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七話 窮地、脱出

応援よろしくお願いします。

 ダンジョンを出たその後。俺たちは、行きの時も通った森の中を進んでいた。

 最も、通ったのは俺だけだ。セレナはテレポートで直接ダンジョンに送られた訳だし、ドラゴに関してはダンジョンの外を見たことすら無いらしい。何故かは分からないが、まあとにかく必然的に俺が先導する形になった。

 たびたびドラゴの威圧感をものともしないモンスターが現れるが、俺が《弱体化》を掛けてしまえばもう終わりだ。セレナとドラゴが、どんなモンスターでも排除してしまう。


 「流石だな、セレナ、ドラゴ。この森のモンスター、海斗達も苦戦していたのに」

 「カイト……勇者ですか。センヤさまを捨てた本人の。であれば、当然です。センヤさまを追放するような見る目のない者に、私が負けるハズがありません」

 「なぬ。捨てた、だと? センヤをか? はは、とんだ愚か者も居たものだな!」


 二人はそう言って笑っている。でも、俺にそんな価値があるのだろうか……。


 ……そんな事を考えながら進んでいると、森の木々が妙にざわついているのに気付いた。風に揺れているのか、或いはもっと別の何かによってなのか……分からないが、自然と俺の心もざわついてくる。

 と、ドラゴが神妙な面持ちで呟いた。背中の羽が妙にぱたぱたと動いている。


 「……何か、おるな。しかも……これは」

 「どうした、ドラゴ。何が居るんだ?」

 「センヤさま。私の魔眼ですら、危機を感知しています。逃げた方がいいかもしれませ……」


 セレナは言いかけ、そこで言葉を止めた。俺の後ろを見て、目を見開いて驚いているのが分かる。

 ……まさか。

 俺も、つられて振り向いた。

 すると、そこには。




 「――で、デカい……!!」

 『ぶもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』


 天にも届く巨体を怒りに震わせた、真赤な毛皮のイノシシだった。

 その雄たけびに我を取り戻したらしいセレナが叫ぶ。


 「魔猪――それも、天災級の! 不味い、です! 逃げましょう!」

 「此奴、異常だ! 魔力が通常の魔猪と桁違い! この禍々しい気配は……魔族の魔力か!?」


 魔族って――魔王の一族の、魔族!? 何でこんな所にそんな奴が!?

 だが確かに、目の前の魔猪は普通のモンスターという感じがしない。黒いオーラを放ちながら、真赤な目を見開いて俺たちを睨み付けている。今にも突進してきそうだ。

 モンスターの中での最強格・ドラゴンであるドラゴすらも焦っている。それ程までに強大な相手なのだろう。

 ……でも、逃げ切るなんて無理だ。こいつに本気で追いかけられたら、絶対に追いつかれる。


 「――《弱体化》!! 《弱体化》《弱体化》《弱体化》……」

 「な、何をしているセンヤ! 相手が突進の力を溜めているウチに逃げるぞ!」

 「逃げられない! 《弱体化》は永続じゃないんだ、この森を出るまでに効果が解ければ追いかけられる! なら――()()()()()!!」


 自分自身を強化できないことを呪った。効果が解ければお陀仏なんだ。

 俺は《弱体化》を重ね掛けする。額に汗が滲む――けれど、やるしかない。

 魔猪の表情は依然変わっていない。しかし、異変に困惑しているのが分かった。効果はある、ならば全力で、下げられる所まで下げてやる。

 

 「凄い……こんな、こんな事が……!」

 「セレナ、お前までどうした! 感心している暇はないのだ、命が惜しくば早く逃げ……!!」

 「違うんです!! もしかすれば――いえ、もう逃げる必要なんてありません!」


 ――よし。頃合いかな。

 魔猪が自重を支えられずにぐらりと傾いた所で、俺は走り出す。

 俺が始めた戦いだ。最後だって、俺が仕留めなければ。

 俺は魔猪のすぐそこまで走り寄り、拳を勢いよく振り上げた。


 『ぶ……も……!!』

 「はあああああああああああああああああっ!」


 ――思い切り。


 魔猪の鼻に、振りかぶった俺の拳が直撃する。

 そして――魔猪の鼻が、体が、ねじ曲がった。血が噴き出す。信じられぬ、とでもいうように、目が見開かれる。

 そのまま魔猪が倒れ伏し、動かなくなるまで、時間はかからなかった。


 「な……!?」

 「凄い――すごいですよ、センヤさん!! ()()()()()()()()()()()()()1()()するなんて!!」


 セレナが、興奮気味に叫んだ。

 ……ん? 全て1? そんな、バカな。

 だって、仮にも俺のは《弱体化》だぞ? そんなチートみたいな事が出来る訳ねえだろ。

 第一、あんな強敵もそこまでステータスを下げられるんなら、それこそどんな相手だって――。

 ……もしかして。


 「この《弱体化》――最強、なんじゃ……?」

 「認めたくは無いが……今のを見れば、そうなのだろう。センヤ、お前のそれは恐らく、どんな強敵をも打倒しうる力だ」


 ドラゴが言う。セレナも、それに合わせて頷いた。

 ……海斗。お前は、俺を無能と言って殺そうとしたよな。

 でも俺、もしかしたら、役に立てたかもしれない。もっと頑張っていれば、お前を満足させるような成果を出せたのかもしれない。

 けど……俺は、もう居場所を見つけた。


 「センヤさま! この魔猪の体は、きっと高く売れますよ! 持っていきましょう!」 

 「ど、どうやって……?」

 「決まっているだろう。我がドラゴン形態になって運んでやる。こう見えても我、力持ちなのだ」


 ドラゴがそう言って笑い、俺とセレナも笑って応える。

 心地いい。これが、仲間っていうものなのか。

 ダンジョンの底で出来た仲間と共に、俺は街を目指すのだった。

 

 

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