強の章
今回の<強の章>の“強”の意味は、“強者達”という意味です。
物語もいよいよ大詰めです。
〜ライター視点〜
サタンの攻撃によって、周囲の壁は崩れ、柱は折れ、床は焦げ、瓦礫が散乱し、大聖堂はもはや以前の神聖な面影を残してなどいなかった。
<…………。>
巨体の背に付いた翼を羽ばたかせながら、未だ立ち込める煙をカメラアイ越しのモニターからじっと見つめるサタン。
<…………。>
その顔には、狂気的な笑みが浮かんでいた。ただ、その顔のまま全く動かず、硬直している。
<…………。>
やがて煙は晴れていき、サタンはその笑顔のまま
操縦桿を力強く握った。
<……何故だ。>
サタンの目には、龍二達がゆっくりと焼け焦げた地面から立ち上がっているところだった。
しかも、全員傷一つ負っていない。
<何故、あの攻撃を食らって無事でいる。>
「……『龍鉄風・鉄壁』。」
サタンの、冷たいほど無機質な声に答えるように龍二が呟いた。
「俺の周りを氣の壁で囲み、ありとあらゆる攻撃を無効化させる防御技。」
立ち上がり、埃をパンパンと払う。
そして各自武器を持ち直し、サタンを睨んだ。
「俺らはな、負けるわけにゃいかねえんだよ。何が何でも。ましてやお前なんかにな。」
<…………。>
サタンは笑みを消し、完璧無表情になり、それでも目からは怒りが滲み出ていた。
<……図に乗るな小僧。何度も何度も言わせるな。無駄なのd>
「言わせてるわけじゃねぇし勝手にテメェが言ってるだけだろつーか聞き飽きたわボケ。」
サタンが喋ってるのを遮って毒を吐く龍二。その声には明らかな侮蔑が込められている。
<………………小僧。
そんなに死にたいかぁ!!???>
【バサァ!!】
背中の羽を大きく動かし、羽を撒き散らしてサタンは怒り狂った。
「無駄だろうが何だろうが何度だってやってやるさ。」
対し、龍二達は再び武器を構えた。
(……とは言ったものの、あのコーティングをどうにかしない限り今んとこ勝機はない。龍鉄風・鉄壁ならいかなる攻撃も防げるが、それだと一方的に攻撃されるだけだし、何とか反撃しねぇと。)
太刀を脇に構えながら、龍二は頭の中で思案した。
(あのコーティングを消すには……和也の“魔力挿入”か……いやダメだ。全ての法則を無視する技はあるにはあるが、リスクが大きすぎる。ここで賭けをするのはまずい。なら文一の別人格、蓬の“否定”は……こいつもパス。性格に難あり。
……どうする……。)
<死ね!!!>
「!」
思案を中断し、体勢を低くしたロボットが大剣を突き出して猛スピードで突っ込んできたのを跳躍して回避する。
【ドォン!!】
(ふむ……葵はああいうのを無効化にする術とか持ってるっていうのは……ダメだ。それならとっくにやってる。零時は格闘専門だし……何なら、俺がちょっと本気を出して……ダメだ、そんなことしたら確かに倒せるかもしれんが、和也達はともかく城もろとも龍乃達を吹き飛ばしかねん。つーわけで却下。)
着地し、再び考える。
(さて、マジでどうしたもんか………………………
!!)
