第26話 「ステータス オープン」って言ったことありますか?
2024年 1月3日(水)
第26話、改稿済みです。
どうぞよろしくお願いいたします。
スズと交わす他愛ない話で少し気持ちが軽くなったが、アリアは『聖女』という言葉に反応した。
「あの……、スズさん」
「なに?」
アリアの声音を聞いて、スズが真面目な顔付きになった。
「ス、『ステータス オープン』って言ったこと……ありますか?」
「あははははっ! 思いつめた顔するから、何かと思えば! あー、こんなに笑ったの久しぶりだわぁ」
「そんなに笑わなくても……」
「ごめん、ごめん。私たちにとっては、わりと重要な儀式だよね。アリアちゃんも、ラノベとかアニメとか好きなタイプでしょー? 何となくわかるんだよね」
「やっぱり、滲み出るものがありますか……?」
「あるある。同類の匂いするもん。あ、ちなみにこの世界では、ステータスを空中に表示させる機能は無いっぽいよ。でも、異世界に来たら一度は言ってみたいよね。それで出てこなかったら、ちょっと恥ずかしいけど。まぁ、魔法少女ごっこみたいで楽しかったよ」
そう言ったスズが、けらけらと笑う。
(ってことは、スズさん試したんだ……)
「で、どうしたの急に? やっぱり、自分の魔力量とか特性が気になる?」
「もともと、気にはなっていたんですけど、マーリン様に『強くも弱くもない魔力』って言われたことが引っかかって……」
「あ、師団長に会ったの? イケメンだったでしょ?」
「そう、ですね」
「まぁ、中身はぶっ飛んでるけどね」
「……はい」
(できれば顔の造形よりも、内面についての情報が先に知りたかったなぁ)
「しっかし、強くも弱くもない魔力……ねぇ。他に何か言われた?」
アリアは数秒間、虚ろな目でシャンデリアを見つめた後にマーリンの言葉を口にした。
「『強くも弱くもない、絶妙にちょうど良い魔力に興味があるから、妻になりませんか?』と」
「え? それってプロポーズ?」
「おそらく」
「それで何て返したの?」
「もちろん、お断りしました」
「それで?」
スズが息を飲む音が聞こえてきそうだ。
「親友になりました」
「え、意味分からん」
「……私もです」
二人が沈黙すると、きらびやかな食堂の空気が一瞬、止まったように感じた。
「ま、まぁ、親友っていうくらいだし? また会う機会あるでしょ。その時に詳しいこと聞いてみたら?」
「そうですね」
(話が通じるかどうかは不明だけど)
「スズさんは、ご自身の魔力量や特性をご存じなんですか?」
「一応ね。こっちに来てからすぐに問答無用で調べられたよ。この王城の中で、師団長だけが他人の魔力量とか鑑定できるから」
「どうでした?」
「んー、ほんとかどうかは分からないんだけど……。魔力のレベルはカンスト。属性は、聖女にありがちな光属性と聖属性だって」
「やっぱり、チート感がすごいですね」
「いやー、でも、それがさ。私、『ヒール』が使えないんだよね。魔獣や瘴気除けの結界は張れるんだけど」
「……え?」
「正しくは、私のヒールは有機物に対して効果がないの。無機物なら直せるんだけどね。たとえば、あのシャンデリアとか」
スズは高い天井を指さした。
「なんなら、この城全体が崩壊しても直せると思う」
「そ、それは、十分チートなんじゃ……」
「んー、でも、やっぱりケガや病気を治してこそ聖女でしょ? でも、自然災害や魔獣の被害で壊れた建物とかを直すことと、結界を修復することが私のお役目。聖女っていうか、超仕事が早い大工っていうか? それでも感謝はされるんだけどね。衣食住っていうくらいだから、住まいは大事だよね」
「そうだったんですか。てっきり……」
「戦闘で負傷して腕が動かなくなったり、瀕死の騎士たちを癒してると思った?」
「王太子殿下から、そう聞いてます。作るポーションも桁違いの効果がある、と」
残念でした、とスズは嫌味のない笑みを浮かべる。
「たしかに、通常よりも効果のあるポーションなら作れるよ。だから、ちょっとした病気とかケガなら、それで治せる。でも、ヒールに関しては、まったくダメ」
スズは海外ドラマよろしく、大げさに肩をすくめて見せた。そして、足と腕を組んで独り言を呟く。
「そんな偽りの情報を伝えて、殿下は何を考えてるんだろうね。アルフォンス様も一枚噛んでるのかな――」
行儀は悪いが、その姿はデキる大人の女性といった様子で、アリアは少し憧れた。
どのような考えを巡らせたのか、数秒間無言になったスズはパッと居ずまいを正してから、アリアとの会話を再開させた。
「えっと、とにかくね。植物や師団長相手に何度も試して、一年間かけて練習もしてみたけど結果は変わらず。たぶん、根本的にヒールを使う能力がないんだと思う。『癒し』と『修復』は別物なのかもね。――それでちょっと考えたんだけど、アリアちゃんはヒールを使えるんじゃないかな? 私がぷちボイコットしてたことが召喚の原因になったんだけど、もしかしたら、私には足りない力を補うためにアリアちゃんが選ばれたんじゃないかって」
「でも私、聖女(仮)ですよ?」
「まぁ、その呼び方は……うん。かなり失礼なんだけどさ。でも、なんか気になるんだよね。特にメリッサ様のところから帰ってきたアリアちゃんの話を聞いた時のアルフォンス様の表情とか見てるとね。何かあるのかなぁって」
そういえば……と、メリッサとの会話を思い出した。
「実はメリッサ様にお会いした時に、不思議なことを言われたんです」
「へぇ、どんな?」
「メリッサ様とシェリル様の母国の『巫女の国』の現女王陛下は、メリッサ様の一番上のお姉様らしいんですけど……」
「ほぅ」
「それで――。メリッサ様曰く、私から不思議な力を感じる、と。とりわけ『癒やしの力』を。少し女王陛下に似ている気もする、とか。魔力だけじゃなくて、気質など精神的なものも含めて、と。……何だか矛盾してますよね? 巫女の国の女王陛下なら、おそらく、かなり強い魔力をお持ちのはずですし。でも、マーリン様は私の魔力を『強くも弱くもない』と……」
「うーん、今の段階では何とも言えないね。今度、師団長かアルフォンス様をつかまえて聞いてみよう」
「そうですね――。あ、そういえば、スズさんのほうはどうでしたか? チエさんと無事にお会いできました?」
「そうだ! 聞いて、聞いて!」
スズの高いテンションに圧倒されながらも、アリアは強く興味をそそられた。
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