少年と機関銃
2013年に書いてそのままになっていた小説を発掘。
当時の厨二全開な感じが一周回っていいのかもしれない。
加筆修正すらしてません。
この感じはもう書けないなと実感。
空が青い、空気には少しの鉄においと火薬のにおいが混じる。
眼前には廃墟とモノを言わぬ死人ばかり。
「あぁ、良い景色だ」
一人の少年は機関銃を背負いながらつまらなさそうに呟いた。
「仕事は終えた」
「おぉ、ご苦労さん。首尾は?」
「上々。命令はDead or Alive。抵抗されたのでAKしてきた」
「は?AK?」
「All people kill. しかし、仕事はしたから文句は無いだろう?金銭分は働いた」
そう告げて少年は銀髪を風になびかせて去っていった。
驚愕する雇い主を置いて…
あぁ、何てくだらない世界なんだろう。
奪い奪われ、殺し殺され、人を愛して憎み、そして何事も無かったかのように生きて死んでいくこの世界。
僕はこの醜く歪んだ世界が大好き。
彼女のいない世界なんて僕には必要ない。
でも、彼女には帰る場所が必要だよね?
だから、僕はこの世界を愛するよ。
そしてもう、誰も君を傷つけられないように。
この世界で君が苦しむ事の無いように。
この世界をキレイにして待つよ。
いつも通り賑やかな通りを黒髪の少女は一人歩いていた。
物を売る商人の声、買い物をする人の声、物を乞う奴隷、男に媚を売る売女、少年少女の走る音。
様々な音が溢れる通りを少女は淡々と歩いていた。
ただ、淡々と淡々と淡々と淡々と淡々と淡々と淡々と淡々と淡々と淡々と淡々と淡々と。
何にも興味を示さずに。
少女は立ち止まる。
灰色のマフラーが風に揺れる。
澄んだ赤い瞳は何も映さずにただ、ぼんやりと空を眺めた。
ドサッ
今日もまた死体が崩れ落ちる。
今日の標的も私を満たしてはくれなかった。
何時になったら私は満たされるの?
たくさん血を吸った私の刀。自分で決めた道。
なのにどうして?どうして?どうして?
もう既に動かない死体にもう一度刀を突き刺して、少女は何事も無かったかのように去っていった。
その眼にはやはり感情は無い。
「真っ黒なお空に真っ赤なお月様が昇る。
今、世界の全てを愛した少年と世界の全てに絶望した少女が出会う。
動き出した運命と言う名の歯車は止まる事を知らない。
その歯車は、片方が壊れるまで輪廻を続ける。
彼らに課されたモノは世界の創造。
そうして彼らは見えない糸に操られ続けるのだ」
そう語った少女は塔の上から本を片手に飛び降りた。
そうして物語は動き出す。
そう、これは歪な世界の物語―
起きて、依頼を受け、殺し、眠る。
ただそれだけの簡単なお仕事。
今日も依頼を乗せた小さな鳥たちが私の元へと飛んでくる。
そんなに殺したい人間がいるの?
殺したい人間に殺される人間、明日の私はどちら側?
そんなくだらない事で構成ている世界なの?
そんな世界なら、いっそこの手で―
コワシテシマオウカ?
彼女は僕にこう言った。
私はこの醜く歪んだ世界が大好きだと。
だって、人間の本性が見えるんだもの。
こんな世界でしか見れないわ。
人間は面白いわね、と。
あの時、僕は君の言っていることがわからなかった。
もちろん今もわからない。
でもね、僕は決めたんだ。僕も君の愛した世界を愛すると。
この世界は、君が存在した時よりももっと汚れてしまった。
きっとこの世界が君を困らせているんだよね?
だから早くきれいにしなくちゃ、キレイにしなくちゃ、キレイにしなくちゃ……
デモ、キレイッテナニ?ドウナッタラキレイナノ?
……ソウダ、
コノセカイヲコワセバイイ
「目標を決めたとき、人は止まる事を知らない。例えそれが死を招くだろうと知っていても。
少年はその世界の再構築を、少女はこの世界の破壊を。
それぞれ異なった目標を描いているけれども、選んだ手段は同じ。
ならば何を迷う事がある?
どうせ世界は終幕へと走り出しているのだから。」
木陰に佇む少女はおもむろに本を閉じた。
少女の白い髪は木漏れ日を浴びて、キラキラと輝いた。
辺りに広がる火薬のにおい、薬莢の落ちる音。崩れ落ちていく人間の呻き声。
少年は聞きたくないと耳を塞ぐかのように機関銃を撃ち続ける。
一瞬の静寂。弾の装填をしていた少年の前に少女が立ちはだかった。
「君は?」
「あなたはこの世界を壊したいと望む?」
少し間を置いて、少年はさも当たり前かのように返答した。
「この世界にそれ以外何を望むの?」
「あぁ、ついに終わりが始まるとき。
『この世の関節は外れてしまった。
それを直す為に生まれてきたとは、あぁ、なんと因果な事か。』とは。
かのシェイクスピアもよく言ったものだ。
しかし、既に外れてしまった関節を壊す為に生まれた子供達もいる。
それを、私たちは忘れてはいけない。」
高らかにそう読み上げた少女のワンピースはヒラリと風に舞った。