決の章
今日は本編も更新できたし、調子がいいです。
とゆーわけで、<決の章>です。“決”の意味は決戦です。
〜ライター視点〜
(…………? え………?)
が、いつまで経っても弾丸による痛みは感じず、恐る恐る目を開ける。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「「恭田さん!?」」
そこには、龍乃達の前で仁王立ちし、弾丸を一身に受け止めている恭田がいた。
「うぐおおおおおおおおおおおおおおお!!! これ想像以上にイテェえええええ!!!!」
「き、恭田……なにを……。」
弾丸による衝撃で体を震わせながら苦しそうに顔をしかめる恭田に、呆然と龍乃は問うた。
「グゥ……決まってんだろ……俺だって……たまには、かっこいいとこ、見せねぇと……ダメだろが……!!」
「恭田さん、もうやめてください! いくら不死身の体の恭田さんでも…!」
「血が……!」
着弾した箇所から血が飛び散り、少しずつ恭田の足元に血溜まりが出来ていく。
「第一……ここは、不死身である俺が適役だろうが……。」
「で、でもそれではお前の体が!!」
「恭田さん、もう十分ですから! お願いですからもう」
「いいから!! 俺の体がもってる今のうちに連中をやれってんだよ!! お前の大事なあいつのためにここで死んでる場合じゃねぇだろうがあああああ!!!」
若干振り返りつつ怒鳴る恭田。その目からは、全く光が消えていない。
「恭田、さん。」
「……。」
一聖と駿が、そんな恭田を見て押し黙った。
「…………………。」
そして、駿は立ち上がり、足のアキレス腱を伸ばす。
「……恭田さん……少しだけ待っててください…………スレイ!」
『ああ。』
【シュッ!】
次の瞬間、駿の体が消えた。
否、目にも留まらぬ速さで動いた。
【ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!】
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
そして、一斉射撃をしていたリザードマン達が次々と宙に打ち上げられる。地面には何百本もの火の線が通り、複雑に入り組んでいく。さらに宙に浮かんだリザードマンは、落下しようにも再び打ち上げられ、また落下しようにもまた打ち上げられの繰り返しで成す術もなくボコボコにされていく。
「どぉりゃああああああああああああああああ!!!!」
【ドォォォン!!!】
最後に、駿がリザードマン達の中心に現れて最大の力を込めた蹴り上げを放つ。蹴り上げと同時に発生した炎は衝撃波によって竜巻となり、敵を全て巻き上げていく。
「俺だって!! 恭田さんのために!!」
「ハッハッハ、私より若い者に任せるわけにはいかないな!」
一聖はリザードマンから奪い取ったロケットランチャーを上空で舞い落ちようとしているリザードマン達に狙いを定め、健太郎も右腕をまるで居合いの如く左手で覆った。
「死ね!!」
「『瞬刃』!!」
一聖がトリガーを引くとミサイルが射出され、健太郎が一気に振りぬくと真空刃が発生し、真っ直ぐ上空へと飛んでいく。
【ドオオオオオオオオオ!!!】
上空でミサイルと真空刃が爆発し、爆炎が飛び散った。上空で炎に焼かれたリザードマン達は、真っ黒になって灰となって消える。
「へっ! ぶっ飛びやがれクソトカゲどもが!!」
駿が鼻を擦って不敵に笑った。
「! 駿、まだだ!!」
『グガアアアアアアアア!!!』
「!?」
が、一聖が叫ぶと同時にに駿の背後をリザードマンのリーダー格が青龍刀を振りかざして襲い掛かる。
「させるかあああ!!」
【ドォ!】
残された体力をフルに使った龍乃の足蹴りを腹に食らい、その攻撃は阻止される。リザードマンは苦しげに腹を抑えて怯んだ。
「せりゃああああああ!!」
龍乃は呻くリザードマンの頭を断ち割らんと、一気に懺悔を振り下ろした。
【ガッ!!】
「!?」
しかし、その一撃は頭に当たりはしたものの、傷一つ付かなかった。
「まさか、こいつもコーティングを……!?」
攻撃される前に、一旦距離を置く龍乃。リザードマンは、血走った目を龍乃に向けた。
『グゥルルルル……。』
「……怒らせたか……。」
臆することもせず、懺悔を脇に構えて真っ直ぐ見つめる。
「…………。」
『いいか龍乃? この技はいざって時に使えよ? お前は大丈夫だろうが、常人なら一回使っただけで気絶するからな。』
龍二の声が頭を過ぎり、懺悔に目を落とす。
(……まともに戦ってもラチがあかない…………なら!)
再び目をリザードマンへ向け、懺悔を振り上げて八相の構えを取った。
(この一刀に、私の全てを賭けよう!!)