思案顔から、何か思い出した顔になった。
(…………そうか……すっかり忘れてたぜ。)
口の端を吊り上げ、不敵に笑った。
「…お前ら、ちょっと聞いてくれ。」
「「「「?」」」」
龍二が少し振り返って背後にいる皆に呼びかける。さっきの攻撃で全員離れた位置に立っているが、龍二の声はしっかりと届いていた。
「今から、あいつに大ダメージを与える。」
「!? そんなことできるの!?」
葵が驚くが、龍二は続ける。
「ああ……この技さえ当たれば、こっちにも勝機が出てくる。そこを一気に叩く。
だが、一つ問題がある。」
【ゴォ!!】
ロボットの薙ぎ払いが龍二に迫るが、これを屈んで回避する。
「今から氣を溜めるんだが、これが少し時間がかかる。その間に攻撃でもされたらアウトだ。」
ロボットの腹を蹴り飛ばし、距離を離す。
「「「「…………。」」」」
「そこで、オメェらに頼みがある。俺が氣を溜めてる間、あいつの注意を俺から逸らすと同時に時間稼ぎをして欲しい。時間は大体、三分……いや、
五分だ。」
二分延長したのは、それだけ溜めれば成功する確率があがる。少しでも勝利に近づくには重要だった。
「……お前ら、やれんな?」
龍二が、和也、葵、文一、零時、に目配せをする。
「……へっ、当たり前でしょう? 龍二さん。」
「そうそう。五分だけでしょ? 楽勝だよ。」
「やれるだけのことはやります。」
「しっかり溜めろよ龍二?」
全員、笑顔で答えた。余裕と、決意の色が瞳に浮かぶ。
「……頼んだ。」
<何をゴチャゴチャ話しているのだ貴様らあああああああ!!!>
【ズオオオオオオオ!!!】
龍二が笑顔で頷いたと同時に、ロボットは羽を広げて大剣を振り上げながら迫ってきた。
「させるかよ!!」
【ガァン!!】
和也が龍二の前に躍り出て、鎌と雨嵐で防ぐ。
「いっくよー!!」
「茜……二刃展開!!」
「おらああああああ!!!」
葵、文一、零時も続き、ロボットを押し返していく。
「……エル、共鳴解除。」
『わかった。』
太刀から二刀へと戻し、左右の鞘に収めた。
「…………。」
そして、右手の人差し指と中指を立て、前方に突き出して棒立ちとなる。
(行くぞ……チャージ開始。)
目を閉じ、体の中の氣を感じ取るのに集中した。
「そらよっと!!」
鎌と雨嵐を右へ振り、大剣を弾く。
「食らえ! 雨宮流剣術基礎! 『破空斬』!!」
雨嵐の刃が蒼い軌道を描きながら上へ振り上げるが、大剣でガードされる。
「続いて鎌術『破空斬・鎌』!!」
流れる動きから左手の鎌を振り下ろし、縦一文字に切り裂く……はずだが、
【ブン】
姿を消され、空振りに終わる。
<死ね!!>
「チィ!!」
刀と鎌の攻撃範囲外に現れ、ロボットは大剣を振り上げる。
「させるか!! 『斬撃破斬』!!」
横からの文一の斬撃が大剣の側面に叩きつけられ、和也の横へと落ちた。和也は追撃せずに一旦距離を取る。
「そぉれぇ!!」
和也を飛び越えるように、葵が剣を大きく振り上げながら飛び出し、一気に振り下ろされる。
<バカが!! 死ね!!>
【ヂヂ…】
葵が落下する中、頭に付けられた角から黒い電流が流れ出す。
「!? やば!!」
葵が気付いた時には、すでに角から漆黒の雷が真っ直ぐ葵目掛けて飛んできていた。
【ブゥン!】
だが、葵は消え、雷は葵がいた空間を通り過ぎて壁に当たって爆発する。
【ヒュ】
「も一回! そぉれっと!!」
ロボットの背後の空間に裂け目ができ、そこから飛び出してきた葵は再び剣を振るう。
