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命より大切なもの  作者: ラリックマ
幼少期編
8/14

ペア

「よ、よろしく……」


 私の差し出した手を、転校生は優しく握ってくれる。


「なぁ、ニーチって呼んでいいか?」


「あ、うん。いいよ……」


 まだ緊張しているのか、ニーチの視線はすごく泳いでいる。人と喋るのに慣れてないのか、それとも人が苦手なのか、慣れるまでに時間がかかりそうだ……。

 

「私のこともナリアでいいから」


「よ、よろしくね。な、ナリア……」


「うん! よろしく」


 私たちは、強く握手を交わす。


「--ケッ。なんだよ、さっきは転校生とかどうでもいいみたいな感じだったくせに」


 頬杖をついていたアルクが、そんな悪態をついてくる。なんかコイツ、日に日に性格悪くなってないか?


「なんだよアルク? 何か不満でもあるのか?」


「別に」


 そのままアルクはぷいっとそっぽを向いてしまう。まあ今はコイツのことなんかどうでも良いか……。


「みなさーん。1時間目は体育ですから、早めに着替えて校庭に行きましょうね」


 パンと手を叩いて、ルーマ先生は生徒にそう指示を出す。


「じゃあ行こーぜニーチ」


 私はニーチの手を無理やり引っ張って、女子更衣室に連れて行く。更衣室に連れてこられたニーチは、あたふたとしている。


「あ、あの、今から何をするの?」


「ん? さっきもルーマ先生が言ってただろ。私の一番大好きな体育の授業だよ」


 私がそう説明するも、ニーチはまだ理解できていない様子だった。まあ、とりあえず着替えさせて校庭に連れて行けばなんとかなるだろ。

 私は早速持ってきた体操着に着替え始める。ニーチは私の着替えている様子を、何も言わずにじっと見ていた。

 

「お前……着替えは?」


「え……と。服は今きてるのしかなくて……」


 そう言って、ニーチは汚れたシャツを引っ張る。まあ転校生だし、それもそうか……。

 

「じゃあそのままでいいよ」


 体操着に着替え終わった私は、着ていた服を体操着袋の中に詰め込んで更衣室を後にする。

 それに続くように、ニーチも私の後ろをついて来る。校庭にクラスメイト全員が揃うと、ルーマ先生は。


「じゃあ二人一組になって体操をしましょう。誰でもいいので好きな人とペアを組んでください」


 そう指示を出す。いつもならアルクと二人でやっているのだが……。


「え、えーと……」


 キョロキョロと周りを見回すニーチの姿を見て、私はニーチに声をかける。


「なぁ。二人一組やろうぜ」


 ニーチにそう声をかけると、ガシッと誰かに肩を掴まれた。振り向くとそこには。


「おい、なんで裏切ろうとしてんだよ」


 アルクの姿があった。


「裏切るも何も、お前と仲間になったつもりなないんだが」


「いやお前、体育のペアはいつも一緒にやってただろ」


「それはこの前までだ。今日からはニーチとやることに決めたから」


「は!? 俺のペアはどうすんだよ」


「先生とやっとけよ」


 私はアルクの手を振り払うと、ニーチに近づく。


「じゃあ早速やろうか」


「え、でも、その……いいの? 私は別に先生とでも……」


「いいのいいの。さ、あんなやつほっといて、まずは……」


 私が体操のメニューを確認しようとすると、アルクが私の前に立ち。


「俺が転校生とペアを組む」


 そんなふざけたことを言ってきた。









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