躊躇わず、一気に走り出す龍乃。
「はああああああああああああ!!!」
振り上げた懺悔が、己が犯した過ちを後悔しろとばかりに輝き、迫る。対し、リザードマンは青龍刀を構えて迎え撃つ。
「どりゃあああああああ!!!」
【ガァン!!】
だが、渾身の力による一閃によって、青龍刀はまるで石ころのように砕け散る。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
そこから、腕の筋肉をフルに使って縦横に刀を振るい、滅多斬りを放つ。怒涛の連続切りに、リザードマンは身動きが取れない。
「せい!!!」
【ドォ!!】
最後、体を一回転させての逆袈裟を繰り出し、一歩後ろへ退かせた。
そして懺悔を左へと振りかぶり、腰を思い切り捻る。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ…………!!」
龍乃の氣が懺悔の刃へと集まっていき、虹色に輝く。
「これぞ、荒木一族直伝奥義……、」
突如、紅く輝く球体が現れ、リザードマンを閉じ込めた。
「『華舞龍斬・蓮華』!!!!」
懺悔が虹色の軌道を描きつつ、球体ごとリザードマンを一気に薙ぎ払った。球体は一瞬、蓮の花の模様を描きつつ輝くと、次の瞬間にはまるでガラスのように割れて閃光が周囲を覆う。
光が収まると、龍乃は薙ぎ払ったままの姿勢から動かず、目だけは真っ直ぐ仰け反ったままのリザードマンを睨みつける。
『ゴ……ガァ……。』
【ボォン!!!】
いきなりリザードマンの体が爆発し、粒子と化して風に吹かれて流されていった。
相手を氣の檻に閉じ込め、自らの想いを刃に込めて一刀両断する奥義。龍乃にも扱いやすいように龍二自らが考案した絶技である。
「…………くぅ!」
が、同時に気力も大量に消費するため、龍乃は残された体力も使い果たして膝を着く。
「……やはり、キツイ、か……。」
懺悔を地面に刺し、杖代わりにして震える足でどうにか立ち上がった。
気力もほとんど尽きかけていながらも、自力で立ち上がれるというのは常人では不可能に近い。普段鍛錬を怠らない龍乃だからこそ成せることである。
「……カフ。」
「!? 恭田さん!!」
だが、銃弾を体で全て受け止めていた恭田は前のめりに倒れ、咄嗟に駿が支えた。
「恭田さん、大丈夫ですか!?」
「………フッ………こんなところで…不死身という力が役立つとはな……。」
恭田の顔には達成感に満ち溢れた笑みが浮かぶ。
「でも……さすだに、今回のは……やりすぎた、みたいだ…グホッ!」
「恭田さん、もう喋らなくていいですから!」
恭田を仰向けに寝かせ、必死に叫ぶ駿。だが、恭田からは止め処なく血が流れ出てきていた。
「はぁ、はぁ……俺は、もうダメだ……。」
「!? な、何言ってるんですか恭田さん!!」
「そうですよ! 諦めないでください!!」
息も絶え絶えに言う恭田に、泣きそうな顔になる駿と一聖。そんな二人を見て、恭田は微笑む。
「駿……一聖……影薄同盟は、お前達が引っ張っていってくれ…。」
「そんなの……ダメですよ! 恭田さんがいてこその影薄同盟なんですよ!?」
「恭田さんのいない影薄同盟なんて、考えられませんよ!!」
「…………すまない、二人とも……ホント、お前らはいい奴らだったよ…。」
恭田は最後に大きく、息を吸った。
「……我ら影薄同盟は……不滅…………グハァ。」
恭田の手が、地面に力なく落ちた。
「「恭田さああああああああああああん!!!!!」」
「下手な演技やめろ。」
【ドスゥ!】
「グボォ!?」
「「!?」」
目を閉じて死んだフリをしている恭田の鳩尾に、龍乃が懺悔の柄頭で思い切り殴りつけた。
「ぐぶぉぉぉぉ……何すんじゃぁぁぁぁ……!」
「黙れ影薄。お前不死身なんだからこの程度で死ぬわけないだろう。」
「ひどくない!? 助けたのにその言い方ひどくない!?」
「ハッハッハ、それが影薄の扱われ方というものだろう!」
「うっせぇよオッサン!!」
「見事な演技でした恭田さん!!」
「さすが兄貴!!」
「え、そ、そうか?」
「死んどけお前ら。」
「「「あべら!!!」」」
褒め称える駿と一聖と照れる恭田を龍乃はかろうじて残っている力を使って懺悔で文字通り一刀両断。三人は倒れた。影薄同盟はこの程度は死にはしない。だって影薄だから。
「まったく……。」
懺悔を鞘におさめ、呆れる龍乃。
そして、倒れている影薄三人から目を離し、龍二達が突入していった塔へと目を向けた。
(……龍二……。)
本当は、自分も一緒に中に入って戦いたい……が、今の残された体力ではたかが知れている。
だから、今はこうして彼らの無事を祈るしかない。
「……どうか、無事で。」
龍乃は無意識のうちに右手の拳を胸に当てて一人祈った。
〜大聖堂〜
<お前達はここで死ぬのだぁ!!>