狙うは、羽の付け根。
【ガィン!!】
「! つぅ!」
想像以上に硬く、顔を顰めて思わず剣を取り落としそうになる。
<この小娘が!!>
「うっせぇえ!!」
【ドォン!】
葵を掴みかかろうとロボットが左手を向けるが、懐に入り込んだ零時のアッパーを食らって若干上へと吹き飛ばされる。
「よぉし!!」
手の痺れが収まった葵は、剣と床に突き刺して両手を高く天へ突き上げる。
「『呼ばれて』!!」
葵の頭上に、漆黒の空間の裂け目ができる。
「『飛び出て』!!」
そして、その裂け目から“?”マークが描かれた巨大なカラフルな箱が現れ、蓋が開く。
「『ビックリ箱おおおお』!!!!」
【ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!】
ありとあらゆる物……電柱、ポストはもちろんのこと、車、トラック、自転車、バイク、大木、看板、本棚、タンス、自販機、空きビン、ペットボトル、石ころ……が、箱から飛び出し、雨あられとロボットに降り注がれる。
<くだらぬ!!>
それを大剣で一振りし、回転してる刃からカマイタチが発生して全部切り刻んで粉々にした。
<はぁぁぁぁあ!!!>
宙に浮いたまま刃を返し、真下にいる零時に大剣を振り下ろす。
「当たるか!!」
当たる寸前、床を蹴って瞬時に横へ飛んで回避する。大剣の刃によって床が抉れ、瓦礫が飛び散る。
「ちぇすとーーーー!!!」
「おらあああああああ!!!」
瓦礫を物ともせず、和也と文一が鎌を、茜を振るい、ロボットを吹き飛ばした。
「今何分!?」
「一分経ったくらい!!」
和也が鎌を構えなおしながら聞き、答える零時。背後では龍二が氣を溜めていた。
<……調子に乗りおって……。>
「そりゃお前だろーが。雨宮流無差別格闘術、奥義!!」
走り、鎌を持ち替えて右の拳を大きく引き、焔を纏わせる。
「『龍滅焔帝掌裂破』!!!」
【ズドヴ!!!】
龍の如く蠢く焔を胴体に叩きつけ、小爆発を起こす。
「四刃展開、強化×強化×発射×爆散!! 逝け!!!」
すかさず懐に潜り込んだ文一は、茜を持っていない左拳を大きく引いた。
「『黎明滅掌』!!!」
魔力の塊が込められた拳を和也が放った場所目掛けて叩きつけ、同じような爆発を起こして無理矢理ロボットを後退させた。
<小癪な……!>
【ブゥン】
悪態をつきつつ姿を消し、上空で再び姿を現す。
<これで……>
【バサァ!】
足を揃えながら翼を広げ、魔力が注ぎ込まれた羽一枚一枚が電流を放つ。
<終わりだ!!>
和也達に向けて翼を向け、同時に無数の羽を飛ばす。羽は紫の軌道を描きながら真っ直ぐ四人に向かっていく。
「『エターナル・デッド・エンド』!!!」
だが、葵が前方に巨大な異空間への穴を開き、全ての羽を吸い込んでいった。
<おのれぇぇぇ!!>
サタンが忌々しく叫び、大剣を横へ大きく振るう。
「させるかよ!!」
零時が右手を手刀にし、頭上へ大きく振るった。
<死ね!!>
「『瞬刃』!!!」
ロボットが横へ振るうと漆黒の斬撃が巨大な衝撃波となって飛び、対して零時が手刀を一気に振り下ろすと真空刃が発生し、迎え撃つ。
【バキィン!!】
真空刃と衝撃波がぶつかり合い、ガラスのような音をたてて砕け散った。
「はぁ……はぁ……はぁ……。」
「ふひぃ……。」
「クソ……そろそろ、まずいか……。」
「チッ……。」
四人とも一気に連続攻撃を繰り出したせいで、心身ともにボロボロとなっていた。
