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13:評定

「佑志様…佑志様!起きてください…!」



寝ている最中だったけど、突然家人が起こしにやってきたのだ。

腕時計で確認するとまだ夜明け前の午前4時56分だ。

今日は休日の筈。

それなのに起こしにくるとは何かあったんじゃないだろうか。

家人のイントネーションから察して、重大な出来事があったらしい。



「おはようございます…まだ夜明け前みたいですけど…何かあったのですか?」



「はい、林城にて緊急の評定ひょうじょうが開かれるとのことです。詳しい話はまだ私は聞かされておりませぬが…紫苑様から佑志様が起き次第、お着替えを済ませたら大至急林城にお越しくださいとの事です!」



「紫苑さんは?」



「たった今、お雪様と共に屋敷から馬を駆けて行きました!」



「…分かりました。直ぐに着替えて僕も行きます!」



評定…。

これは現在でいうところの会議の事だ。

家臣達に緊急会議を行う事態となれば…何が起こったのか?

着替えて支度を済ませると、僕は急いで屋敷を飛び出して林城に向かった。



この時代の移動手段は草履だけど、まだ僕は慣れていないのでスニーカーを履いていた。

本来であれば馬に駆けるべきなんだけど…。

生憎まだ乗馬のコツが掴めていないので乗れません。

バイクに乗るより難しいと思う。



馬のサイズもサラブレッドのような大型な馬ではなく、ヤギよりちょっとだけ大きい程度だ。

恐らくだけどポニーぐらいの大きさぐらいなのかもしれない。

戦国時代を題材としたドラマや映画では大きい馬が描かれることが多いけど、実際はちっこい馬なので少しだけギャップを感じたんだ。



まぁ、そんなくだらないことはどうでもいいんだ。

とにかく今は林城に急がないといけない。

ダッシュでいけば10分ぐらいまでには到着できる。

門番さんは僕の顔を見ると、直ぐに通してくれた。

顔のフリーパスで入れるっていいよね。

靴を脱いで評定が行われる部屋に案内されると、家臣の人達が揃っていた。

皆表情は険しい。



「おお、佑志が来たか…ではそこに座れ、極めて重大な事態が起こった…心して聞くように…永幸、始めてくれ」



「はっ、ではこれより緊急の評定をはじめます…」



重々しい言葉で永幸さんが評定開始の合図を始めた。

そして開幕一番に発した言葉に評定を執り行う部屋は騒然となった。



「先刻、木曽義康氏の使者と二女の岩姫様が参った…それによれば家臣の飯綱藤和ら和睦派が突如謀反を起こし、義康氏が討たれたそうだ…」



信濃小笠原と友好を結んでいるうちの一つで…最前線で今川勢への牽制を行っていた木曽氏のクーデターが起こった。

木曽氏は信濃国の南信地域一帯を支配している大名だ。

武蔵連合国に対抗する勢力として今川勢を牽制しており、源氏と平家との戦いで数々の武勲を挙げた木曽義仲の子孫だとも伝えられている。

突然のクーデターで家臣達はとても驚いていた。

特に、武闘派の丸山義明さん、山城忠助さんらは血相を変えて謀反を起こした飯綱藤和に怒りを抑えきれないでいたほどだ。



「なんだと?!では和睦派が実権を握ったのか?!」



「なんという事だ…奴らは和睦とは言ってはいるが、事実上今川との傀儡を望んでおる連中だ!我々を裏切る気ではないか!!!」



「南を失えば諏訪が戦の最前線になる…そう遠くないうちにこちらに攻め入ってくるぞ…今川の軍勢は既に木曽に入っておるのか?」



「使者からの話では、飯綱藤和らが今川勢数千を迎え入れて城内に入れておるとの事だ…」



南部方面が今川勢に乗っ取られたも同然という非常にまずい事態になったことは、戦にまだ詳しくない僕でも明白に分かった事であった。

信濃国…つまり長野県の南信地域に当たる場所である木曽や伊那周辺は諏訪や信濃小笠原家がある松本など中信地域とは目と鼻の先である。

おまけに梓川や奈良井川などこちら側に流れている川があるので、川に沿って行けば諏訪氏に当たらなくても、直接こちらを攻撃できてしまうので防衛線の大幅な見直しまでしなければならないんだ。

うわぁ~なんてことをしてくれたんだよ本当に…。

どうやら、事態は流動的かつ、迅速な対応を迫られる事態になりそうだ…。

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