女子会
「 何か不便はない?何でも言って頂戴ね⋯⋯ 」
私はただ今、ティールームで女子会中。目の前には、養母様の エレーナ・ユリアーテ様 がいる。エレーナ様は、モカブラウンの髪に紫色の瞳の美しい女性である。
しかも優しい花のようないい香りがする。ふんす。いけないつい鼻をひくつかせてしまった。
「 いい香りでしょ?ダリオンに買ってもらった香水よ。王都で流行っているんですって 」
「 えっ!!香水ですか!? 」
てっきりエレーナ様から直に香っているのかと思った。それくらい花のように微笑む素敵な人なのだ。
ちなみにダリオンとは辺境伯様の名前である。ダリオン様とはあまり顔を合わせない。五歳児は早く寝るので、忙しいダリオン様とはあまり会う機会がないので仕方がない⋯⋯。
「 あらっ!アリアちゃん、香水に興味があるのね!!今度一緒に街に見に行きましょうよ!! 」
明るく誘ってくれたのは、16歳のナーミア・ユリアーテ様 。コルマさんの実の姉で辺境伯の長女である。ナーミア様は、エレーナ様とそっくりだが、瞳の色だけはダリオン様と一緒の赤紫だ。ちなみに黒髪、赤紫の瞳のコルマさんはダリオン様に似ている。
「 はいっ!楽しみです!! 」
「 いやぁ〜、可愛いわね。本当、事件の時は獰猛な熊のモンスターかと思ったけど⋯⋯ 」
「 こらっ!!ナーミア、女の子をモンスターに例えるなんてだめよ。アリアちゃんは、光の女神様のようだったわよ 」
そこに関しては、ナーミア様の方が正しいようなきがする。ヒグマ系クールヒロインか⋯⋯。攻略対象を無言で噛み殺しそうだな。物理的な意味で⋯⋯。
「 モンスター⋯⋯ 」
「 わぁ、落ち込まないで例えよ例え!! 」
「 その例えが、ひどいんでしょ!!アリアちゃんは私達の命の恩人なんだから 」
エレーナ様の腹部の刺し傷は綺麗に塞がったようだ。どうやらナイフに毒も塗られていたらしいが、私の回復魔法で浄化されたみたいで良かった。
自分でも把握しきれていない力とかこわいが、人の役に立てたことがとても嬉しい。
「 私、みんなを守るために頑張って修行しますっ!! 」
「 どっちかと言うと、淑女になる為の修行を頑張りましょうね!! 」
えっ、今淑女って言った!?前世は体育会系の兄3人の妹だった私に淑女になれと⋯⋯!!全身を鍛える為の筋トレの方法は知っていても、髪型の可愛いアレンジ方法とか全く知らない私が、淑女!?
「 なれますか⋯⋯ 」
「 まだ五歳なのよ!!私が立派な淑女にしてみせます!! 」
「 お母様の淑女教育は厳しいからね。私も散々泣かされたもの⋯⋯ 」
「 あらっ、そのおかげで好きな相手と結婚出来るのではなくて? 」
「 まぁ、そうね。感謝してるわ、お母様 」
ふふふと笑い合う2人。本当に仲がいい家族でほんわかします。
私も2人のようになりたいなぁ⋯⋯。
「 なれますとも、うふふ 」
あっ心の声が出てしまっていたらしい。恥ずかしい。
「 アリアちゃん、赤くなっちゃって可愛いわね〜 」
「 アリアちゃんが可愛いのは、良いとして⋯⋯。ナーミアは完全に嫁ぐ前に、貴族の妻としての最終確認をするとしましょうか? 」
「 ⋯⋯えっ⋯⋯!?だってもう一月もないのに 」
「 大丈夫よ最終確認ですもの、詰めに詰めればいけます。こうしちゃいられないわ 」
エレーナ様はナーミア様を無理矢理立たせてティールームから出て行った。その時にナーミア様がこちらを捨てられた仔犬のような目で見つめてきたが、私にはどうする事も出来なかった。まだまだ修行が足りないようだ。
後に、エレーナ様に淑女教育を受ける私は、この時のナーミア様の気持ちを痛いほど知ることになる。