それでも目の光は失われておらず、しっかりと地に足を付けて武器を構える。
「……こうなりゃやるしかねぇな……鎌!」
『了解! かましちゃいましょう!!』
【ジャギン!】
和也は足を肩幅に広げ、鎌を横向きにして高く掲げた。
「運命を束縛せし封印の鎖よ、我が従者たる物を解放せよ、裁きと破滅の闇から解放されたし。」
『封印解除。システムリンク……魔力を設定。ETHER ON 解除。全滅する。』
【イィン】
瞬間、掲げた鎌から溢れんばかりの強大な魔力が発せられる。魔力、それすなわち自然の五つの元素、火、木、土、金、水という、『五大要素』である。
「チィ! スゲェ力だ……まだ扱いきれねぇ……だが!!」
頭上で鎌を回転させ、ドンと石突で床を叩く。床にはヒビが入り、衝撃波が発生する。
「時間稼ぎくらいならやれるぜ!!」
『やっちゃえー!!』
鎌を片手に、勢いよく和也は飛び出した。
<!? 魔力……何とも凄まじい……!>
サタンから驚愕の声が聞こえるが、和也は構わずロボット目掛けて鎌を振るう。
「魔力挿入 木 『TRAGEDY STORM(惨劇の嵐)』!!」
和也の想像を絶する威力の斬撃が、ロボットを襲う……が、大剣で受け止められ、鍔迫り合いへと持ち越される。
「甘ぇ! 魔力挿入 金 『TOUGH GUY(鉄人)』!!」
【キィン!】
<何!?>
自らの体を強化させる魔力挿入により、ロボットは思い切り蹴り飛ばされて距離を離す。
「行くぜ! 燃え尽きやがれ!!」
鎌を眼前に掲げ、前方で回転させる。
「参連魔力挿入 火+火+火 『DRAGON BREATH(竜の息吹)』!!!!」
【カァン!】
回転を止め、石突で床を叩く。すると、鎌の刃から渦巻くように炎が溢れ、和也の体を纏う。その炎は、さながらドラゴンの如し威厳ある姿が映し出されていた。
「はあああああああああ!!!」
そしてその状態のまま片手で鎌を一回転させ、
「逝けオラああああああああああああ!!!!!」
刃を地面に叩きつける。
【ドオオオオオオオオオオオオオオン!!!】
ロボットの足元が赤く輝いたかと思うと、そこから太陽の如き熱量をほこる閃光が迸り、それは高い天井をも貫いて夜空を紅く照らした。
「わっひゃーすごーい……。」
「さ、さすが師匠……見事です。」
「……。」
後ろの三人はポカンとしており、レーザーを見つめていた。
数分後、レーザーが止んだ……レーザーが発生した場所には黒い穴が開き、真っ直ぐその上の天井を貫き、月が見えていた。
ロボットの姿は、どこにもない。
「……ヘヘ……さすがのコーティングも、この技だけは防げなかったみてぇだな。」
汗もかき、疲労の色が見え隠れしながらも、和也は笑みを崩さなかった。そして鎌を引き抜き、肩に担ぐ。
「ま、オレにかかりゃこんなもん楽勝だ。」
<バカが。>
「!!??」
が、突如響き渡るサタンの声で和也は笑みを消す。
「な、どこ」
「師匠、上です!!」
和也が周囲を見回した時、文一が声を上げる。
【ドォン!】
「がっ!」
「和也くん!!」
上からロボットの手が落ちてきて、和也は押さえつけられて葵が叫ぶ。
<見事なものだな。それにしても……『運命の悪魔を切り裂く刃』、か。>
ロボットの頭部を和也に近づけ、嘗め回すように見る。
「は、なせ、オラァ……!!」
必死にもがく和也だが、身動き一つ取れず、唯一自由の足をバタつかせるしかなかった。
「師匠!!」
「この野郎!!」
