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9/17

9:火中車

タイムスリップしてきて早一週間。

武士の朝は早い。

まだ朝日が昇るギリギリで起床時間となる。

未来から持ち込んだGAZIMO製の太陽電池搭載腕時計の時間で測ると午前4時30分ぐらいには武将の人たちは日の出と共に起床するようだ。


紫苑さんの部下になった僕も例外ではない。

雪ちゃんが紫苑さんを起こしてから屋敷の中を点検して診て回る。

これは戦国時代故に早朝での奇襲を警戒して行われるからだそうだ。

なので病気で休んでいたりと例外を除いて基本めっちゃくちゃ早起きです。

紫苑さんが僕に与えた部屋に入るまでに起きていなきゃならない。

上が来たらすぐに動けるようにしなければならないからだ。


「おはようございます佑志さん。よく眠れましたか?」


「いや、まだまだ現代生活の馴染みが抜け出せないですね…日の出と共に起きて日の入りと共に寝る…蛍光灯を使い放題に仕えた生活の日々を過ごしてきた身としてはチョット辛いですね」


「まだお身体の調子が整えられるには時間が掛かりそうですね…では、私はこれから行水をして参りますので、失礼いたします」


「はい、お気をつけて」


よし、とりあえずは起床できた。

あと30分は寝ていたいけど、武将は基本的に朝6時ぐらいにお城に出向かないといけない。

出向く日もローテーションで決まっているので、今日は紫苑さんと共に出仕する日だ。

それに陪臣になった僕も参加しなければならないので、早朝出勤が基本(デフォルト)です。

朝、身を清めてから神仏に参拝し、それから屋敷の管理を家人などに任せてからお城に向かう。

小袖袴こそではかま姿に肩衣と呼ばれる簡易礼服を身に着けるとまさに武将っぽい格好になる。

織田信長とかはこうした当時としては比較的ラフな格好で過ごしていたみたいだね。

一応僕も袴に着替える前に行水をしてから行う。


ちょうど屋敷の裏手に上の崖から湧きでる湧水を裏手まで引いてきて竹の筒で整備して簡易シャワーのようになっている。

紫苑さんがシャワーのように取り付けたとのこと。

紫苑は女性故に髪を洗いやすいようにとのことだそうだ。

無論、最初の行水は身を清めるためにシャワーの部分は取り付けずに行い、3分ぐらいしたらシャワーの部分を取り付けて髪を洗うという。


寝間着から清める為の服に着替えてから紫苑さんが身を清めた後で、僕も行水を行った。

まず今は初夏なので気持ちが良いが、これが冬場だと辛そうだ。

できればお風呂に入りたいものだが、戦国時代は蒸し風呂が主流だったのでお湯を張って入浴するという習慣はまだ無かった。

というわけでここにはお風呂はないです。

いや、実のところ紫苑さんがこの地域で源泉が湧き出る場所を信忠さんから直に土地を買い取って大工さんを集めて温泉施設を建設中だと語っていた。


「やはり温泉は良い物です。ですが、まだこの時代の人たちは温泉を入るという習慣があまりありません。ですので健康を良くするという謳い文句も兼ねて観光資源として使用したほうが財源確保にもなる上に、信濃小笠原家への評価も上がりますので一石三鳥になります!ちょうど今年の皐月から温泉施設を作っています!」


やはり現代人は風呂に浸かりたい。

それは僕も同じ気持ちだ。

持ち込んだ地図で確認すると、確かに自然に湧き出た源泉を使用した温泉街になっていたので、この先行投資は大化けするかもしれない。

入浴のルールなども決めてから入るのと、入浴料も農民の人たちでも支払える額にするという。

施設の完成は11月ごろになるらしいので、楽しみが一つ増えたようなものだ。


さて、行水を終えてから小袖袴と肩衣を身に着けてから紫苑さんと一緒に林城に出仕した。

出仕して信忠さんと一時間ほど会議を行った。

会議の内容はずばり、簡易な量産兵器についての説明であった。

持ってきたノートパソコンを起動して3D製作ソフトで現在僕が図面を引いて作っている兵器を見せる。

すると、信忠さんは興味津々で図面を見つめていた。


「これは…車輪を付けた兵器か?火中車かちゅうしゃというものか…」


「はい、この時代でも製作可能な投擲とうてき兵器です。弦の力を利用して遠くまで沢山の弓矢を飛ばします…これはまだ簡単な図面段階ですので、正確な図面を作るとなるとあと2日ほど掛かりますが…使用例としては竹筒に矢を九本ほど詰めて、弦の力で一気に飛ばします。攻城兵器として矢の先端に油を塗って火をつけてから射出します」


図面に描かれているのは攻城兵器の一種だ。

大弩バリスタの原理を応用し、遠くまで届くようにする。

そしてバリスタ特有の連射性の悪さを散弾性に特性を持たせることで差別化を図る。

一度に大量の矢を投てきでき、かつ攻城兵器として利用するのは悪くない。

鉄砲もまだ普及しはじめているばかりなので、少なくとも鉄砲を揃えるよりはこちらで数を揃えたほうが無難な気がする。

この辺りはかなり木が生えているので火中車を作る資材も困ることは無いだろう。


「うむ…中々興味深い。もう一つのほうの武器はどうなっている?」


「はっ、こちらも製作は半分ほど出来上がっています。弓ほどの連射性はありませんが、安定して的に狙いを定めるとしたらこちらのクロスボウが良いかと存じます。僕が持ち込んできた物があるので、それを見本に既に職人さんに作らせております。図面が完成次第、試射を行ってから採用の是非を決めるそうです」


「分かった…こちらはまた今度見てみよう。そのくろすぼうとやらが戦で役立つようなら心強いからな」


林城から帰ってきてからノートパソコンを再び起動して、僕は図面と睨めっこをしていた。

途中で電源切れを起こさないように太陽光パネルを展開した状態で屋敷の一室で図面をせっせと引いている。

理論上、この時代でも製作可能な投擲兵器の開発を任されたのだ。

紫苑さんの命令で。

勿論、命令されたのには訳がある。


車の中にしまっておいたクロスボウ。

それとミリタリーオタクの友人から暇な時に読んでおけと言われて渡されたコンビニとかで売っている比較的安い漫画雑誌コーナーに置かれている本棚にありそうな『大物動画配信者と学ぶ携帯兵器図鑑』という本を一昨日雪ちゃんが見つけたのだ。

あれを発見した雪ちゃんが紫苑さんに報告したことで、武器や兵器についてもある程度は詳しいのではないかと問い詰められた。

最終的な用途としては火中車の文字通り、多連装ロケット砲に改造していきたいです。

Ураааааааа!!!!

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