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命より大切なもの  作者: ラリックマ
幼少期編
4/14

いつまでも……

 ずっと椅子に座っていたルーマ先生は、パンと手を叩いて生徒の視線を集め。


「はーいみなさん、そろそろ時間なので終わっていない人は放課後残ってくださいね」


「「「はーい」」」


 その言葉を聞いた生徒たちは、駆け足で教室に戻っていく。


「こら、廊下は走らないの!」

 

 ルーマ先生も立ち上がると、近くに立てかけてあった杖を手に持つとゆっくりとした足取りで廊下を進み始めた。

 この世界では大人の女性は珍しい。みんな規定の年齢になったら戦争に行かなければならないからだ……。

 でも病人や、怪我をしてもう戦場に復帰できないと判断された兵士は戦わなくてもいいらしい。

 まあそんなわけで、この村の中で大人の女性はルーマ先生ただ一人なわけだ……。


「ルーマ先生、肩貸しましょうか?」


 私はルーマ先生の隣に行くと、そんなことを言う。みんな母親がいない。もちろん私も……。

 子供を産んだ後に、すぐ戦場に行ってしまうから……。だから、村で唯一大人の女性であるルーマ先生は、みんなの母親のような存在だ。

 だからそんな母親のような存在の手助けをすると言うのは、当たり前のことだ。


「ありがとう。でも教室までそこまで距離はないから大丈夫よ。ありがと、ナリア」


 そう言ってルーマ先生は頭を撫でてくれる。


「け、どうせいい評価がもらいたいだけだろ。先生、騙されるなよ」


 半歩後ろにいたアルクが、そんな悪態をついてくる。それを聞いたルーマ先生は。


「あ、そういえばアルクは放課後に職員室でたっぷりとさっき遅れた件のお説教をしますから」


「いや待ってくれよ! さっきも言ったけどあれはナリアのせいで……」


「はいはい、後でいっぱい話しましょうね」


 コツ、コツと杖をつきながら、楽しそうな笑みを浮かべながらルーマ先生は廊下を歩いていく。

 アルクはなんともいえない表情をしている。全てが私のせいなのかはわからないが、多少非はあったような気がしなくもないので少しだけ申し訳ないと思う。

 

「ごめんな、アルク」


 片目を閉じて、顔の前で手を合わせて軽い謝罪をする。


「はぁ。もういいよ、なんか変に言い訳するより謝った方が早く帰れそうだし」


「ははは、大丈夫。ちゃんと話が終わるまで待ってるから」


 そんないつも通りの雑談をアルクとしながら、私たちは教室に向かう。

 こんな生活が、いつまでも続いて欲しい。そんなことを思いながら……。





















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