文一と零時が飛び出し、ロボットへ襲い掛かる。
<ふん!>
【ブォン!】
「「うわ!?」」
が、ロボットの翼が動き、風圧によって二人は吹き飛ばされる。
「うひゃあ!?」
そしてその進路上にいた葵までもが巻き添えをくらい、一緒に床に倒れこんだ。
<クク……運命の悪魔を切り裂く…すなわち、運命を変える、というわけか……。>
ロボットからサタンの愉快気な声が聞こえてきた。
<……さすがは死神のハーフといったところか。一筋縄ではいかないようだ……。>
「るせぇ……! さっさと、放せ……!」
もがくが、さらに力を入れられたのか顔を顰める和也。
<……一つ、言っておこうか。
運命を変えれるのは貴様一人ではないぞ?>
「!?」
サタンの言葉に、和也は目を見開く。
「どういうこった!?」
<私は神なのだぞ? 運命を捻じ曲げることなど容易いこと。例えどのような攻撃であろうが、このコーティングを打ち消す技を放とうが、私には一切通用しないのだ。>
やがてロボットの角が放電し始め、葵に放ったような力が集まり始める。
<対し、貴様は単なる人間……つまり、
ザコだ。>
【ズバン!!!!】
「!? 師匠おおおおおおおおおおおお!!!!!!」
文一の叫びも虚しく、和也の頭に稲妻が放たれた。当然、直撃を食らった和也は頭が吹っ飛び、絶命
するはずだった。
<!? 何!?>
稲妻が命中した瞬間、和也の体がまるで霧のようにボヤけ、消えていった。稲妻はただ床に穴を開けただけ。
「ヘッ、油断したなぁ?」
和也の声が響き、サタンはカメラアイを動かして周囲を探る。
<どこだ!?>
「ここだバカ。」
言われ、後ろを見る。そこには、瓦礫の上に鎌を肩に担いで立つ和也がいた。
「魔力挿入 水 TOG THE OTHER SELF(霧の分身)……ってかぁ♪」
「師匠!」
「ふぅ……ひやひやしたぜ。」
不敵に笑う和也に、起き上がった一同は安堵のため息を吐いた。
サタンが捕らえたのは、あらかじめ和也が造りだしておいた霧で生成された幻影である。本体である和也は、一瞬でロボットの背後に回っていた。
「背後に気を配れないのは、修行が足りない証拠だぜ?」
<おのれぇ!!>
バカにされたサタンは、大剣を背後にいる和也目掛けて振るう。が、和也は跳躍してロボットの頭上を飛び越えて、文一達の下に着地した。
「ふぅ……咄嗟のことだったが、まんまとはまってくれたぜ。」
鎌をクルリと回し、脇に構えなおした和也は一息ついた。
「よぉし、まだまだ行くよー!!」
「待ってください葵さん。」
葵が剣を手に再び突撃しようとしたところを、文一は押し留めた。
「? 何? 文一くん。」
止められて、若干不満そうに頬を膨らませる葵。文一は黙ったままそれを見つめた。
「……忘れちゃダメですよ。僕らの役目はあくまで時間稼ぎ。
ここからは、彼に期待しましょう。」
そう言って振り返ると、そこには蒼い闘氣を纏いながら立つ龍二がいた。
凄まじい氣が体から滲み出て、微かに風が彼の周りを渦巻く。その証拠に、塵が龍二の周囲をクルクルと舞っていた。
「……お前ら下がってろ。かますぞ。」
龍二が目を閉じたまま言い放ち、全員無言で頷いて素早くその場から飛び退き、龍二の後ろへ下がる。全員、龍二がしようとしてることがヤバイということが火を見るより明らかなため、その行動は素早かった。
(何もかも受け付けないコーティング、そして運命をも捻じ曲げるその力に……この技を防ぐことができるか?)