サタンの声が響き渡り、刃がギザギザの大剣が持ち上げられる。そして巨体が浮き、一気に振り下ろしてきた。
「…………。」
龍二はそれを慌てることもなくその場から動かないでいる。
【ドォン!!】
「……だぁら、死にゃしねぇっつの。」
剣は床にめり込み、大きな亀裂を作り、衝撃波が入り口を破壊して瓦礫で埋める。が、龍二は体をわずかに横にズラして刃を避け、ちょうど剣が真横に来る位置に立った。
いわゆる、見切りである。
「かますぞ。一刀……」
龍刃を引き、突きの構えを取る。
「『炎龍熱波』。」
真っ直ぐサタンがいる胸部アーマー目掛けて思い切り突きをし、凄まじい熱が龍刃と同じ形をした陽炎を作り出して空間を裂きつつ飛んでいく。
が、熱はアーマーの前で四散し、周囲のイスやカーペットを燃やし、一瞬で灰にして炎が消えた。
「ん、やっぱコーティングしてんのか。」
攻撃が通じないと悟ると、後ろへ飛び退く。そして腰を深く落としてから龍刃を肩に担ぎ、エルを下段に構えた。
「チッ、ラスボスみたいな奴だからしてるとは思ってたけど……。」
「楽には行きそうにないよねぇ。」
和也が鎌を構え、葵が剣を正眼に持っていって構えてうんざりしたように愚痴った。
「……それでも、今はやるっきゃねぇだろ。
『二重共鳴・太刀の型』!!」
龍二はエルと龍刃を合体させ、龍王乃太刀を手にして脇に構える。
「やるぞ!!」
『おお!!』
再び駆け出した龍二に続き、和也、葵、文一、零時が、それぞれバラバラに駆け出してサタンが乗るロボットに迫る。
<無駄だぁ!!>
大剣を横へと振るい、五人の胴を狙う。
「当たらん!!」
が、龍二は屈み、和也は飛び上がり、文一と葵と零時は転がって避ける。大剣は大聖堂の長イスを破壊し、木片を辺りが辺りに飛び散った。
「はぁん! 攻撃力だけしかねぇデカブツが調子に乗んな!!」
高く飛び上がりながら和也は嘲笑い、鎌を振る。
「雨宮流鎌術! 『襲牙颯』!!!」
着地と同時に大きく、音速を超える速さで薙ぎ払い、カマイタチが周囲の長イスをさらに破壊し、和也の前方の床を大きく抉る。和也の鎌術基礎の上級技だ。
だが、ロボットの装甲には傷一つ付かず、ロボットの背後の床だけが無傷だった。
<無駄だ小僧!!!>
ロボットの左の拳が振り上げられ、風を切るかのように和也に迫る。
【ドゴォン!!】
「だからおせぇっつの!!」
拳が当たる寸前、バック転をして回避する和也。拳は床にめり込み、穴を開けた。
<こしゃくな!!>
「どこ見てんだ。」
ロボットの首が和也へ向いてる隙に、懐へ潜り込んだ龍二は太刀を振るう。
「『昇龍閃』。」
【ズォッ!!】
地面を抉る勢いで神速で振り上げられた刃が、ロボットのアーマーにぶち当たって巨体を浮かせた。
「「はぁぁぁああああああ!!」」
宙に高く浮いたロボットと同じ高さにジャンプした葵と零時が、剣と拳を振るう。
「飛んでけぇ!!」
「逝きやがれ!!」
衝撃波が周囲に飛ぶほど強烈な二人同時の攻撃がロボットに炸裂し、巨体はステンドグラスの真下にある天使像を破壊して埃を巻き上げながらめり込む。
「連追弾!!」
その煙の中へ文一は茜の照準を定め、二つの魔弾を発射した。
【ドドォン!!】
魔弾は爆発し、煙がさらに大きくなって周囲に石を散らばらせた。
「どうだ?」
龍二以外の全員が飛び退き、龍二の傍に立って様子を見る。煙は晴れず、未だに前方を覆っていた。
まず和也が囮となり、その隙に龍二が打ち上げ、追撃として零時と葵が地面に叩きつけて、とどめに文一の魔弾を叩き込む……五人の見事なチームプレーに、さすがのロボットも傷ついた
<無駄だ……無駄だ!!>
わけもなく。
「……まぁ、大体わかってたがな。」
煙が晴れ、瓦礫を押しのけて起き上がってきたロボットを見て龍二がため息を吐いて呟いた。
「野郎……全く無傷かよ。」
<無駄だと何度も言ったはずだぞ、小僧?>
和也が忌々しげに言うのを、サタンは嘲りを込めて答える。
<このコーティングは、今の人間どもには実現できるものでもなく、到底理解できるものでもない。それを貴様は、一番知ってるはずだろう?>
「? どういう意味だ。」
サタンに話を振られ、顔を顰める和也。
<……一時、貴様はこの力を実感したことがあるのではないか?>
「……………………
!? まさか!?」
言われ、考え込んだ和也は思い出したように顔を上げ、その顔は驚愕に彩られた。
<そう、この力は……>
「零亜!?」
サタンがその名を言う前に、和也が先に叫んだ。
「あ? 零亜っつったらオメェんとこにいる奴じゃん。」
「ええ……一時、オレとあいつは敵同士だったんです。」
疑問符を浮かべる龍二に、和也はまだ驚きが抜け切っていない顔のまま説明した。
