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命より大切なもの  作者: ラリックマ
幼少期編
10/14

お祈り

 長座体前屈の姿勢をしているアルクの背中を押しながら、私はさっきの行動についての質問をする。


「なあアルク。なんであんなに先生と組むの嫌がったんだ?」


「別に。俺があぶれるのが(しゃく)だっただけだよ」


 本当にそんな理由なのか……?

 いつものアルクなら文句を言いつつも、先生と組むような奴だと思うんだけど……。

 もう一度アルクに同じような質問をしようと思ったが、アルクはふてくされているのかこれ以上何も話そうとしてくれなかった。

 色々あった体育の授業も終わった。もうニーチが来てから結構時間が経ち、気づけば6時間目の授業が始まろうとしているところだ……。


「それで、次はなんの授業なの?」


 私の左隣に座るニーチが、授業が始まる5分前にそう聞いてくる。

 最初は喋りがぎこちなく、かなり距離を取っていたニーチだったが、もうすっかり馴染んでくれた。

 私以外の他の生徒とも普通に話していたし、もしかしたら私以上にクラスに馴染んでいるかもしれない……。

 

「えーと次は……」


 次の言葉が出てこない。次の授業は、私の大っ嫌いな授業だ。この授業があるせいで、私は金曜日が嫌いだ。

 私は席を立ち上がると。


「なあニーチ、次の授業サボらないか?」


 そんな誘い言葉をニーチにかける。ニーチはキョトンとした表情を作るり、


「ど、どうして?」


 っと、最もな質問をしてきた。


「そ、それは、次の授業は特に受ける必要がないというか、必要性を感じないというか……」


 そんな曖昧なことを言っていると、後ろから誰かに肩を掴まれる。


「ダメよナリア。今日はしっかりとお祈りしてもらいますからね!」


 ルーマ先生はにっこりと笑みを浮かべているが、その手にはすごい力が込められている。

 さすがは大人の女性……。私の力では、とても振り払えない。


「でも先生! 別に手を合わせるだけなら他にもっと有意義なことを……」


「黙りなさいナリア。我らが(しゅ)に対する神聖なお祈りを侮辱することは、決して許されることではありません!」


 いつもは温厚で優しい先生が、この時は冷たい目で私のことを叱ってきた。本当に意味がわからない。

 こんなことをする意味が、私にはわからない。


「あ、あのー……。さっきから二人がなんの話をしているのか全くわからないんだけど……」


 さっきからオロオロと私の叱られている様子を見ていたニーチが、割って入ってきた。

 ルーマ先生は、持っていた杖ごと体をニーチの方へ向けると、お祈りの説明を始めた。


「あのねニーチ。今からやる授業はお祈りよ。あなたの住んでいた場所でもやっていたでしょ?」

 

「お、お祈り……?」


 ニーチはピンときていない様子だ。私たちアルマド人なら、誰もが知っていて当然のようなもののはずなのだが……。

 

「えーと、お祈りとは……一体誰に?」


「え!?」

 

 ニーチのその発言で、教室の空気が凍りついた。さすがの私も、今のニーチの発言は驚いた。

 ニーチの表情を見る限り、冗談を言ったとも思えないし……。ニーチは凍りついた教室のなかで、目線を泳がせていた。

 教室の誰しもが、みんなニーチの方へ視線を向けている。そんな静かな教室の中、ガタッと椅子を引く音がする。

 その音の方を見ると、先ほどまでふてくされていたアルクが立ち上がり、ニーチの方へ歩みを進めていた。





















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