第37話:えくすとら・くらす
「……え? 騎竜2頭も買ったの、なんで?」
ついに手に入れたソーキちゃんとサーターちゃんを連れ、スキップしたいくらいの気分でカンパニールームに入ると、いつの間にかログインしてきていた山田さんが呆れたような表情を浮かべた。
ちょっとイラッとする。
「片方だけだと可哀想でしょ、私のお金なんだからいいじゃないですか」
「まぁ、そりゃそうだけど、どうせ乗れるの片方だけだろ」
「なに言ってるんですか、乗るわけないじゃないですか」
「……は?」
騎竜はレンタルだと乗る時だけ呼び出す形になるけど、購入した場合は乗らない時もついてきて一緒に戦ってくれたりするらしい。
それはそれで嬉しいんだけど、うっかり魔物に倒されると死んでしまい復活できないのだ。
私はジルさん達に比べるとレベルが低いので、いつも私から見ると強い敵がいるエリアに連れて行かれることが多く、私の力ではこの子たちを守るのは難しい。
なので、乗るのはレンタルにするつもりなのだ。
まぁ、せっかくだから街の周り散歩する時くらいはちょっと乗るかもしれないけれど。
「なるほど、ますます意味がわからん」
「山田さん、ますます知能が低くなっていません?」
「唐突にディスるのやめてくれ」
わりと丁寧に説明したのにわからないと言う。
ゲームばっかりしてると頭悪くなるって子供のころよくお母さんに言われたけど、その実例が山田さんなのかもしれない。
「とりあえず、当分はこの子たちをここで飼いたいんですけど、部屋のすみの方に厩舎キットを設置してもいいですか?」
「うーん、今のところスペース余ってるし、臭いとかあるわけでもないからいいんじゃね?」
「まぁ、ここに来る前にジルさんに確認したので山田さんの許可はいらないんですけど」
「じゃぁ聞くなよ!」
部屋の入り口から見て左手奥の壁沿いに、騎竜を購入した時にもらった厩舎キットを設置すると、小さな屋根付きの馬小屋のような木造の小屋が生えてきた。
洞窟の中だし、屋根はいらない気がする。
できあがった厩舎にサーターちゃん達を入れると、おとなしく並んでくつろぎ始めた。
「おお、なんか意外といい感じだな」
厩舎の中でじゃれあって遊んでいる2頭を見て山田さんが顔をほころばせた。
「ふふん、そうでしょう。1頭だけだとこうは行きませんよ」
「なるほど、乗るためなら2頭は意味ないけどペット代わりと考えると悪くないな」
「ご理解いただけた所で、山田さん飼育委員お願いしますね」
「お前が買ったんだからお前がやれよ」
どさくさに紛れて押しつけようと思ったけどダメだったか。
まぁ、1日1回くらい掃除してごはん補給するだけなんだけど。
「適材適所ですよ、私が可愛がる係、山田さんが世話する係」
「俺は別に生き物の世話が得意だったりしないが」
「山田さんって、なんか下っ端ぽいですし似合うと思うんですけど。飼育委員」
「飼育委員がんばってる子達に謝れ」
山田さんに正論で怒られた。くやしい。
「……ところで、この厩舎特に仕切りがないけど、卵産んで増えたりしないのか?」
と、思ったら、唐突にセクハラギリギリの発言が飛んできた。
「どうなんでしょう、一応2頭ともオスって聞いてますけど、もしかしたらワンチャンあるかもしれませんね」
「いや、ねぇだろ」
「山田さん、もっと夢を持ってもいいんですよ」
両手で握りこぶしを作ってはげますように言うと、「そんな夢はいらねぇ!」と本気で嫌そうな顔をされた。
山田さんには夢が足りない。
――――――――
「――さて、と」
ちょっと噂のエルフを見てくる、と少し疲れた顔でカンパニールームを出て行った山田さんを見送り、一人になった所で、ずっと気になっていた視界の隅で点滅し続けているアイコンに目をやった。
さっきもらった討伐報酬でレベル30になった時、ピコンという音と同時に現れたそれは、特化クラスを選択できるようになったという印だ。
ソーキちゃん達をゲットする方が大事だったので後まわしにしていたけど、先週頑張りすぎたせいでレベル上げに行く気も起きないし、今日はこれだけ終わらせたら寝ちゃおうかな。
