悪いこと
森の奥深くに、俺とニーチは足を運ぶ。この村にずっと住んでいる俺ですら、ほとんど来たことのない場所だ。
ニーチは何も喋らず、死体と俺の顔を交互に見ている。
「よし、この辺でいいか」
俺は立ち止まると、
「じゃあこの辺に隠すか……」
近くの草陰に死体を置くように、ニーチに指示を出す。ニーチは言われるがまま死体を草陰に置くと、そのままじっと死体の方を見ていた。
こういう時、どういう風に声をかければいいんだ?
そもそも声をかけるべきじゃないか……。親を殺したような人間と、話したくなんてないだろう……。
でも一つだけ、これだけは言っておきたいことがある……。
「ニーチ」
俺は倒れた死体を見ているニーチの背中に声をかける。
「なん……ですか……?」
ひどく怯えている……。もしかしたら自分も殺されるとか思っているのだろうか……?
「今回のこと、俺は悪いことをしたと思ってない。あのまま何もせずに傍観していたら、ナリアは殺されていただろうし……」
「そう……ですか」
「だから謝罪もしない」
「別に……求めてない……です……」
「そうか……」
そんなやりとりをしてから、俺は来た道を戻ろうとニーチに背中を向け。
「それともう一つ。お前がその人の子供だってことをバラすつもりはないから」
そんな言葉を言い残して、俺は村の方へと進んでいく。




