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呪われた屋敷



 私とアナを乗せた馬車は、優しい白い壁と赤い屋根が特徴の屋敷に辿り着いた。

 私の産まれた家、アスリース家である。

 庭に植えられた花や植木は可愛らしいものが多く、全体的にメルヘンなお屋敷だ。ゲームではあのヒロインが住む場所なので、そうあって当たり前なのかも知れない。


「 まさにヒロインの家って感じね 」


 隣でアナが感想を呟いた。同じ事を思っていたようである。


「 我が家へようこそ、アナべラス嬢、アリア 」


 玄関前で待っていたらしいデレクが、馬車のドアを開けて、一人ずつ降りるのに手を貸してくれる。

 もう見た目以外の不良要素が皆無である。幼い時から身に染み付いた貴族令息としての動きが出ている。


「 ええ、楽しみにしていましたわ 」

「 よろしくお願いします。デレク 」

「 ああ、それじゃあ中に入って。お茶で休憩した後、庭を案内する。うちの庭は全部母の趣味だけどな 」


 そうして屋敷の中に入った瞬間である。


「 うっ!! 」


 私の全身を不快感が襲った。

 何か目に見えるわけではなく、体の中の臓器を何かにちくちく(つつ)かれているようで、それでいて体の表面には落ちない油とへどろが纏わり付いているような感覚だ。気持ちが悪い。

 体がふらついた私をデレクが咄嗟に支えてくれた。


「 大丈夫か? 」

「 ありがとうございます⋯⋯ 」


 隣でアナが眉を寄せて、屋敷の中を見渡している。彼女も不快感を感じているようである。

 だがデレクは普通のようで、心配そうに私達を見ている。彼はこの奇妙な感覚を感じていないようだ。


 すると、普段昼間はあまり声を出さない “ 大地の使いさん ” が私に説明をしてくれる。


『 これはすごい呪いだね。長い年月をかけて屋敷やそこに住む人々に同化してる。同化してるから彼は気づかない、少しずつ心が蝕まれている事にさ。アリアやそこのお嬢さんは小さい頃から魔力の感覚を鍛えているから、敏感に感じているみたいだね。特に君は大地に愛される乙女だから、この呪いは相当体に負担がかかるよ。早めの浄化をオススメするね! 』

「 でもどうやって? 」


 私は小声で尋ねた。

 呪いを浄化をするには対象に集中する事が必要だが、この屋敷の呪いは広い範囲に渡っており、どこに集中するべきか分からない。

 いったん外に出て屋敷全体が見える遠くから浄化するべきかもしれない。

 だが先ほど、外からは何故か呪いを感じられなかった。感じられなければ集中は出来ないので、つまり外からの浄化は無理である。


『 この呪いの中心となるものがあるはずだよ。物か人か、それとも動物か。まずは呪いの中心を探して、それに集中して浄化するんだ。君なら出来るよ! 』

「 了解⋯⋯ 」


 ひとまずアナと相談がしたい。

 ティールームに案内され座った後、どうやって二人きりになるかを思案する。私は考えた結果、無難な理由を選択した。


「 デレク、私ちょっとお手洗いに⋯⋯ 」

「 なら、(わたくし)も⋯⋯ 」

「 あ、ああ。気づかなくて悪い。部屋を出て右に行って、角を曲がってすぐの場所にあるから 」

「 ありがとうございます 」


 少し困惑した様子のデレクをおいて、私達は廊下に出てトイレに向かった。

 トイレに着くと、アナが(ひたい)に手を当てながら話し出した。


「 ゲームでは分からなかったけど、実際の呪いはきついわ。ヒロインは良く中盤まで我慢出来たわね 」

「 ゲームのヒロインは力に目覚めて浅かったからだと思う。私達は小さい時から鍛えてたから敏感なんだって、大地の使いさんが言ってました 」

「 大地の使い。やっぱりいるんだ、すごい。⋯⋯ところで、ここに入って一つ思い出した事があるのよ 」


 アナは大地の使いと聞いて少し目を輝かせた後、真剣な顔で教えてくれた。


「 確かこの屋敷浄化イベントはミニゲームみたいになっていて、呪いの中心を探すんだけど、毎回3つの中から正解はランダムで決まるのよね 」

「 へぇー、それが分かればだいぶ楽に浄化出来そうですね 」

「 そうよ。確か、ヒロインの祖母の肖像画か古時計。⋯⋯そして問題は残りの1つよ 」

「 問題? 」

「 ええ、残りの1つはヒロインの母親自身。彼女が呪いの中心である場合、家族の愛の力で呪いを引き剥がす必要が出てくるわ⋯⋯ 」

「 私赤ん坊以来、実の母に会った事すらないんです。赤ん坊の時も目は開いてなかったから顔は見てないし⋯⋯ 」

「 そうね、だから今の家族に頑張って貰わないと 」


 私はトイレで、まだ見ぬアスリース伯爵とティールームで一人で待たせているデレクを思い浮かべた。

 もし呪いの中心が私の実母アスリース伯爵夫人であった場合、家族の愛が試される時である。


「 連れションなんて前世ぶりだったわ 」

「 してないですけどね⋯⋯ 」


 私達は相談も終わり、神妙な面持ちでティールームに戻るのだった。


お読み頂きありがとうございます。

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