うん、そうしよう、とうなずきピッ、とアイコンを選択すると、視界いっぱいに選べる特化クラスとその内容が表示された。
「うわ、文字文字してる」
思ってたより情報量が多い、これ読むのはいいけどぜんぶ理解できる気がしない。
とりあえず、大きめの文字で書かれているクラス名と概要だけ読んでみる。
======================================
【アルバプレイヤー】
昼を司る神、アルバに祈りを捧げる者。
闇の力を弱め打ち払う術を身につける。
■主な習得魔法
ディバイン・レイ、ホーリーランド、等
======================================
【アルトプレイヤー】
夜を司る神、アルトに祈りを捧げる者。
肉体の傷を癒やす術を得意とする。
■主な習得魔法
オーバーヒール、フローヒール、等
========================================
【ウィルプレイヤー】
大地を司る神、ウィルに祈りを捧げる者。
人の肉体や精神を強化する術を得意とする。
■主な習得魔法
ウォード、プリベンション、等
========================================
【カイルプレイヤー】
海を司る神、カイルに祈りを捧げる者。
人の肉体や精神を正常な状態へと戻す術を得意とする。
■主な習得魔法
キュアポイズン、キュアスピリット、等
========================================
【ルーファプレイヤー】
生命を司る神、ルーファに祈りを捧げる者。
自身の生命力を他者に分け与え、また他者の生命力を
自らの物とする術を身につける。
■主な習得魔法
デディケ-ション、ドレイン、等
========================================
うん、抽象的すぎてよくわからない。
見た感じ、『術を身につける』と『術を得意とする』の2種類があって、『身につける』の方は新ジャンルの魔法がおぼえられる感じなのかな?
ファイターなら得意な武器に特化とか、キャスターなら火風水土の好きな属性に特化とか、すごくわかりやすいのに、プレイヤーだけなんでこんなことに……。
「……とりあえず、五大神が昼と夜と海と大地と生命を司ってることだけはわかった」
「それはマニュアルなりオープニングムービーなり見ればわかるだろ」
「うわっ、なんか出た」
びっくりした、いつの間にか山田さんが帰ってきてた。
「おどかさないでください、もうエルフはいいんですか?」
「話には聞いてたけど、ホントに耳が長くなっただけなんだな。狩猟ギルドのオッサンなんかあの厳つい顔のままで耳だけ長いから、エルフなんだかゴブリンなんだかわからん」
「あぁ、あの人もエルフになっちゃったんですね」
NPCはほぼ全滅してたからなー、と山田さんがつぶやく。
なんでも、掲示板では死んじゃうことを「エルフった」呼ぶのがはやり始めてるらしい。
このゲーム、エルフのイメージダウンがひどい。
「で、何やってたんだ? 特化クラス?」
「どれがいいのかよくわからないんですよねー、山田さんは悩む必要なくてうらやましいです」
「うるせぇ」
その代わり、レベル60になったら2倍悩むことになるんだろうけど。
「そもそもプレイヤー専門でやってる奴が少ないから他のクラスと比べて情報少ないけど、夜と大地がわりと人気っぽいぞ」
「へぇ、ちなみに一番不人気なのはどれですか?」
「ん……昼かな、主におぼえるのが攻撃魔法みたいだけど、魔法で攻撃したい奴はキャスターやってるしなぁ」
なるほど。
ネタで不人気クラス選んでみようかと思ったけど、確かに攻撃魔法おぼえてもしかたないかも。
うーん、悩ましい。
「……よし、決めました」
「おっ、どうするんだ?」
「とりあえず寝ます、おやすみなさい!」
毎回その場のノリで展開考えて書くのに限界を感じたので、少し休んで先のプロットまで考えてから再開します。




