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第21話:りにゅーある

 騎士の国のグランドクエストが進行した翌日には深森の国で、そしてそのさらに翌日の金曜夕方、ついに工芸の国ローアースでもグランドクエストが進行し、いままでは北の大地の奥でしか姿を見ることができなかった(らしい)魔族があちこちに現れるようになった。

 その影響は意外と大きく……


――――――――


【実績解除:祈りの道 Rank.3】

【称号:初級プレイヤー を取得しました】


「レベル15なったー!!」

「あらリンちゃんおめでとう……て早くない?」

「前に受けてた納品クエスト、だいぶ集まったからまとめて納品したら、なんかすごい報酬増えてました!」

「あぁ、グランドクエスト進行したからじゃないかな。医薬品の消費量が増えて素材の需要が高まってる設定になってると思う」

「レベル12から一気に3つも上がりましたよ、お金もいっぱいもらえましたし、しばらく素材狩りだけでもいいかもしれません」


 グランドクエストってなんか物騒な話ばっかりだと思ってたけど意外といい面もあった。

 うどんさんに装備作ってもらうお金も十分貯まったし……てあれ? うどんさんってレベル15の装備作れるんだっけ、作れたよね?


「今まで通りの素材狩りは難しいんじゃないかな、あちこちに魔族がわいてるから、ソロだと危ないよ」

「リンちゃん意外と集中力散漫だし、多分すぐやられてレベル下がっちゃうよぉ?」

「そんなに強いんですか? 魔族ってみたことないんですけど」

「強い、というか、ウザい?」

「ステータス的な強さはそれほどでもないんだけど、賢い感じかな」


 ジルさんが一瞬考え込むような素振りを見せ、自分の中で考えを整理するようにしながら説明を始めた。


「普通の魔物は、冒険者を見つけたら襲いかかってくるよね、魔族は冒険者を『探して』襲いかかってくる」


 冒険者が魔物を探して狩るみたいに、魔族も自発的に冒険者を探して狩りに来るらしい。

 しかも勝てそうな相手かどうかを見極めて、うしろから、こっそりと。


「パーティで固まって狩りをしていれば寄ってこないけど、ソロだと危ない。勝てない相手じゃないけど、魔物と戦ってる最中に隙を突いて襲ってきたりするから常に周囲に気を払う必要がある」

「ついでに、その辺の魔物をけしかけてきたりもするンよ。深森の国で芋虫が30匹くらい一気に襲ってくる動画あったけどリンちゃん見る?」

「わかりました。外出るの怖いので、私は一生この街でうどんさんと装備作って生きていくことにします」


 グランドクエストってなんか物騒な話ばっかりだと思ってたけど意外といい面もあるじゃん、とか見直しかけたけどやっぱり最低だ。芋虫の群とか絶対ヤダ。


「や、パーティ組めば大丈夫だって。リンちゃんレベル15になったンだし、そろそろ一緒に狩りしても経験値もらえるよ?」

「うん、そうだね。今日は色々調査したいから、明日のお昼からでも都合の合うメンバーで狩りに行ってみようか」

「じゃぁ、それまでに装備そろえておきますね。まだビギナーソードとかレザードレスアーマーなので!」


――――――――


「おーはーよーうー」

「あら、今日もこんなに早く起きてきたの?」


 ふらふら階段を降りて声をかけると、朝ごはんの準備をしていたお母さんが本気で驚いた顔をして私の顔をのぞき込んだ。


「今週ずっと起こさなくても起きてきてたから、今日くらいはゆっくり寝るのかと思ってたのに。どうしたの? 病気? それとも何か怒られるような事してごまかそうとしてる?」

「……お母さんには娘を信じる心が足りないと思う。私はやればできる子なのです」

「お母さんの娘だし、できれば信じてあげたいんだけど、お父さんの娘でもあるのよねぇ……」

「なんでそんなひどい事言うの! お父さんの娘に産まれたのは私の責任じゃないのに!」


 あ、トイレからうめき声がきこえる。

 お父さん、てっきりまだ寝てると思ってたのに起きてたかー。


「とりあえずシャワー浴びて目を覚ましてくるから、私の分もごはん作ってー」

「はいはい、でもほんとに大丈夫? すごく眠そうだけど」

「明日はもうちょっと寝るぅ」


 本当は今日も寝るつもりだったんだけど、うどんさんに今日のお昼までに装備作ってもらおうと思うと、深夜まで起きておくか朝早く起きる必要があることに気づいてしまったのです。

 まさかお母さんも、私が今起きたんじゃなくて30分以上前に起きてゲームしていたとは思うまい。


 「うばぁ」

 

 熱いシャワーを顔から浴びると変な声が出た、強ばっていた顔の筋肉が緩んでいくのを感じる。

 意識は覚醒していくけど、頭の奥の方が眠気でボーッとしたままなのも自覚できた。

 うん、疲れてる、ちょっと生活のリズムを考え直さないと授業中に寝ちゃうかもしれない。


――――――――


 朝ごはん(なんとツナ缶入りの卵焼き!じゅわっとしみ出る甘みと旨みが最高)を急いで片付け、散歩も早めに切り上げて、いそいそとログインすると、お待ちかねの新装備が完成していた。


「ほれ、預かってた奴」

「うどんさんが『寝る前に預けておく』て言ってたからカンパニーの誰かがいるのかと思ったら、まさかの船長さんとか」

「文句があるなら俺が着るぞ」

「めっちゃ伸びてヨレヨレになりそうなのでやめてください」


 受け取った装備をひとつずつ身につける。

 武器は【シルバーレイピア+1】、私は剣で斬るんじゃなくて突くことが多いので、ソードよりもレイピアの方が使いやすいだろう、とうどんさんが提案してくれた。

 防具はうどんさんが鍛冶で普通に作れるのはゴツい鎧になっちゃうので、いままで使っていた装備を補強する形にしてもらった。レザードレスアーマーは裏地に鎖帷子を、表のレザーの部分には金属の小札を縫い付けて【スケイルドレスアーマー】に、レザーミトンとレザーハイブーツ、レベル8の時に買ったレザータイツも同じように金属で補強して強度を上げてくれた。


「おう、いい装備だな」

「だいぶ強くなりましたよ、見た目は前の方が可愛かったですけど」

「贅沢言うな、アイツにデザインセンス期待するのは無理だ」

「あ、でもレイピアは格好いいです、ほらほら」

「突くな! 俺の顔突くのやめろ!!」

「……切れが悪い、もっと殺意を高めなきゃ」

「そろそろ俺の殺意が高まりそうなんだが」

「そうだ、今日、お昼からカンパニーの人達と一緒に狩りに行くんですけど、船長さんも一緒にどうですか?」

「……せっかくだけど今日も徹夜だったし、夕方まで寝るわ」

「え? でもそれだとキャンセル料かかりますよ?」

「お前、なんでそうポンポンと……いや、いいわ、頼まれたものは渡したし、もう寝る」


 じゃぁな、と手を振って船長さんはログアウトしていった。ちぇ、つまんないの。

 お昼までまだ時間あるし、カンパニーの人誰もいないし、何しようかな。


 うーん、と悩んでみる、いつもなら素材狩りだったけど今は危ないみたいだし、とりあえず……


「お昼まで寝よう」


 そうしよう。

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