<? ……荒木龍二から力の波動を感じる…………フッ。>
嘲笑い、大剣を高く掲げたサタンは背中の翼を目一杯はためかせる。
<何をしようとしてるのかは知らんが、この私に勝てる道理などない!!!>
【ドォ!!】
翼を動かし、その場から一気に駆け出して龍二に迫る。対し、龍二は目を閉じたまま動こうとしない。
<死ねやああああああああああああ!!!!!>
「……皆が稼いでくれた時間……無駄にはしねえ。」
高速回転している大剣が真っ直ぐ龍二の頭目掛けて振り落とされ、
【ズゥン!】
紙一重で見切り、腰を落として目をカッと開く。
「禁断奥義……『龍王乃理』!!!!」
【ボォォン!!!】
龍二の右拳がロボットの胴体に炸裂し、あまりの強さに衝撃波を発生させた。衝撃波は周囲の瓦礫をさらに砕き、床に亀裂を入れる。
<!!! ……………………?>
だが、ロボットには変化はなく、ただ若干後ろへよろめいただけ。外傷もなく、ダメージを食らった様子もない。
「……へ?」
「は?」
「……?」
「何とも……ねぇ?」
後ろの四人も予想外のことに目が点になってしまい、硬直する。それもそうだ、期待してた分、何の変化もないのだから。
<……何の真似だ、これは?>
「…………。」
何も起こらなかったため嘲りが半分、おちょくっていると思って怒りが半分入り混じった声でサタンが聞くが、龍二は拳を突き出したまま動かず、喋りもしない。
<……不発か……そうか……。>
再び含み笑いをし、ロボットの体勢を立て直す。
<…………せっかく時間を稼いだのに、その程度とはな……
死ね!!!!>
「龍二!!!!」
零時が叫ぶ中、ロボットの大剣が一気に振り下ろされる。
【ザン!!!】
切り落とされた腕が宙を舞い、赤い血が周囲に飛び散る。
やがて回転しながら腕は、ゆっくりと降下を始め……
鈍い音をたてて、床に落ちた。
<な………ぁぁ……?>
ロボットの腕が。
「…………。」
龍二は龍刃のみを引き抜き、神速の居合い切りを放って膝を付いた状態のまま動こうとしなかった。
<な…………何が………一体何が……。>
切り落とされ、血のように赤いオイルが流れ出ている腕の付け根と、大剣を持ったまま床に落ちている腕を交互に見たまま何が起こったのかわからないという風に呟くサタン。因みに大剣はもはや回転はしていない。
「……教えてやろうか。」
サタンを睨みつつ、ゆっくりと立ち上がって龍刃を一振りし、オイルを払う龍二。
「『龍王乃理』……和也の鎌の力とお前の力とはちとばかし違う、まさに禁断の技。
これはな、この世界に俺のルールを作り出す、いわば運命を自分勝手に決めてしまうわけだ。」
<……なんだと……?>
「つまりだな、お前のそのコーティングと、運命を変えるという力、全てを“無し”にしたんだよ。俺が。
これには例外はない。森羅万象、万物を司る力さえも捻じ曲げてしまう、完全反則技。ゆえに、古くから禁断とされてきた………まぁそんなわけなんだけさぁ、」
ここで一旦空いた左手で後頭部をポリポリとかき、シリアス顔から一転して照れくさそうに笑う。
「この技、実を言うと一回も使ったことない上に、溜めるのに時間がかかるから実用性が薄いんだよねぇ。」
『……時間がかかるのはともかく、忘れるとは何事か。それも成功しなかったらやばかったぞ。』
「わりわり。でも成功したからいいじゃん。」
エルに窘められ、龍二は苦笑した。
「ま、とにかく俺が言いたいことは一つだけ。」
【シャィン】
左手でエルを抜き、構えを取らずに切っ先を下げる。
「今のお前は、」
【ブォン!!】
「ただの……鉄だ。」
再び表情を引き締め、龍刃とエルを瞬時に合体させて槍を持つ。
<ば……バカな……ありえん……こんな、こんなこと、絶対に……>
「あのな、絶対とかどうだっていんだよ。」
困惑し、うろたえるサタンに龍二は呆れたように言い、矛先をロボットへ向ける。
「要は、やるか、やらないか……そんだけの話だ。」
「……そういうことっスね。」
