結婚式会場にて
今日は、ナーミア様の結婚式当日です。私も桃色の可愛らしいワンピースを着せてもらい出席しています。
この世界では、婚約式は花嫁の地元、結婚式は花婿の地元でやるようです。なので3日前くらいから新しい家族達と一緒に花婿さんの地元の領地に来ています。
この世界の宗教は、光と闇の双子姉妹の女神様が一番偉くて、その下に他の神達がたくさんいるというものだ。全部コルマさんの受け売りだけど⋯⋯。
教会での誓いは、花嫁さんと花婿さんと神父さん3人だけでして、その後夫婦2人が他の人達が集まる会場に入る。
私は今、会場の屋敷の広い庭にいる。ガーデンパーティーのようになっていて、2人が来たら食事などが運び込まれるらしい。使用人さん達はとても忙しそうだが、賓客の方々は飲み物片手に思い思いに談笑している。
私はコルマさんと一緒に飲み物を取りに来ていた。
「 アリアはどのジュースが良い? 」
うっ、クールな女が好む飲み物ってなんだ⋯⋯?本当はりんごジュースが飲みたいんだけど⋯⋯。ゲームでヒロインがお茶会に参加する場面があって───
『 紅茶は紅茶で美味しいけど、やっぱりこんなものより、初めてカイル様と会ったパーティーで飲んだりんごジュースの方が私は好き☆やっぱり素敵な出会いがあったからかな〜 ♪ 』
───と言うのだ。主催者の悪役令嬢の前で⋯⋯。主催者前にして出された紅茶をこんなもの呼ばわりする勇気!!しかもカイル様って悪役令嬢の婚約者なのに⋯⋯。
なぜかヒロインの隣に座るカイル様と呼ばれる男も、満更ではない態度をとるところも意味がわからない。顔か⋯⋯!?顔が好みだったのか!?
「 ⋯⋯みっ⋯⋯水で 」
私がそういうとコルマさんは微笑んで、水ではなくりんごジュースを取って差し出してくれる。
「 はい、りんごジュース。アリアの目はこれを飲みたそうにしているからね 」
───パチリッ
そう言ってウインクを飛ばしてくるコルマさん。
正直言おう、素敵すぎて死ぬかと思った。前世の兄3人との違いがありすぎる。
六歳の誕生日に次兄にショートケーキのいちごを奪われたことを今でも恨んでいるくらいだ。何が、「 残してるから嫌いなのかと思った 」だ!!好きだから大事に残してるんだよっ!!
まぁ、ショートケーキのいちごって途中で口をさっぱりさせて、最後まで美味しく食べるための役割があるみたいだけど⋯⋯。
「 ありがとうございます、コル── 」
──ドカッ
「 あってんばっんっ!! 」
いきなり誰かが後ろから激突してきた。いきなりすぎてコップを死守するため、へんな言葉が出てしまったではないか。
一体誰だと、後ろを振り向くと、顔を歪めてこちらを睨みつける金髪碧眼の少年がいた。私より一つか二つ年上だろう見た目だ。
「 危ないではないか!!服にジュースがとんできたぞ!! 」
いや私、立っていたたけですが?そっちが危ないんですが!?
そこで私達の間に入るコルマさん。さりげなく、私を庇ってくれる。流石である。
「 失礼いたしました。殿下、すぐにお着替えを用意させます 」
「 俺様は、そいつに言っているのだ!!邪魔をするなっ!! 」
「 義妹は、このような人の集まる場は初めてでして、殿下の気分を害してしまったことは私が心よりお詫び申し上げます 」
「 なっ⋯⋯別に謝られたいわけでは⋯⋯ 」
はっ!!よく考えたら今のこの状況、チート光魔法使いのくせに、男に守られてばかりのあの主人公みたいだ。
私は素手で岩を砕き、木をなぎ倒す五歳児なのにこんなに庇われてていいわけがない!!
「 コルマ、私は大丈夫です⋯⋯ 」
「 ⋯⋯アリア⋯⋯ 」
私は、スッとコルマさんの前に出た。そして、俺様少年に目を合わせる。
「 なっ!!⋯⋯なんだ!? 」
「 誠に⋯⋯申し訳ありませんでしたーーー!! 」
腰を折って誠心誠意の謝罪の言葉を言った。
私の謝罪の声が大きすぎたのか、思ったよりも周りの注目を集めてしまった。
ちらりと 俺様少年 を見ると顔を赤くして涙目になっていた。
あれ⋯⋯? もしかして、また怒らせた?