「その時、あいつは魔力、気力、物理を全て無効化にするマントを着ていて、オレを追い詰めていた…………でも、何でそれをテメェが!?」
零亜、もとい、旧名アクレイアが着ていたマントは、いわば王族の秘宝。おいそれと手に入れられる物ではないはずだ。
だが、それをサタンは含み笑いをしながら答える。
<簡単なこと……私は全知全能の神に等しい存在。いや、神と呼んでもよいな…その私がお前達の戦いを地の底から眺めていた。
そして! その力に注目した私は、プロフェッサー・玄の頭脳を活かし、体の周囲にマントの力を応用したシールドを張り巡らせ、完全無欠の鎧を作り出すのに成功したのだ!>
【ガシュン!】
ロボットの悪魔の如く鋭い指が付けられた左腕が突き出され、篭手部分のアーマーが上下に開く。中には、半円を描く形で小さな穴が並んでおり、やがてゆっくりとアーマーごと回転しだした。
「お前ら散れ!!」
龍二が叫び、全員がその場から飛び退く直前にすでにアーマーはゆっくりから高速へと回転を速めた。
【ドドドドドドドドドドドドド!!!!】
回転しているアーマーの銃口から銃弾が飛び出し、マシンガンを通り越してガトリング砲となって龍二達を狙う。が、射出される前に全員左右にそれぞれ飛び退き、床を抉るのみですんだ。
<だが、このコーティングには一つ欠点があった。>
ガトリングを連射しながら、サタンは説明を続ける。
<それは、例えどのような生身の肉体であろうと、そのコーティングの特殊な魔力とその者の気力が反発してコーティングの防御力が減少してしまう。プロフェッサー・玄はその問題点を改善しようと日夜研究、実験に明け暮れていたが、結局は何も進展せずに苛立っていた。>
「そして最後に自分の体で実験して、俺らを相手に何とか糸口を見つけようとした結果負けちまったってわけだ。」
「あ、そっか。だから魔力を感じたんだね。」
ガトリングの銃弾をエルと龍刃で巧みに弾きながら、龍二が補足した。その横で葵は長イスを盾にして銃弾を防ぎながら掌を叩く。
<だが、貴様らが屋敷で戦ったロボット達のように、我らが開発した特殊合金を使用することによって防御力は何倍にも跳ね上がり、いかなる攻撃をも受け付けない完全な物となる。
それは……>
【ガシュン!】
今度は両肩のショルダーアーマーが上に開き、そこに縦二列、横六列の小さな赤い円、つまるところミサイルの先端が露わになる。
<今私が搭乗している、この兵器とて例外ではない!!!>
【ドシュゥゥゥウウウウ!!!】
両肩から無数の小型ミサイルが発射され、黒煙を上げながら龍二達に迫る。
「はぁぁぁあああ!!!」
ミサイルが到達する前に、龍二と和也と葵はミサイルを切り落としていき、文一は茜の魔弾で打ち落とし、零時は殴り、蹴りで軌道を逸らして爆発させていった。
「この野郎おおおおおお!!」
「! 和也、よせ!!」
全弾落とし、和也は鎌を振りつつ飛び出す。龍二は和也を止めようとするが、目の前に迫ったミサイルを打ち落とすことで足を止められた。
「食らえ!! 雨宮流鎌じゅ」
<その上……>
【ブゥン】
「!!???」
和也が技を叫ぶ前に、ロボットが掻き消える。
【ゴスゥ!】
「く、ぁあ!?」
「和也くん!!」
「師匠!!」
突然背後に現れたロボットの豪腕を背中にモロに受け、吹き飛んでロボットがめり込んでいた場所に爆音をたてて突っ込む和也。葵と文一が駆け寄ろうと飛び出した。
<この兵器は……>
そんな二人の前に、一足で飛び出したロボットは右足を振り上げる。
「な!? はや」
【ゴッ!!】
「「!!!」」
文一が言い終わらないうちに、二人の腹に回し蹴りが叩き込まれて入り口付近まで吹き飛ばされた。
<貴様らが思ってるほど……>
左手を地面につき、片手だけで巨体を側転させて零時へと迫るロボット。
「!? な、何!?」
いきなりの行動に戸惑い、動くのが遅れた零時にロボットは情け容赦なく左腕を下から振り上げる。
【ドォッ!!】
「ぐはぁ!!」
裏拳を腹に受けた零時は、上へと吹き飛んで左の列の長イスへと落下して長イスを破壊した。
<遅くなど、ないぞ!!!!>
最後、左足に力を入れて、それをバネにして弾丸の如く飛び出して龍二目掛けて右足を突き出す。
「! チィ!」
【ドォン!!!】
太刀の側面でガードするが、あまりの衝撃で壁まで吹き飛ばされた龍二は顔を顰める。周囲には吹き飛ばされた時に破壊された長イスの木片と、龍二がめり込んだことにより穴があいた壁の瓦礫が散らばった。
<この兵器……KUROONIは、貴様らが戦ったセキリュティロボット、RXシリーズ全てを合体させたようなもの。
すなわち、DARUMAの装甲、TENNGUのステルス機能、KAMAITATIの機動力、そしてSAMURAIの破壊力…………それら全てを合わせた、究極の殺人兵器。
そして、これこそこの兵器の真髄……!!>
