誰も俺には敵わない
登場人物紹介
セイル・レファード
16歳・男・レベル???
・ジョブ
無し
・称号
無し
・コモンスキル
剣技
白魔法
黒魔法
盗み
格闘
料理
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・レアスキル
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交渉
・ユニークスキル
隠蔽
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倹約
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セイルは、Sランクの勇者パーティーの中では最弱だった。レベルはたったの12で、メンバー達からは「お荷物」と呼ばれ、それでも下を向かず前向きに頑張ってきた。
持っているのは下級のスキルばかり。
彼がここまで見捨てられずにやってこれたのは、交渉のスキルと、倹約のスキルがあったからだ。
しかし、勇者パーティーの最終目標は魔王討伐。いくら交渉術や倹約術に優れていようと、戦闘力のない者はそれ以上に足を引っ張る存在であった。
そして訳の分からぬスキル、隠蔽。これは、敵から姿をくらませるスキルかと思いきや…実際にはなんの役にも立たないのである。
そして…そんなセイルは今、現実を突きつけられていた。
リーダーであり、セイルの兄でもあるダクト・レファードは、こう言い放った。
「はっきり言ってお前はこの先、生き残れないだろう。弟よ…あとは、自分で決めるがいい。このまま更に過酷な戦いで命を落とすか、それとも村に戻って平穏な生活を送るか」
ほかのメンバーは皆、押し黙っている。ダクトの前でこそ遠慮して言えないが、彼らの間では既に「セイルはお荷物だ」と口々に言っていた。無理もない。
ダクトのレベルは68、そして、メンバー達も既に50~60程度のレベルに達しているにも関わらず、セイルのレベルは未だ12。
これでも、お荷物でない方がおかしい…。
しかし、このメンバーたちは、根は悪人ではなかった。
お荷物であると思っている部分もあるが、その実、セイルの身を本気で案じていた。ダクトを含む全員が、同じ気持ちであった。
セイルは誰よりも優しい。わざわざ魔王を倒す冒険の中で、命を落とすようなことがあってはならない。
セイルは…幸せな人生を送るべきなのだ。
セイルはお荷物ではあるが、その人間性を嫌う者は誰一人としていなかった。
くくくくくっ…。
本当におめでたい連中だ…。
誰も、俺の隠蔽のスキルの本質には気付いていない…。
そして、ようやくこの時が来たか…。
典型的な…あまりにも典型的な、なろう的展開に、笑いが込上げる。
そう、セイルは。
自らの強さ…そして残虐な性格を隠蔽して、なろう系小説を作り上げようとしていた。
「…待って下さい。僕も努力して、みんなに負けないように、もっと頑張りますから!だから…もう一回だけ、チャンスを…」
焦燥感を全面に出して、セイルは説得する。そう、全てはリアリティのために。
「…駄目だ。お前には…才能があると思っていた。俺の目に狂いがあったことはない。俺には生まれつき看破のスキルがあるからな。しかし…何故かは分からぬが、お前には才能がなかった。これは本来ありえないことなのだが…事実、お前のレベルはいつまでも上がらぬ。悪く…思わないでくれ」
ふふふ…本当に、典型的だ…。
愉悦がこみ上げる。
ちなみに、ここはダンジョンの中だった。奥には、魔王城へ続く城への道を切り拓く手がかりがあるらしい。現在地は、ダンジョンの中間地点にある休憩ポイント。つまり、モンスターは出てこない。
「駄目…ですか。本当に、最後のチャンスでいいのです。これで駄目なら…僕をここへ置いていってください」
「それほどの覚悟か…ならば。この兄ダクトに、一太刀でも浴びせることができたら…今後も同行を認めよう」
無謀である。ここにいる誰もがそう思った。ただ1人、セイル以外は…。
くくくっ…駄目だ…我慢できない…。
もう、いいだろう…十分に楽しんだ…。
ここからは、俺がこのパーティーのリーダーだ。
これからは、俺がこの世界を無双する…。くくくくくくく…。
「分かりました…この僕セイルが、ダクト兄さんに一撃でも与えたら良いのですね…」
「2度は言わぬ。さあ、時間が惜しい。かかってこい、弟よ!」
メンバーの1人、ユキは言った。
「いくらなんでも無茶よ!」
しかし、それをセイルは遮る。
「いいんだ…これは、僕自身のケジメでもある…。ユキ、今まで僕みたいな人にも対等に接してくれて、ありがとう…。できれば、これからもよろしくと言いたいけれど…」
まるで、今生の別れを覚悟したかのように、涙を堪えるセイル。
くくくっ。ユキ…君だけは、俺の陰口を言わないでくれた…。
俺みたいな人にも、対等に接してくれた…。
本当に、訳が分からない女だ…。くくくくくっ…。
ダクトは、「負けるはずがない」と悠然に構えている。
そう…誰から見ても、ダクトが負けるはずはないのである。
なぜなら、彼は勇者だから…。現代で、「いちばん強い男」だから…。
さて、そろそろ無双するか…。
「無形の奥義…-両断-…」
技名を言うと同時に、みすぼらしい銅の剣を弱々しく振る。瞬間…一国を治める城よりも一回り大きかったダンジョンは…崩れ去ってゆく…。
当然、Sランクパーティー一行は無事では済まされないが…
「オリハルコン…」
パーティー全員に、絶対防御の魔法が施される…。
オリハルコンとは、決して欠けることのない神の金属。本来は魔法などではない。
そう、本来は。
だが、セイルは唱えることができる。
「な…何が起こっていると言うのだ…」
ダクトは、固まっていた。あまりに規格外の状況に、思考が追いついていないようだ。そんな現代最強の勇者に、最弱のはずだった弟は告げた。
あたり1面、草原と化していた。ダンジョンの残骸とも言うべきガレキは散らかっているものの。
「やはり僕では、ダクト兄さんには傷1つ付けられませんでした…約束通り、このパーティーを抜けます。今までありがとうございました」
そう言って、俺は背を向けて歩き出す。転移の魔法くらいたやすく使えるが、あえて歩く。そう、兄さんは次にこう言うだろう…。
「ま、待ってくれ!!!」
そんな言葉を背に受けて、セイルはニヤリと笑った…。




