もし、テンプレの仕組みがあるなら“記憶持ちの転生者”もいるのかも。まぁ、それに関しては本人が語らない限り、分からないけどね。外見は、この世界の人だろうから……」


 情報が増えていくと同時に、向き合わないといけないことも増えていく。二人は、どちらからともなく溜め息を()いた。


「そういえば……。スズさんは聖女関連や、この国の歴史に関する本を読まれたことはありますか?」


「ないね」


 気持ち良いほどに、スッパリと答えが返ってきた。


「だから、自主的に勉強するアリアちゃんは、すごいと思う。私の場合は言われるままに動いてたら、いつの間にか一年が経ってたって感じだったから」


「それは目まぐるしくて、他のことに手が付けられなかったんじゃないですか?」


「そう言ってもらえると嬉しいなぁ。聖女は国のために働いて当たり前。少し休めば、戸惑いという名のブーイングの嵐。やってられないわ――。そうだ、聞いたよー。陛下と殿下の前で『この国はブラックだ』って啖呵切ったんだって? めっちゃ笑った!」


 その話を聞いた時のことを思い出したかのように、スズが楽しげにクククッと笑う。


(ソースはアルフォンス様だな……)


 少しやり過ぎた、という認識があったアリアは恥ずかしくなり、必死に話題を逸らした。


「そ、そういえば! 部屋のコンセントの位置やブラ付きインナーって、スズさんのアイデアですよね?」


「あ、分かった?」


「現実世界……、特に日本人じゃないと出ない発想だろうなって」


「いつか帰れるのか、一生ここで過ごすのか分からないなら、快適なほうが良いでしょ? 実物見せたら、針子さんがそのまま作ってくれたり、コンセントは魔法で電気を通してもらったりね」


 話を続けながら、スズは小さな鞄からパール付きのエメラルドグリーンのシュシュを取り出した。そして、(つや)やかな黒髪を結ぶと、鬱陶しげに後ろに払った。


「そういえば一昨日、町に行ったらね。広場でジュリ(せん)振りながら踊って、日銭を稼いでる女性がいたよ」


「ジプシーみたいですね」


「あれは間違いなく、チエさんの影響だよねー」


 もう何でもアリだ、とアリアは頷きながら目を瞑った。


「あー。今日、アリアちゃんと話せて良かった。……ちょっと、ムシャクシャしててね」


 そう言ったスズは、グッと両腕を上げて伸びをする。


「聖女のお役目関連ですか?」


「んー、関連はあるんだけど……。どちらかと言うと、殿下だね」


「アーヴィン王太子殿下ですか?」


「そう。ほんっと、あのクソ生意気なガキが……!」


「スズさん、スズさん。それはさすがにちょっと」


 アリアは慌てて周囲を見渡す。人払いをしてもらっていて良かった。


「それにガキって……。殿下は二十歳(はたち)過ぎくらいなんじゃないですか? たしかに、スズさんより年下だとは思いますけど」


「ん? アリアちゃん、殿下の年齢知らなかったの? あの子、十七歳。こっちの世界でも、まだ成人前だよ」


「じゅう……なな? あの見た目と雰囲気で!?」


 アリアにとっては“クソ生意気なガキ”という言葉よりも衝撃的な事実だった。

アリアは平成生まれですが、「ジュリ扇」を知っているようです。


お読みくださり、ありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[一言] >アリアは平成生まれですが、「ジュリ扇」を知っているようです 平成生まれでも、TVで紹介されたら知ってるかもですよ( ´∀` ) でもって文化革命とか。 こっちの世界でも起こったとしか思え…
[一言] アリアは平成生まれですが、「ジュリ扇」を知っているようです。 クツクツ笑わせていただきました( *´艸`)
[良い点] ジュリ扇!あれは、何を真似したものなんだろう……。 マリー・アントワネットの扇? がっつり昭和(でも氷河期)な私でも鈴木由美子さんの漫画「いけいけ!バカオンナ」でしか見たことないかも笑。…
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