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3:鮎の塩焼き

Q.信濃小笠原家って弱かったのか?

「よし、今から縄を解いてやるけぇ。そのままじっとしとれよ」


「どうもすみません、お願いいたします」


「あの…お身体には異常などはありませんか?」


「…ええ、身体は大丈夫そうですよ」


「それは良かった…もし怪我でもしたら一大事ですから…本当に…良かったです」


なんとか潔白(?)を証明することが出来たので、僕は捕縛から解放された。

締め付けられた場所がヒリヒリして痛いけど、無事に助かったことを喜ぶべきだろう。

さて、僕のことを刻流だと言った女性は縄を解いて体に異常がないかメディカルチェックをした後で自己紹介を始めた。


「では改めまして…私の名前は紫苑しおん…貴方と同じタイムスリップをしてきた者です。えっと…貴方は西暦何年頃からやってきたのですか?」


「僕ですか?僕は西暦2025年からやってきました…」


「2025年!!!私がタイムスリップしてきた年よりも15年以上経っているのですね…後で是非とも未来の話をお聞かせください!!!」


「こりゃこりゃ、刻流の未来話は突拍子すぎてついていけんわ…ほんじゃ俺の名前も教えないとな…俺は小笠原信忠(のぶただ)というモンだ。よろしくな」


「あっ、僕の名前は水野佑志(ゆうじ)って言います。こちらこそ改めてよろしくお願いいたします!」


「おうよ。まぁここだとジメジメしていて好かんからな。風通しの良い場所に移動して飯にするぞ。ついて来い」


信忠さんの後をついていくと、立派な御屋敷の中に案内された。

御屋敷というだけあってかなり広い。

使用人と思しき人たちがすぐに頭を下げて挨拶する。

うーん、まさに権力を握ると頭が上がるということを実感した。

屋敷の中はクーラーを付けているみたいにひんやりとした風が入って来てとても良い。


「すごく気持の良い風が入ってきますね…」


「ええ、この辺りは標高が少し高いのでその分気温が低いのです。夏は涼しいですが冬はその分冷え込みますよ」


「そうなのですか!という事は雪も積もるのですか?」


「そうですね…白馬や乗鞍のりくら程ではありませんが積もりますね…この辺りはあまり大雪は降らないですが、小高い場所故に平地よりは積もってしまうのです。冬の雪かきは一時間ごとに休憩を取らないと汗をきすぎて蒸れてしまいます」


「雪かき…中々大変そうですね」


「まぁ、大変じゃが雪が積もってお天道様が開いた時に見る白銀の盆地の光景はとっても綺麗だぞ佑志。冬になればお前にも見せてやろう」


「ありがとうございます!その時は是非ともお願いします」


会話の最中、早速信忠さんが名前で呼んでくれた。

綺麗という程なので、すごい光景なんだろうなと思った。

この時代ってまだ産業革命以前の筈だから空気はかなり綺麗だろう。

PM2.5が大陸から飛んでこないし、自動車や工場だってない時代だ。

…いや、工場っぽい鍛冶場とかはあったね。


そんな感じで軽く雑談を終えると着いたのは大きな客間だった。

畳みがずらーっと敷かれており、その中央に赤色の座布団が敷かれていた。

真ん中に信忠さんが座ると、その隣に紫苑さんが…。

そして僕も座ることになった。

お昼ご飯にと特別に信忠さんが厨房にいる料理人に作らせてきたという。

その経緯を紫苑さんが説明してくれた。


「私達は朝と夕だけご飯を食べるのです。あー…タイムスリップ前みたいに一日三食ではなく二食がこの時代では当たり前ですね。ただ、お昼ご飯がない分…朝食はかなり多めに出るのが特徴的です。暫くは慣れないかもしれませんので、当面はお昼ご飯もお出しします」


「本当にすみません…」


「なぁに、紫苑は刻流のお前さんに会えて嬉しいのさ!そうしょげて申し訳なさそうにしなさんな!飯を食べれば精も出るし、何よりお前さんは朝飯食べてないだろ。飯を食べないと力も出んぞ!ささっ、もうじき飯が出来上がる頃だ。良い匂いだろ?」


「これは…魚ですか?」


「そうだ!あゆだぞ鮎!今日取れたばかりの新鮮な魚だ!塩焼きで焼くとこれがまた最高に旨くてな…夕飯にこれと酒があればそれだけでも幸せってもんよ。ほら、出来たようだぞ」


「失礼します。お昼をお持ちして参りました」


「うむ、こちらに通せ」


三人の使用人の人がお盆を持ってきてくれた。

お盆には皿の上に焼きたての鮎の塩焼きが添えられていた。

塩焼きの鮎の匂いが急激に食欲を湧き起こしてくる。

両手を添えて、食べ物に感謝してから食べる。


「いただきます!」


このスタイルは昔から変わっていないようだ。

僕はタイムスリップしてから初めての食事にありついた。

A.守護大名としてはそこそこ頑張っていた。

元弘の乱で足利尊氏に気に入られて出世していたようで、その際に守護職として信濃に幾つか土地をもらったそうです。

また弓術に精通していたようで、京都小笠原家は歴代室町幕府お抱えの弓馬礼法の師範をやっていたという。

信濃小笠原家が負けた主要因として武田軍がチート(物理全振り)すぎて壊走したんじゃ…。

なお、武田信玄も元をたどれば小笠原家の祖とルーツは同じ模様。


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