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第18話:てぃーぱーてぃ

第2章開始。

だけど2週間かけて1話もストック出来なかった悲しみ。

プロットもないので不定期化する可能性がわりと高いです。

「……なんということでしょう」


 ぬくぬくとしたベッドの中で自然に目がさめた。

 肌を刺す部屋の寒さを避けるように、無意識に頭までかぶっていた布団から右腕を伸ばし、枕元の目覚まし時計を掴んで目の前に引き寄せる――6時2分、31秒。

 先週までの起床時間より30分以上早い。


「休日だけじゃなくて平日まで早く目がさめるなんて、やればできる私がついに、真の実力に目覚めてしまった」


 まぁその分、授業中とか部活中に居眠りしそうになっている時点で、むしろダメな子がますますダメな子になっているだけかもしれない。(いや、そんなことはない。と、思いたい)

 ぬくもりの残る毛布を身体に巻き付けながらもぞもぞとベッドから抜け出し、椅子に深く座る。


「えっと、たしか昨日の夜でちょうど10回だから、あと80回?」


 ギアをかぶって電源を入れコントローラーを手に握り、眠気覚ましに深呼吸ひとつ。

冷えた空気が肺を満たし、内側から冷やされた身体がぶるり、とふるえる。


 今日は水曜日、つまり、「あれから」3日目の朝。

 私は少しでも効率よく辻ヒールの回数を稼ぐために、朝早起きしてゲームするという、学校の友達や妹に言ったらドン引きされそうな生活を続けていた。

 むしろ自分で自分にドン引きだ。

 こういうときは、なんて言うんだっけ……そうそう


「どうしてこうなった――」


――――――――


 それは週明け、月曜日の放課後。

 部活でパートごとに分かれた基礎練習の合間、センパイと二人でお茶を飲み雑談を交えてひと休憩していると、「そういえばさ」とふと思いついた、ようなふりをして話題を振ってきた。


「土曜に設定したギア2の調子どう? 例のゲーム面白い?」

「うん、調子いいですよ。ちゃんとネットにつながりますし。今日からセンパイのこと感謝と信頼と悪意を込めてサポセンって呼んでもいいですか?」

「ヤだよ、やめてよ。そもそもなんで悪意込められなきゃならないの」

「だって、感謝と信頼だけだとストレスたまるじゃないですか。私が」


 えぇーっ、と大げさに顔をしかめて見せるセンパイ。

 ふんす、と満足げに笑う私。

 ここまでは、いつも通り楽しかった。


「それで、ゲームの方はどうなの? 人が多すぎてログインできなかったりするらしいけど」

「ログイン?は、普通にできましたよ。そんなに人が多すぎる感じもなかったですけど、なんかモテまくりでフレンド申請殺到しました。ヤバかったです」

「……へぇ、ふうん?」


 あれ? なんか引っかかった?

「モテまくり」にヤキモチ焼いてると言うよりも、なんか面白いものを見つけた、みたいないたずらっ子の顔――


「やっぱ、『ローアースの聖女』ってキミなんだ?」


――乙女にあるまじき勢いで思いっきりむせた。



「……ぅぇっ、えふっ」

「だ、大丈夫?」


 センパイが心配そうにオロオロしているけど大丈夫なわけがない。

 マンガやアニメで焦って飲み物を吹き出すシーンを見て、「笑って吹き出すならわかるけど、焦って吹き出すとかないわー」とか思っていたけど、体験して理解した。

 アレは焦って吹き出してるんじゃなくて、焦って飲み込んで気管に入ってむせて吹き出してたんだ。

 ただのお茶で良かった、ココアとかミルクティー飲んでたら大惨事だった。


 いやいや、そんなことより


「なっ、んで、センパイ知ってるんですか!」


 無理矢理呼吸を整えて問い詰める。

 もしかして設定してもらった時に盗聴器的な何かをしかけたとか!?

 ちょっとおかしい人じゃないかと思ってたけど、まさか、そこまで……!


「え、いや、だって、ほらこれ」


 待ってましたとばかりに手際よく操作して、ヒョイッと差し出されたスマホに映し出されていたのは……なにこの動画、私!?


「え、これいつ? どこで??」

「聖女スレによると、昨日のお昼前に冒険者ギルドで撮影されたらしいよ」

「聖女スレっ!?」


 なにそれ、なにがどうなってるの!?

 ちょっとセンパイ、爆笑してないで説明を!


「っはは、ごめんごめん、予想以上に面白い反応でちょっと……くふふ、あっ、待って、殴らないで」


――結局、センパイの説明を聞いたり、「聖女スレ」を見せてもらったりして、なんとなく状況を把握した頃には30分以上経っていた。


「……ねっとげーむこわい」

「特にキミ、表情特徴的だし声も変えてないし名前もほぼそのまんまだし、もしクラスメイトとか部員に出会ったらわりとすぐにバレると思うから気をつけた方がいいよ」

「うひぃ、なにに気をつければー」

「とりあえず、これ以上目だたないようにしておくことかな?」


 そんな事いわれても、とくに目立とうと思って何かしたわけじゃないんだけど……


「あ、そうだ、もうこの際だしちょっと相談があるんですけど」

「ん、なに?」

「このゲーム、魔法の使用回数に制限があって、1時間に1回分しか回復しないんですよ、それで――」


 例の【偽善者の腕輪】の件をセンパイに話してみた。

 何かアドバイスがもらえると期待したわけでもなく、グチを聞いてもらえれば、くらいの気持ちだったんだけど、


「ふうん、意味がわからないギミックだけど、なんか大変だね」

「大変なんです」

「でもキャラクター削除してやり直したくもないんだ」

「ないです」

「で、とりあえず2時間に1回になっちゃった辻ヒール100回なんてマゾいのを目指してみる、と。」

「マゾいうな」

「んー、じゃぁ、気休めかもだけど……」


 センパイって、そういえばわりとゲームオタクっぽい所あったなー、なんて


「平日夜だけで回数稼ぐのは効率悪そうだから、朝も早起きしてやってみたら?」


 改めて思い知ったわけです。

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