大剣を高く掲げ、横向きにしたまま仁王立ちする。
<我が力を増幅させ、人間の姿である私の力を最大限に活用することができる、いわば増幅装置そのものの機能をかね添えた、我らの最高傑作!!!!>
背中の翼を広げ、周囲に羽を撒き散らす。同時に、掲げた大剣が禍々しい紫色の雷を纏い始め、電流が周囲に飛び交う。
そして、そのまま大剣をクルリと一回転させ、切っ先を床へ向ける。
<我が鉄壁の守りと、この絶大な力を持った神である私の前に!!!>
ジャンプし、さらに大剣を大きく振り上げた。
<貴様らが勝てる見込みなどないわああああああああああああああ!!!!>
【オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!】
着地の瞬間、大剣を床に深く突き刺すと、ロボットを中心に漆黒の闇が紫色の電流を迸らせながら広がっていく。
「!! まずい! 共鳴解除!! 『二重共鳴・槍の型』!!」
悪寒が走り、龍二は太刀から一瞬で槍へと持ち替え、頭上でクルリと回す。
「そらああああああああああああ!!!!」
【ビュ!!】
残像を残し、一瞬で和也、葵、文一、零時を回収すると、宙高くジャンプする。
その眼下では、闇が龍二達がいた場所を覆い、長イスも、瓦礫も、全てを飲み込んで灰どころか完全消滅していた。
やがてロボットが剣を引き抜くと、闇も消え、後に残ったのは大理石でできた石畳の床だけ。他にあった設置物は、全て消えていた。
「っと。」
四人を抱えたまま龍二は着地し、ロボットを睨みつけた。
「なるほど……こりゃあ思った以上にかぁなり強敵だな。」
四人を床に降ろし、龍二は立ち上がってから槍を眼前に持っていった。
「…………癒やせ。『龍泉水』。」
槍の矛先から水色の光が漏れ、小さな光の玉が四人にそれぞれ飛び込み、吸い込まれていった。龍二の唯一の回復技で、傷を癒やす。
「……く!」
「ほぇ〜……。」
傷が無くなった四人は起き上がり、得物を構えた。
「チッキショウ……あれですばしっこいなんて反則だろ。」
口元の血を拭って零時が悪態をつく。
ロボットは大剣の先を龍二達に向け、威圧する。
<さぁ、許しを乞え! 我の前に跪け!! 貴様らは所詮人間、神に逆らうこと自体が愚かなのだ!!>
『…………。』
見下した感満々のサタンの声に、龍二達のこめかみに血管が浮かんだ。
「……長い説明、どうもあんがとさん。」
あくまで表面上はにこやかに、だが内心はかぁなりきちゃってる龍二は、槍を片手で器用に回転させた。
「……だがよ……さっきも言ったはずだ。」
ドン! と槍の石突で床を揺らし、矛先を向ける。
「神名乗る奴ほど……愚かな奴ぁいねぇってな。」
言い終わると、矛先に徐々に光が収束していき、小さな光の玉を作り出す。
「……迸れ。
『金色乃嵐!!!』」
叫び、玉から無数の金色の雷が鞭の如く伸び、ロボットを狙う。
<言ったはずだ……無駄だと!!>
だが、雷は全てロボットの胸に当たっただけで、ダメージはおろか感電もしていない。
「『グラビティサンダー』。」
それでも龍二は立て続けに魔法を唱え、ロボットの足元と頭上に魔方陣を展開し、電流の檻に閉じ込める。
「逝け。」
袈裟切りするかのように槍を振り、矛先を床へ付ける。同時に、刃が金色に輝き始めた。
「『サンダーブレード』!!」
切り返すかのように逆袈裟に振り上げ、雷が迸り数倍長くなった槍でロボットを切る。
<ぐぉ!!>
グラビティサンダーを食らってまともにガードできなかったロボットは大きくよろめいた。
「見たかコラ。龍王槍はただ風を味方にするだけじゃない。エルの魔力と俺の気力を増幅させ、威力を上げることができるんだよ。」
頭上で三回転させ眼前に掲げる。
「んでもって…………。」
【ヒュヒュヒュヒュ…】
今度は前方で槍を回転させ、龍二は氣を溜めた。
「『龍ノ息吹』。」
【カァン!】
そして腰を深く落とし、石突を床に叩きつける。すると龍二を中心に、青白い光が辺りを覆う。
「!? な、何だコレ? 力がみなぎってくる……。」
当然、傍にいた和也達の足元にも光は届き、全員をその淡い光で包み込んだ。
「こうやって仲間達の筋力、気力、魔力を活性化させてサポートすることだってできるってわけよ。」
その体勢のまま目だけを上げ、龍二はニヤリと不敵に笑ってみせた。
「お前ら。その力はもって三分しか効果ないからな。その間に徹底的にボコれ。」
「サンキュー龍二さん! 行くぞ鎌!!」
『了解!!』
「茜!!」
『合点!!』
和也と文一が左右を挟み込むかのように走り出し、ロボットに迫る。
「さっきのお返しだ!! 『クロスエンド』!!」
雨嵐と鎌でそれぞれ袈裟切りをしてXの字を作り、その中心点目掛けて『爆撃殺』を放って吹き飛ばす。
「二刃展開! 『斬撃破斬』!!
