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第17話:INTERMISSION

閑話休題。

延々と設定を書き連ねているだけで、あまり内容はないので読まなくても大丈夫です。

 かつて鳴り物入りで登場した「VRゲーム」というジャンルは、大成功を収めることには()()()()ものの、その秘めた「可能性」に魅せられた研究者やゲーム開発者達の手によって少しずつ完成度を高めていった。

 やがて、テーマパークや大型アミューズメント施設における体感型アトラクションの花形コンテンツとして人気を集めることでさらに発展し、「フルダイブ」と呼ばれる理想型(第3世代)へと大きく近づいたVR技術は、デジタルアミューズメント分野のトップメーカーの手によって開発された家庭用VR端末「バーチャルギア」の登場により、ふたたび家庭にその姿を現す。

 それは第2世代相当の機能を持ち、かつて家庭用ゲーム機やパソコン用周辺機器として発売されたVR機器とは比較にならない体験を提供するものではあったが、1台約45万円という価格設定、および使用するには高性能なパソコンもしくは別売の専用端末が必要とされたため、話題にはなったものの普及には至らなかった。

 その2年後、ゲーム専用に仕様を調整し、第1.5世代相当にまで機能を簡略化する代わりに普及価格帯までコストを抑え、さらに単体での動作を可能にした「バーチャルギア2」が発売されるに至り、ついに「VRゲーム」は通算何度目になるかはわからないが、今度こそ、と期待される「真のVR元年」を迎えることとなったのだ。


 現在、テーマパークなどに導入されている最新のVR技術は「第2.5世代」と呼ばれ、VR空間内での比較的自由な運動と、五感のうち味覚・嗅覚を除いた視覚・聴覚・触覚の再現が可能になっている。

 対して第1.5世代たるバーチャルギア2では、「(専用モジュールによる補助・補正機能をバッサリ切り落としソフトウェアで調整することで、習熟へのたゆまぬ努力が要求されるもののなんとか実現された)VR空間内での比較的自由な運動と、五感のうち味覚・嗅覚・触覚を除いた視覚・聴覚の再現(つまりモニタとスピーカー)」が対応範囲となる。

 ただし、本家第2.5世代VRには特に必要とされないため搭載されておらず、バーチャルギア2にのみ搭載された特別な機能がひとつある。

 それが、プレイヤーの現実の目や口の動き、表情などをVR空間内のアバターに反映するためのフェイス・モーション・キャプチャリング機能であり、これによって細やかな感情表現や他者との円滑な意思疎通が実現されている。


 このフェイス・モーション・キャプチャリング機能は安価で小型な端末に搭載されているとは思えないほど高精細であり、装着者とは異なる見た目のアバターであっても、本人に極めて近しい人間であれば「どこかで見覚えがあるような」という既視感を抱かせるほどである。


 すなわち……


――――――――


「これ、あいつじゃないかなぁ……?」


 彼女の家でギア2の設定を手伝った翌日、夕食後の暇つぶしに例のゲームの情報をネットの匿名掲示板やまとめサイトをウロウロしていてたどり着いた、「【聖女】横穴式住居ローアース村 その3【降臨】」というページ。

 ゲームの開始地点として選べる3つの国のうち、最も人気の無い国・ローアースの専用スレッドをまとめたものだ。

 他の2国のスレッド数が共に二桁を超え、特に騎士の国は50近くまで進んでいるのに対し、わずか3スレッド目までしか進んでいない辺りにその不人気さが窺える。

 もっとも、その騎士の国は人数が多すぎて首都とその周辺エリアが10以上のインスタンスに分かれてしまいフレンド同士でも合流が難しいどころか、ログイン障害まで発生していてゲームにならないらしいけど。

 それに対して横穴式住居ことローアースはログイン障害も少なく気楽に遊べるため、この週末からじわじわと人口が増え始めている、という噂だ。


 そのローアースでいま話題になっているのが、50人規模のレイドによるNMの撃破と、その戦闘中に突然現れた聖女、リン・エラント。

 まぁ聖女と言っても、周りが面白がってそう呼んでいるだけで、実際にやったのは野良ヒールくらいらしいんだけど。

 なんでその程度で聖女呼びされてるのかはあんまりピンとこない。


 そのページの中程に、「聖女ちゃん100面相ww」として貼られていた動画。

 それは、彼女が今朝ゲームを始めた直後に撮られたもので、楽しそうに会話している最中に突然何かに気づいたようなそぶりを見せたあと上の空になり、そして何かを考え込みながら様々な変顔を披露しだす3分にも満たない映像だった。

 アバターの顔は似ても似つかないけど、この特徴的な100面相は多分彼女だ。

 今日からゲームを始めたというのもだいたいタイミングが合うし、記事を読む限りマイペースな言動や唐突に飛び出す毒舌も健在。


 それにアバターの名前、「リン」。


「名字変わってるって事は、ネットゲームを本名で遊ぶのやめろって、前に言ったの一応おぼえてくれている、んだろうなぁ」


 それにしても、なんでよりにもよって横穴式住居の国選んだんだろう、中世風の国とか森の中の国とかの方が好きそうなのに。

 逆にアバターは妙にかわいらしい造形で、原始的な風景とのミスマッチがひどい。

 まぁ、他の2国は人が多すぎて選べなかっただけかもしれない。


 ページを更新すると新しい動画が追加され、ワンピース型の新しい装備を身につけて、大きな姿見の前でくるくる回るリン・エラントの姿が映しだされる。


「やっぱり楽しそうだな、バイト、探してみるかなぁ」


 幸か不幸か、夏に起こった騒動の影響で部活も今は余り活発に行われていない。

 少なくとも新入部員が入ってくる4月までは土日の練習は行われないだろう。

 ハードとソフトを合わせて約8万円弱……いや、正月にお年玉でタブレットを購入した時のポイントが残ってるはずだから、7万円くらいかな?

 多少ある貯金、毎月の小遣いを加えて、必要なお金を抜いて……今月と来月で5万円稼げば春休みの途中くらいでなんとか買えそう。


「よしっ」


 そうと決まれば行動あるのみ。

 開いていたまとめサイトの画面を消し、バイト情報サイトを検索する。

 来週から3月いっぱいくらいまでの週末短期バイト、何かいいのが見つかればいいな。


「とりあえず、明日は聖女ネタでちょっとからかってみようかな」


 どんな反応をするか楽しみだけど……別人だったらどうしよう?

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