「ああ。」
「やっと逆転のチャンスですね。」
「倍返ししちゃうよ!」
龍二の右横に和也が、左横に零時が、和也の横に文一が、零時の横に葵が立ち、全員不敵に笑った。
「さぁ……かますか!!!!」
「「「「おお!!!」」」」
龍二が叫び、四人もそれに答える。
「行け! 和也、零時!!」
「はい!!」
「任せろ!!」
和也と零時が飛び出し、二人とも真っ直ぐロボットへ向かう。
<こ、このザコどもがああああああああ!!!>
「そりゃオメェのことだろうが!!」
残った左腕からガトリングを撃ち迎撃するが、抜群のフットワークで動きつつ接近してくる二人にはそれが当たらない。
「食らえ!!」
「おらぁ!!」
【ドォン!!】
和也の拳と零時の拳が、ロボットのわき腹に叩き込まれる。
「『翔龍雷神掌』!!!」
「『崩拳』!!!」
さらに隙なくそこからアッパーへと繋げ、ロボットを上空へと吹き飛ばした和也が放った稲妻がロボットを縛り付ける。
<あ、があああああああ!!!??>
さらにコーティングも打ち消されたために、中にいるサタンにまで電流が流れ込んで直接ダメージを受けていた。
「次、文一ついてこい!!」
「はい!!」
龍二が飛び上がり、文一は弾倉に手を当てて魔力を装填する。
「『龍牙穿刃』!!!」
上空にいるロボット目掛けて槍で一閃し、一気に切り抜ける。白い閃光が走り、小爆発を起こした。
「『連追弾』!!」
文一が地上から小威力の魔弾を龍二が切りつけた部分に狙いを定めて二発撃ち込み、さらに上へ吹き飛ばす。
「共鳴解除!! エル、最大出力!!」
『ああ!!』
さらに床に降り立った龍二は一瞬で槍から二刀に戻し、エルを思い切り投げつける。途中、エルは何百、いや、何億ボルトもの電流を放ち、そのままロボットの頭部に突き刺さった。
<うがあああああああああああああ!!!!>
さらに電流が迸り、ところどころから煙が立ち昇り始める。
「さぁて、そんじゃあ……。」
龍二は龍刃を持った腕を引き、峰を左手で添える構えを取った。
「軽くフルボッコにされてもらおうか。」
龍二の体に青い闘氣が纏われた。
「お前の大罪、地獄の焔に焼かれな。」
和也も赤い闘氣を纏い、鎌を斜め上段に構える。
「全ては……皆のために……!」
黄色い闘氣を纏うのは、零時。
「一陣展開、斬撃……強化。」
緑色の闘氣は、文一。
「マーくん、皆……力を貸して。」
最後、白い闘氣を纏ったのは葵。
方位で表すなら、龍二が北、和也が西、文一が南、零時が東という位置取りで上空で電流を放っているロボットを囲むようにし、若干離れた位置で葵が構えを取るという配置となった。彼らの闘氣は、やがて体の周囲を渦巻くように回転し始める。
「オメェら!! 準備はいいな!?」
「はい!!」
「おう!!」
「もちろんです!!」
「いいよー!!」
龍二の掛け声に全員が返事をし、頷く。
「どりゃあああああああああああああ!!!」
龍二が飛び上がるのを合図に、和也、文一、零時も飛び上がり、それぞれお武器を振るう。
そして、龍二の刀が、和也の鎌が、文一の茜が、零時の拳が閃き、青、赤、緑、黄色と色とりどりの軌道が無数に閃く。それまるで、ロボットが虹のドームに閉じ込められたかのように見える。
音速の速さで繰り広げられるその乱舞によって、ロボットはみるみる切り刻まれ、へこんでいく。もはやカメラアイは粉々となり、役に立たない。
そして斬撃と拳の嵐が止み、彼らはそれぞれ北と南、東と西が入れ替わった位置に降り立つ。
そして、足に力を入れて再び飛び上がり、
「『龍牙一閃』!!!」
「雨宮流鎌術焔の型! 『烙煌煬』!!!」
「『星屑の閃光』!!!」
「『斬波日暮』!!!」
【ドォォン!!!】
四人の技が炸裂し、ロボットは爆炎に包まれた。
「よっと。」
再び元の位置に立った龍二は、爆発と同時にロボットから抜けて回転しながら飛んできたエルを左手でキャッチした。
「『エンドレス・ワルツ』!!!」