吹き飛んだところを、文一が大上段からの切り下げがロボットに炸裂して再び和也の方へ吹き飛ばした。
「もいっちょ行くぜ!! 雨宮流剣術 瞬! 『重雷帆風牙!!』」
瞬間、和也の姿が消える。そしてロボットの背後に刀を振り切った状態で現れ、二回回転させて鞘に仕舞う。
【ドォン!!】
同時に、ロボットに巨大な雷が落ちてロボットの体が帯電し、一時的に動きが止まる。
「オラオラァ!! 休ませねぇぞ!!」
いつの間に上空に投げていたのか、落ちてきた鎌を左手で掴んでクルリと回した。
「『波閃哮』!!」
【ボン!!】
鎌の石突をロボットの背中に叩きつけ、一瞬巨大な獅子の姿が浮かんで吹き飛ばす。
「今度は俺か……。」
ロボットが吹き飛んだ先には、零時が腰を深く落として待ち構えていた。
「飛べ!! 『崩拳・地』!!」
その体勢のまま高威力のパンチを繰り出し、ロボットに衝撃を与える。
「まだまだぁ!! オラァァァァァァァァァ!!!」
【ドドドドドドドドドドドド!!】
それだけに留まらず、同じ威力のパンチを連続で繰り出す。ロボットはあまりの怒涛の攻撃に身動きが取れずにいる。
「『連刀脚』!!」
【ドドドン!!】
パンチの嵐を止め、瞬時に右足を高く振り上げてロボットの腹筋部分に刀の如く鋭い蹴りを縦横に繰り出し、最後の一発で吹き飛ばした。
「行くぜ!! 神滅流秘奥義……!」
再び腰を深く落とし、左手を手刀の形にして右手で覆って居合いの構えを取る。その左手には氣が集まり、金色に輝く。
「『星屑の閃光』!!」
相手を見据えつつ、その輝く左手を目にも留まらぬ速さで振りぬく。見えない氣の刃が、ロボットに炸裂する。
「私も行くよー!!」
零時の攻撃によって膝をついたロボット目掛けて走り出したのは、葵。
「『剣技:飛燕』。」
一瞬で切り抜け、すかさず蹴り上げる。数十トンはあるであろう巨体を蹴り上げれたのは、龍二のサポートによって筋力が強化されているためである。
「これでぇ……」
自らも飛び上がって切りつけ、そのまま宙返りをし、
「フィニーッシュ!!」
【ボォン!!】
オーバーヘッドキックの要領で蹴り落とし、地面にめり込ませる。
「ラストー!! 『メテオ・ストーム』!!!」
天井近くに魔方陣が展開され、そこから隕石が直線状に連続で落ち、全てロボットのぶち当たる。さながら隕石のマシンガンみたいなものだ。
「どうよ!!」
隕石の爆発によって周囲がボロボロになり、煙が立ちこめる中着地した葵は余裕の笑みを浮かべる。
<ほぉ……見事なものだな。>
「…………うぇ。」
が、穴から起き上がってきたロボットを見て一気にテンションは急降下した。
「……やっぱダメっぽいな。」
<当然だ……だが、この機体に衝撃を与えたのは正直予想外だった。>
龍二がポツリと呟き、サタンが答える。とは言うが、アーマーには傷一つついていない。
<では……今度はこちらから行くぞ!!!>
【ドン!!】
爆音の如く地を蹴り、一瞬で和也との距離を縮める。
「クッ! 速い…!」
迫り来る大剣を、鎌を横にして防御体勢に入る。
【ガァァアン!!】
「チィ!」
<ほぉ、なかなか……。>
刃が鎌の柄にぶち当たると、周囲に衝撃が走り、そのまま和也は硬直した。他のメンバーは衝撃によって怯み、動きが止まる。
<さすがは死神と人間のハーフではあるな。そんじゃそこらの連中とは格が違いすぎる。>
「当たり前だっつーの……オレぁ魔槍だぞ?」
『ご主人、一旦距離を取らないと!』
<だが!!>
「! ぐぁ!!」
押し返され、後方に吹き飛ぶ和也。ロボットは腰を捻り、右腕のパイプが通った肘を曲げる。
<所詮は子供!! あの世で後悔しろ!!!>
大剣の横薙ぎが和也の胴を狙うが、咄嗟に雨嵐でガードする。が、流れるようにして手首を返しての大上段からの振り下ろしにはガードが間に合わず、若干肩口を切られて血が噴き出す。
「ぐぁぁあああ!!」
『ご主人!!』
たじろぐ和也の眼前には、大剣の十字型の剣閃が消えずに紫色に輝き、禍々しい氣を放つ。
<死ねぇ…!!>
サタンが悪意を込めて言うと、ロボットの左の掌が何かを握りつぶすかのように閉じられ、剣閃がより一層輝きを増して十字架の形を成した。
【ズォオオオ!!】
「!!!!!」
大きく輝きだしたと思うと、十字架が爆発し、爆炎によって和也は吹き飛ばされ、床を転がっていって柱に当たりようやく止まった。
「和也!!」
「和也くん!!」
「師匠!!」
零時、葵、文一が、煙を上げながら倒れている和也の下へと駆け出す。
「チッ!!」
そんな彼らを守るかのように龍二は槍を構えながらロボットへ向き直った。
