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5:イカしか現代文明の結晶を紹介するぜ!その1

紫苑さんの部下と共に一旦タイムスリップしてきた場所に戻ることになった僕。

部下の女性も武士として生計を立てているらしく、名前を「おゆき」さんというらしい。

身長は140センチちょいぐらいで、女性というよりも少女といった感じだ。

苗字が無いのはまだ身分の位が高く無いらしいが、本人はこれといって気にはしていないみたい。

むしろ僕に対してはかなりフレンドリーに接してくれた。


「貴方様が刻流としてお着きになったのですね!私はお雪と申します!その…気軽に雪って呼んでください!」


「雪ちゃんは誰にでも明るく振る舞うことを生き甲斐としている子です。佑志さん、彼女とは仲良くしてやってください」


「わかりました。では……雪さん、よろしくお願いいたします」


「いえいえ、さんを付けなくてもいいですよ!紫苑様のようにちゃんを付けて呼んでもらっても大丈夫ですよ!」


雪ちゃんフレンドリーすぎる。

雪解けのようにあっという間に僕は雪ちゃんに話をすることができた。

このくらい活発で元気な女の子はとってもいいよねと思う。

異性に対してフレンドリーに話せる女子はそうそう多くない。

大抵は社交辞令とか人付き合いの為に渋々やっているような感じだ。

でも、雪ちゃんからはそんな雰囲気は全然してこない。


行く途中で雑談をしながら歩いていると、色々なことが分かってきた。

まず紫苑さんは信忠さんの直臣じきしんであるらしく、信濃小笠原家でも発言権がある家臣なのだそうだ。

直臣とは、大名に従っている家臣のことであり会社で例えるなら執行役員といった所だという。

つまり上から数えたほうが早い地位という事だ。

紫苑さんに世話になる以上、迷惑などをかけないようにしないとね。


歩くこと20分。

タイムスリップしてきた場所に到着した。

林のあぜ道のすぐそばに突然切り開かれたように現れた芝生。

その上にテントと僕の車が置いてあった。

見た限り、荒らされてはいないようだ。

周囲には見張りの武士が待機していたが、僕たちが到着すると紫苑さんが人払いをするように雪ちゃんに指示をだす。

数分で人払いが終わり、ようやくテントと車にご対面することになった。


「紫苑様、人払いは出来ました!」


「ありがとう、では佑志さん。行きましょうか」


「はい!」


近づいてみると、テントや車は荒らされてはいなかった。

無事で何よりだ。

車のキーも、テントの中に置いてあった。

これがないと車を動かせないからね。

スマートフォンも傷が付いていない状態で置かれていた。

電波が圏外と表示されている以外は普通だ…。

スマートフォンを見ていると、紫苑さんが不思議そうな顔で見つめている。


「これは…新しい携帯電話ですか?」


「ああ、これはスマートフォンですよ…携帯電話に代わって日本で多く普及しているタッチパネル式のOSです…もしかして紫苑さんはスマートフォンをご存知ないのですか?」


「…はい、少なくともこのスマートフォンが普及する前にタイムスリップしてきたものですから、折り畳み式携帯電話ぐらいで時代が止まっているのです。それにしても…随分と薄いのですね…」


「ああ、最近はどれだけ内容の容量をデカくして本体を薄くするかで各社が競争しているんですよ。特に中国や韓国製のスマートフォンが多く出回っていますからね…良かったら持ってみます?」


「えっ、よろしいのですか?」


「大丈夫ですよ。あと音楽を聴きたい場合はアプリストアからインストールした音楽が入っていますから、良かったらどうぞ」


「では、お言葉に甘えて使わせていただきます」


タイムスリップしてきた時には携帯電話世代であったらしい紫苑さん。

15年以上進んだ技術を見て興味津々だ。

特に音楽ソフトに入っていた20年前のJ-POPを聴くと、目をつぶって懐かしむような表情を見せた。

やはり少なく見積もってスマートフォンを知らないとなると紫苑さんは2010年以前にタイムスリップしてきたんだろう。

日本で本格的にスマートフォンが普及したのは2011年以降の筈。

また機会があればタイムスリップしてきた年の話題をするのもいいかもしれないが…女性に年齢を尋ねるのは少々失礼だ。

ここぞという場面で使わせてもらうとしよう。

そして小さい手のひらサイズの物体から音楽が流れだした途端に、雪ちゃんはビックリした表情で見ている。


「こ、これは妖術ですか!?」


「いえ、世界の科学技術力の結晶が生み出した数十億の人間が使用している工業製品です」


「すうじゅうおく…???そ、そんなに沢山の者たちがこれを使っているのですか!何とも凄まじい…」


「僕のいた時代は瞬時に人々が情報を共有する情報ネットワーク時代でしたからね、例えばいまこの場所にいるという文書を公開すれば世界中の人々がそれを知ることができるのです。ここから京など遠くにいる人にも会話することができます」


「なんと…本当に妖術のような話ですね…このような奇妙な物を使って話のやりとりをすることもできるとは…いやはや、刻流として佑志様が招かれた時代は凄まじいものです…」


雪ちゃんと会話している間。

紫苑さんはずっと音楽を聞いていた。

よほどこの曲が好きなのだろう。

ずっと目を瞑っていた。

2007年に大ヒットしたJ-POPミュージック。

名前を出せば誰でも知っている劇場版ロボットアニメの主題歌として採用された曲だな。

もしかしてこの曲を知っているのかな?

曲が終わってから目を開けると、紫苑さんは満足そうに語った。


「…随分と久しぶりに聴きました。もう聴くことはないだろうって思っていましたので…」


「それは良かったです。この曲が劇中で使われているロボットアニメも見ました?」


「ええ、あのロボットアニメのファンでしたよ。二作目が公開する直前にタイムスリップしてきたので…この曲はとっても印象深いです」


「マジですか!車に積んでいるノートパソコンに二作目と三作目の映像がありますので良かったら見ます?」


「勿論!!!是非是非お願いします!!!」


物凄い食いつきであった。

前髪で目が隠れていてもその食いつきっぷりは凄い。

やはり紫苑さんもアニメが好きだったのかもしれない。

トランクルームに積んでいたノートパソコンには多くのアニメや映画などが入っている。

16TBのSSDだ。

実に5000本以上の映像が入っている。

無論海賊版ではなくて全て購入したものだ。

ぶっちゃけまだ三分の一も見てない。


「ところで、このスマートフォンの電池は大丈夫なのでしょうか?充電率が31パーセントになっていますが…」


「それに関しては大丈夫ですよ。車の中に災害対策用の太陽光パネル式の充電機を持ってきていますので、物理的に破壊されない限りは半永久的に使えますよ!」


「本当ですか!!!やはり私がいた時代よりも進むと技術は更に上を行っているのですね!」


「紫苑様、その”たいようこうぱねる”とはどんなものなのでしょうか?」


会話に置いてぼりになっている雪ちゃんのためにも太陽光パネルについて簡単に説明した。

いけない…完全にこれは僕と紫苑さんだけが盛り上がっているじゃないか。

雪ちゃんを会話の中で置いてけぼりにしないためにも、気を使わなければ…。

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