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12:映画鑑賞会その2

最初は紫苑さんをノートパソコンの前に誘導して一人でじっくりと鑑賞したほうがいいかなと思ったんですけど、紫苑さんが僕と二人で観たいと言ったから驚いたよ。

なんでも誰かと一緒になって観たい気分だからと答えたんだ。



「その…久しぶりに映画を観ますので…やはりちょっと、緊張といいますか…誰かと一緒に観たいのです。佑志さんと一緒に観たいのですが…よろしいでしょうか?」



「えっ、ぼ、僕とですか?!…僕でいいんですか?」



「はい…雪ちゃんにも映画のことをお伝えしたのですが、やはり…その…観るのが怖いのだそうです…」



紫苑さん曰く、映像を見ることは怖いとのことらしく、今回は控えるのだそうだ。

未来の物に対して、やはりこの時代からしてみれば現実離れしたものが多く、危険ではないことは解っているそうだが、それでも不気味であると感じてしまうらしい。

なので、今回は雪ちゃんは部屋の外で待機している。



「分かりました…では、一緒に観ましょうか」



「ええ、お願いいたします。」



上映時間120分の映画を観終わった。

劇場版ロボットアニメの二作目を見終わった際には紫苑さんは感激のあまり涙を流していた。

ストーリーの最後で主人公がヒロインを救うために捨て身の攻撃を行うシーンで、それまでひょうきんでムードメーカーだった主人公レンが劇中で初めて男気を見せてヒロインの少女型ロボットのアヤを救うべく、真面目な目つきで旧型のロボットを操り、最新鋭の装備で待ち構えていたラスボスを一騎打ちの末に倒すシーンで物語は幕を閉じたのだ。



紫苑さんが以前から観たかった映画だっただけに、タイムスリップして見れなかったが、ようやく見ることが出来たのだ。

物語の最後で二人が結ばれるシーンは特に僕も涙腺が潤んでしまう。

その嬉しさとストーリー展開に感動して涙したのであった。



「本当に…いいですねぇ…この首都湾岸警備メカ『MINATO』…ちゃんとヒロインと主人公が救われる展開で…本当に良かった」



「前作だと湾岸を占拠した国家主義者のテロリストが悪足掻きの末に放った12.7mm弾で敬愛していた上司の小田さんが目の前で頭を吹き飛ばされて殺されるシーンで幕引きでしたからね…前作に比べても評価はかなり高いです。その分、原作の憂鬱な展開を望んでいるコアなファンからは賛否両論でしたけど…」



「でも、ヒロインのアヤちゃんがあそこまで努力したからこそ、最後のシーンでレン君と結ばれるのが本当に良かったんですよ!…うわぁ~っ、もう本当に…生きてて良かったなぁって…思います!!!レン君とアヤちゃんのカップルが公式になって…本当に今までの努力が報われる展開が素敵でした」



努力は報われる。

首都湾岸警備メカ『MINATO』とはそんなアニメだ。

お調子者でひょうきんだけどやる時は頑張り、そして人一倍に他人と仲良くすることができる主人公レン。

ドジだけどチームメイトのサポートを行い、的確に指示をこなすロボットのアヤ。

そして彼らをサポートする警備会社のメンバー達。



僕は彼のようなヒーローになりたかった。

高校生の時に憧れていたアニメ主人公だ。

漫画の原作ではアヤの頭脳ともいえる記憶用のメモリーチップがラスボスの手によって破壊された結果、レンと過ごしてきたすべての思い出を全て失ってしまう。



共に仲間として過ごした思い出も、次第に親しくなった喜びも、ロボットだけどレンの人柄に深く魅了されて自分の意志で愛を告白したことも、すべて喪失してしまったのだ。

その事にショックを受けたレンは失意のあまり警備会社を立ち去り、最後の別れ際にメモリーチップを新調してレンとの記憶が無いアヤに向けてロボットでも幸せに生きろと伝えて去っていく…という鬱展開の模範解答ともいえる悲しいストーリーだった。



原作者は元々鬱展開にしようと張り切って書いたらしいが、その報われない最終回で凄まじいファンから抗議の電話やファックス、挙句の果てには殺害予告までされたほどであった。

その結果、ストーリー展開を再編集した新装版が発表され、鬱展開からハッピーエンドに変更したのだ。

それがこの劇場版第二作目のストーリーだ。

原作もいいけど、僕はやはりこのアニメ版と劇場版が好きだ。



「…本当に、良いものを見させていただきました…佑志さん、ありがとうございます」



「いえ、紫苑さんのためなら…また何時でも来てください。」



「では、お時間が空いている時に…そのようにさせていただきます、それは今日はこれにて失礼します。どうぞごゆっくりお休みください」



「それでは佑志様、お休みなさい」



「はい、おやすみなさい」



劇場版を見終わって、紫苑さんと雪ちゃんが部屋から出る。

二人が出たのを確認してから、僕は布団の中でガッツポーズを取りながら喜んでいた。

ええ、喜びましたとも。

女子と一緒に映画を観るなんて、それなんて恋愛ゲーム?

もしくは友好度アップイベント?

いやもうね、ドキドキですよ。



その気じゃないのは分かってはいるんですが…その、近かったです。

ハイ、距離が。

ヤ―ポンド法導入した奴は滅ぶべし。

紫苑さんを間近で見ると凄い美人なんですよ。

近くで見て、その真実に気がついてしまった。

いやはや…こうして現代文明の有難みを体感しつつ、また明日から頑張らないといけない。



戦国時代…そう平和な時は長続きしないものだ。

突然隣国から宣戦布告されたり反乱や一揆が起こってもおかしくない時代だ。

そう実感したのは翌朝になってからであった…。

次回から戦が始まります。

木曽氏死なないで!戦スタンバイ!

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