<ククッ……いくら足掻こうが、私には勝てん。>
「…………。」
何度も聞いた嘲りを込めた声に、龍二は表情を変えずに睨む。
「…………『龍泉水』。」
槍を振り上げると、先ほどと同じ淡い光が和也へと吸い込まれていった。
「……クハッ! こんの野郎が……!」
「師匠、大丈夫ですか!?」
「ああ……何ともねえ。」
鎌を杖代わりにし、文一に支えられながらも和也は立ち上がった。
<さて……終わりにしようか。>
大剣を振り下ろし、切っ先を床へ向ける。
<……見よ、我が魔剣の力。>
グッ、と柄を握り締め、切っ先を若干上へ上げた。
【ヴォン ヴォオオオオオオオオオオオオ!!!】
すると、エンジン音と共に大剣の刃のギザギザが高速回転をし始めた。さながらチェーンソーのように。
<我が魔力とこの世界の科学力を併せ持った、最強の武器……これで……>
そのまま切っ先を床に付け、龍二達目掛けて走り出す。刃が当たっている床はみるみる抉れていく。
<貴様らは八つ裂きだああああああああ!!!!>
「避けろ!!」
振り上げる直前、和也達は一斉に散る。
【ドォン!!】
「!? 龍二くん!!」
が、龍二は一人、槍から一瞬で太刀へと持ち替えて凶刃に立ち向かい、競り合う。
「ふん!!」
<チィ、このガキが!!>
一瞬でも触れたら真っ二つとなる刃を押し返しつつ、四肢にさらに力を入れていく龍二。
『う、ぐぅ!』
「! ちっ!」
太刀からエルの苦悶の声がし、龍二は舌打ちすると太刀を振って大剣を脇へと逸らし、飛び退く。
「大丈夫か、エル。」
『ああ……この程度では私は殺せん。』
太刀の刃には、傷一つ入ってはいない。だが、エル自身には疲労がたまってしまい、チェーンソー状態の大剣とその刃を覆っている魔力によって長時間の鍔迫り合いは不可能だ。
「……共鳴解除。」
一旦太刀から二刀へ戻し、再び構える。
「エル、耐えてくれよ。」
『……心配するな。』
.自信あり気に答えたエルに、龍二はフっと笑った。
「そんじゃあ……行くぞ!」
二刀を手に、龍二はロボット目掛けて飛び出す。
<死ににきたか!!>
「やかましいわい。」
未だ高速回転を続ける大剣を龍刃で受け流し、エルで切る。並の鎧ならば真っ二つの斬撃だが、軽く衝撃を与えただけでほとんどダメージは食らっていない。
しかし、龍二はそんなこと百も承知。
「オラオラオラァ!」
龍刃で、エルで、縦横無尽に切りつける。ロボットは大剣で受け流し、篭手でガードしつつ反撃する。負けじと龍二もガードしつつ二刀を振り続ける。
「加勢します龍二さん!!」
「行くよ!!」
和也と葵が左右からそれぞれ武器を手に刃を交えていった。
「和也!」
「はい!」
一瞬の隙に、和也が鎌を突き出してその先端部分に龍二が飛び乗り、振り上げると同時に跳躍する。そしてロボットの頭上まで来ると、二刀を大上段に振り上げた。
「斬!!」
【ドゥ!】
落下の勢いを利用して二本を同時に振り下ろし、頭部に兜割りを繰り出す。衝撃波が発生し、ロボットをよろめかせた。
「せい!」
カメラアイ部分を蹴り飛ばし、龍二自身が後方へと飛んで着地する。
そして今度は、龍二の頭上を飛び越えた影がロボットへ向かう。
「おらぁ!!」
影、零時は龍二が切りつけた部分に飛び膝蹴りを食らわし、さらに宙返りをして後頭部を蹴り飛ばす。鉄を叩くような鈍い音がした。
「装填、展開! 強化!」
『やっちゃえ主!!』
体を強化した文一がロボットの懐に入り、もう一度弾倉に手を添える。
「装填、展開! 斬撃! おらああああああああああああ!!!」
強化された筋肉を活用し、変幻自在に茜を振り回し、滅多切りにしていく。
「それぇ!!」
【ガァン!!】
最後に体を回転させての横薙ぎを放ち、ロボットを後方へ下げさせた。
「かます……二刀!!」
龍二が二刀を持ったまま腕を交差させ、体の周囲に蒼い闘氣を纏った。
「はぁぁっ!!」
呼気と共にロボットに特攻していき、二刀で瞬時に切り刻み、切り抜けると同時に宙に打ち上げる。
「『双龍連斬・焔』。」
【ズドォォ!!】
最後、技名を言いつつ龍刃を振るうと、上空で炎の球がロボットを包み込むかのように出現して大爆発を起こし、爆風で周囲の瓦礫やカーペットの残骸全てを吹き飛ばした。
【ズゥン…】
爆発でさらに上空に飛び上がったロボットは、真っ逆さまになって床に頭から突き刺さった。刺さった場所から亀裂が走り、衝撃のすごさを物語っている。
「やったか?」
零時が構えを解かないまま感慨深げに呟く。
「……。」
だが、技を放った龍二は無言のまま振り返り、ロボットを睨みつけた。