さらに、今の今まで力を溜めていた葵が上げていた両腕を振り下ろすと、ロボットの四方八方に空間の歪を作り、そこから鋭い槍を無数に出現させた。
【ドドドドドドドドドドドドドド!!!】
槍は全てロボットに突き刺さり、まるでハリネズミのようになる。
「苦しんじゃえ!!」
そして続けざまに右手を挙げると、槍がまるで溶けるかのように消えて闇となってロボットを球体状の小さな異空間に封じ込んで宙に浮かせたままにする。
「仕上げだ…。」
龍二達は一斉に葵の近くまで飛び、並ぶ。
「エル、龍刃、二重共鳴・太刀の型……。」
「肆連魔力挿入 金+水+火+木……。」
「かますぜ……セーフティ解除。」
「四刃展開、斬撃×発射×発射×発射……。」
「全ての魔力を……使わせてもらう。」
龍二は太刀を横向きにしたまま眼前に掲げて蒼い氣を前方に集め、
和也は鎌を下げて左手を突き出し、
零時は右腕の義手から光が漏れ出し、
文一は弾倉に手を当てて茜色の魔力を注ぎ込み、
葵は両腕を突き出してその身の魔力を集中させる。
彼らの周囲を、神々しく、圧倒的な力が竜巻の如く蠢いていた。
<あ、ああ…………。>
かろうじて生きているモニター越しから、サタンは龍二達を取り囲む膨大な力を感じ、おののく。
コクピットの壁の周囲には穴が開き、へこみ、電流がショートしている。コンピューターもすでに死んでいた。
もがこうにも、異空間に封じ込められているため操縦桿が動かない。アーマーのハッチを開こうにも、熱で溶接されていていくら開錠レバーを下げても意味は無かった。
逃げ道も無く、目の前にいる下等生物達がしようとしていることを予測し、冷や汗を滝の如く流しだしたサタンは今まで感じたことのない感情を抱き始めた。
それは、人間どもを支配しようと周囲に撒き散らした、自分の象徴とも言える物。
それは、まごうことなき“恐怖”“絶望”……最強の悪魔は、今まで自分が周囲に与えてきた物が跳ね返ってきたと言わんばかりに、錯乱していた。
<ああああ………。>
そして、龍二の前に氣で生成された神々しい蒼い輝きを放つ龍の顎が開き、和也の体が地獄の業火の如く赤く輝き、零時の右腕から黄金の光が漏れ始め、文一の持つ茜が茜色の光を帯び、葵の前に光の扉が現れる。
<ああああああああああ…………!>
「「「「「逝け。」」」」」
「『天地龍轟咆』!!!!!」
「『DESTRUCTION OVER(大いなる破壊)』!!!!!」
「『断罪する剣』!!!!!」
「『斬波陽光』!!!!!」
「『エターナルブレイカー』!!!!!」
龍の口から炎の如く巨大な閃光が、
左手から大木並の極太レーザーが、
右腕の義手から無数の金色の剣が、
刃から真っ直ぐ茜色の斬撃波が、
門が開いて扉から大いなる光が、
真っ直ぐ、サタンへ。
<ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!>
【ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!!!】
五つの光は異空間ごとサタンを飲み込み、大聖堂を破壊し、山を次々と吹き飛ばし……はるか彼方へと消えていった。
「…………これぞクロスオーバー、」
後に残ったのは、床が無くなり、ステンドグラスごと壁までも消し飛ばされた元・大聖堂と、未だ異空間に閉じ込められて内部で炎を噴き上げるロボット。
そして、真ん中の龍二が太刀を肩に担ぎ、背を向けた。
「「「「秘奥義。」」」」
四人も続いて背を向け、武器を下ろす。
『断罪閃光・極!!!!!!!』
【ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!】
五人の背後で、異空間が爆発し、爆炎が周囲を覆った。
この小説で一番書きたかったもの、それは最後に全員が一斉射撃をしてサタンをぶっ飛ばすという物です。書けてよかった♪
次回、いよいよ最終章、<友の章>。
最後まで読んでくれたら嬉しいです。




