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乙女の歌声



『 歌自体は下手すぎるし問題外として、途中にあったラップパートみたいなところはいらないね。あとなにを伝えたいのかわからないし、歌詞適当すぎるよ。でも熱意は感じたからいいんじゃない。今時熱意だけじゃアイドルは売れないけど 』


 

 私はいきなり饒舌(じょうぜつ)に語り出した “ 謎の声 ” に辛口に批評されている。

 ちなみにこの世界はなんちゃって西洋風ファンタジー乙女ゲームの世界なので何故かラップやアイドルが存在している。ゲーム中に音楽バトルなるものがあると、ゲームをすすめてくれた友達が言っていたくらいだ。

 そもそもゲームの題名が 『 光の癒しと乙女の歌声 』なのだから歌声は重要なのだろう。私がプレイしたところまではそんな場面はなかったから忘れていた。本来、歌がうまいはずのヒロインが私になってしまったなんてこの世界も不幸である。自分で言っていて虚しくなるが⋯⋯。


「 あの、声さんは誰なんですか? 」

『 ボクは、 “ 大地の使い ” だよ 』

「 “ 大地の使い ” ⋯⋯? 」

『 ボクは、大地に愛される乙女の手助けをするように言われてるの。今は一千年に一度の光の女神様が眠りにつかれる期間なんだ。その間、女神様の代わりをつとめるのが大地に愛される乙女なんだよ 』

「 つまり⋯⋯それって⋯⋯ 」

『 うん、君のことだよ 』


 “ 大地に愛される乙女 ” という言葉自体はゲーム知識で知っていたがそんな役目まであったなんて。ん?でも私はまだ五歳児だ。ゲームのヒロインは十五歳の時点でこんな声が聞こえる設定はなかったはずである。


「 ⋯⋯もしかして、私を助けるために出てきてくれたんですか? 」

『 うん、君が大きくなるまで本当は見守るだけのつもりだったんだ。でも本来ならもっと成長してから使えるはずの光魔法を使いこなしてるし、なんだか五歳児とは思えない行動ばかりとるし、あげくの果てには死にかけるから出てきちゃったよ 』

「 なんか、最初と喋り方が変わっていませんか⋯⋯ 」

『 最初は “ 大地の使い ” っぽさを出してみただけだよ 』


 大地の使いさん、歌の批評をするとき以外はおちゃめな性格のようだ。

 すると私の部屋に向かってくる複数人の足音が聞こえてくる。


『 細かいことはまた今度教えるよ。痛みは完全にとっておいたからもう大丈夫。⋯⋯歌は⋯⋯次に期待しておくよ⋯⋯ 』


 大地の使いさんがそういうと近くに感じていた気配がなくなった。


 ───バタバタバタ⋯⋯バタンッ


 次の瞬間、慌ただしくコルマさんが部屋に入って来た。


「 アリア大丈夫!? 呪術師の呪いの呪文みたいな声が聞こえてきたけど⋯⋯ !! 」

「 コルマ⋯⋯呪いの呪文って⋯⋯そんなに酷かったの⋯⋯ 」


 私が地味にショックを受けているとコルマさんはすごい勢いで駆け寄ってきた。私の顔を心配気に見つめてくる。目が充血していて、さっきまで泣いていたのがわかる。


「 もう、痛くないから大丈夫です⋯⋯ 」


 私は、コルマさんが安心できるように笑顔で言った。でも今度は微笑みながらぽろぽろと涙を流すコルマさん。


「 アリア⋯⋯僕はこれから君を裏切ることは絶対にないと誓うよ。何があっても君の味方だよ。絶対に⋯⋯絶対に⋯⋯ 」

「 コルマ⋯⋯ありがとう 」


 そしてまた部屋に向かってくる足音がする。


「 アリアちゃん!! 大丈夫なの魔物の唸り声が聞こえてきたけど!? 」

死霊呪術師(ネクロマンサー)はどこだ⋯⋯!? アリアはまだ生きているぞ 」


 入ってきた辺境伯夫妻は何故か戦闘態勢の魔法の構えをしていた。

 しかし、私が無事だとわかると涙目になりながら駆け寄ってくる。あっ、ダリオン様の泣き顔コルマさんにそっくりだ。


「 もう大丈夫です。エレーナ様、ダリオン様 」

「 良かった、アリアちゃん⋯⋯ 」

「 君は私達の光の女神様だ⋯⋯ 」


 ⋯⋯あのそれにしても、魔物の唸り声って⋯⋯死霊呪術師(ネクロマンサー)って⋯⋯。

 私そんなに変な歌声でしたか⋯⋯?

 呪術師系クールヒロインか。年中、目の下にクマつくってそうだな⋯⋯。



 私は三人に撫でられまくりながらそんなことを考えていたのだった。





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