「……まだだろ。」
【ズドォン!】
龍二の否定に答えるかのようにロボットが翼を広げつつ床から飛び上がり、周囲に瓦礫の雨を降らせた。それらを飛び退いて避ける一行。
<何度言わせたらわかる……無駄だということを。>
空中から、龍二達に向かって言うサタン。その声には嘲り…ではなく、明らか怒りが含まれていた。
「チッ! いい加減しつこいぜ……!」
鎌を脇に構えた和也は、呼吸を整えて上空を睨みつける。
「……やっぱあのコーティングを何とかしねぇとな。」
『同感だ。あれではいくら切りつけたってこちらの疲労が溜まる一方だ。』
<…………物分りの悪いクソガキどもが。>
龍二とエルの会話を聞いて、サタンはより一層機嫌が悪くなった。
「いい加減に倒れろっつーの!! 鎌!!」
『はい!!』
一気に駆け出した和也は、落ちている瓦礫を足場にして高く跳躍する。
「茜!!」
『オッケー!』
文一は弾倉に手を添え、銃口をロボットへ向けた。
「はぁぁああああああ!!」
両腕を交差させ、魔力を高めていく葵。
「もう加減しねぇぞテメェ!!」
零時はその場で飛び上がり、手刀を振り上げ力を込めていく。
「『二重共鳴・太刀の型』。」
エルと龍刃を合体させ、腕を引いて突きの構えを取る龍二。
<……ふ。>
「『雨宮流鎌術! 破空斬・鎌』!!!」
「四刃展開、発射×発射×爆散×爆散!! 『弾破黄昏』!!!」
「『エターナル・デッド・エンド』!!!」
「『瞬刃・乱』!!!」
「『龍哭斬破』!!!」
和也の鎌が、文一から放たれた巨大な二つの魔力弾が、葵の魔力によってロボットの背後の空間が割れ、零時が体の周りに真空刃を発生させながら特攻し、龍二の太刀から閃光が迸る。
<この……>
それぞれの技が命中する直前、ロボットの羽が大きく広がった。
<この愚か者どもがああああああああああああああああああ!!!!!>
【ゴォウ!!!】
「!?うわ!?」
「くぅ!?」
ロボットから突風が吹き荒れ、和也と零時が吹き飛ばされて床に叩きつけられ、葵のエターナル・デッド・エンドは風と共に放出された魔力によって消され、龍二と文一の技が突風によって相殺された。
<……そろそろ終わりにしてやろうか。>
【バサァ!】
羽を羽ばたかせ、周囲に漆黒の羽を撒き散らす。
<………むぅん!!>
左腕を大きく振り下ろす。すると龍二達を囲むように三つの紫色の光球が現れる。
「な、何だぁコレ?」
「わからねえ……。」
和也と零時が起き上がり、戸惑う。
「………こ、これ………。」
『龍二! これは!!』
『ご主人!!』
『主!!』
「「「!?」」」
膨大な魔力を感じ取った葵と武器達が慌てふためくのを見、龍二達は嫌な予感に襲われた。
【キィン!】
光球からそれぞれ直線状に光が伸びて結んでいき、床に三角形を光を形作る。そしてさらに光球から斜め上に同じような光が伸び、一転に集まった。
傍から見たら、まさに三角錐のよう……さらに、水晶のように透けた紫色の光の膜が周囲を覆い、龍二達を包み込む。
「ぐぁ!?」
「ひゃあ!?」
途端、中で電流が迸り、龍二達を襲う。
「クッソ……んだよこれ、動けねえ……!」
「や、ろう……!」
床に吸い寄せられているかのように膝をつき、和也と零時は悪態をつく。
「う、ぐぅ!!」
「うぁぁぁぁあ!!」
文一と葵も苦しげに呻き、跪く。
「…………。」
対し、龍二は無言で無表情のままだが、それでも膝をついて動けるような余裕は無さそうだった。
【ィィィィィィ…………】
そんな彼らをよそに、三角錐の上に複雑な文字で描かれた同じく紫色の巨大な魔方陣が展開され、中央を光らせながら回転し始める。
<悲しみ、苦しみ、絶望しろ……愚か者ども。>
苦しむ彼らを見て、サタンは上空でまた嘲笑う。
<……………さぁ、
死ネ。>
魔方陣がより一層輝き始め、回転速度が増し、そして、
<『愚者の末路』。>
魔方陣から光の柱が飛び出し、真っ直ぐ龍二達が閉じ込められている水晶体を貫き……砕け、爆発するかのように大きく輝いた。
<ヒ、ヒャハハハハハハハハ!! フヒャハハハハハハハハハ!! ハーーーーッハッハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!>
禍々しい紫の光が大聖堂を覆うのを見て、サタンはロボットの翼を動かしながら狂ったように笑った。
サタンの必殺技を食らって絶体絶命の龍二達! 彼らの運命は!?
次回、<強の章>へ続く!!
……いっぺんでいいからこういう次回予告してみたかったコロコロです。




