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激の章<和也&文一>

今回の激の章は二つの章に分けます。とゆーわけで今回は和也チームと文一チームです。因みに“激”は“激闘の意味”です。

<ルート:和也チーム>



【ドォォン!】

「よっと!」


いきなり頭から突進してきた達磨型ロボットを横へ転がって避け、構え直す和也。


「ガラ空きなんだ、よ!!」

【ガッ!】


鎌を大上段から一気に振り下ろし、庭園の岩だった瓦礫から起き上がろうとしているロボットを一刀両断する



はずだったが、



【ガィン!】

「!? いっ…!」


鈍い金属音がし、鎌が弾かれる。


『ご主人!』

「クソが!!」


腕の痺れに耐えながら飛び退る。同時にロボットが銃口を和也に向けながら起き上がった。


破壊ハカイ。』

【ドドドドドドドドドド!!】


和也に狙いを定め、両腕のマシンガンから高速射撃。和也は後方へ連続バック転をしながら次々と弾丸を避ける。


「はっ!」

【ドォ!】


最後に大きく後方宙返りをしながら高く飛び上がり、屋敷の柱の側面に足を付ける。


「ウォォォォォラアアアアアアアアアアア!!!」


足に思い切り力を込め、鎌を振りかぶったまま猛スピードでロボット目掛けて飛んでいく。


「死ね!!!」


胴体を真っ二つにせんと、神速の斬撃がロボットを襲う。


【ギィィン!】

「チィ!」


しかし、渾身の攻撃も弾かれ、和也は顔をしかめた。


「まだまだぁ!『雨宮流格闘術 基礎の型』!!」


右手を鎌から放し、拳に氣を集中させ、



「『龍滅掌ドラゴニッククリア』!!!」

【ドォヴ!】



破壊力抜群のパンチを鬼のエンブレムに叩き込んだ。ロボットは数回地面を回転しながらバウンドし、庭園の木々を破壊してから屋敷の廊下にめり込んだ。



「どうだ!」


鎌を肩に担ぎ、余裕の表情を浮かべる和也。勝ったも同然、と言った感じだ。






【ガゴォォォ……】

「…………。」



ところがどっこい、そうは問屋がおろさなかった。



『……装甲ダメージ、5パーセント。動力部、異常ナシ。任務、続行可能。』

「……マジ、かよ。」


煙の中から、崩れ落ちた木材を押しのけながらロボットが起き上がってきた。


(クソ……どうなってんだコイツ……DCは軽くエベレスト破壊できるくらいの威力だってーのに……。)


鎌を構えなおし、和也は冷静な顔をしていながら内心焦った。


(だが、確かな手応えはあったはず……なのに、何で大したダメージくらってねぇんだ?)

『攻撃開始。』


ロボットが再び機銃をこちらに向けてきて、和也は思考を中断した。


【ガガガガガガガガガガガ!!!】

「野郎!!」


腰から雨嵐を引き抜き、弾丸を次々と切り落としてゆく。


やがて弾が切れたのか、弾丸の嵐が一旦止む。


「(チャンス!)オラァ!!」


地を蹴り、鎌と刀を交差させながら特攻する和也。


「逝きやがれ! 『雨宮流剣術奥義 風神』!」


雨嵐による横の一閃がロボットを襲うが、鈍い音をたてるだけで傷一つ入らない。


それでも、和也の攻撃は終わらない。


「『鎌術奥義 闇神』!」


今度は鎌による一閃。


「『雨宮流一鎌一刀 双鎌刃 奥義』!!」


最後に振り上げた雨嵐に力を溜め、一気に振り下ろし、



「『無神』!!!」



トドメに鎌の渾身の力の横一閃で、十文字に切り裂く。


「まだまだぁ!!」


しかしこれで終わりではなく、鎌を脇の地面に突き刺し、雨嵐を片手に持つ。


「『雨宮流剣術 基礎の型 楓』!!」


斜め下からの斬撃がロボットの体にぶち当たる。


同時に、和也は雨嵐を上空に投げて一瞬で素手になる。


「『鬼槍』!!」


右手から光速の突きが飛び出し、胴体を殴りつける。


「『龍滅掌』!!」


さらに左手から氣を込めたパンチを繰り出し、


「『双龍滅掌ダブルドラゴニッククリア』!!」


同じ氣を込めた両手を相手の胴体に叩き込む。


「終わりだ……。」


右手を挙げ、上空で舞いながら落ちてくる雨嵐を手に取り、脇に刺した鎌を引き抜く。


「機械には電流……オーバーヒートしやがれ!!」


一回転しながら雨嵐で切りつけた後、鎌を大きく振り上げる。刃から溢れんばかりの電流が迸り、白く発光する。


「『雨宮流鎌術! 襲牙雷!!』」


雷を纏ったまま神速の速さで振り下ろされ、刃が頭に突き刺さったロボットを電流が襲う。



「はぁ、はぁ………どうだ、テメェ……。」


一気に強力な技を休み無くぶち込んだおかげで、和也は疲労を隠せないでいた。だが、鎌が頭に刺さったまま動かないロボットを見る限り、和也の勝利



『ご主人!!!』

「な……」



ではなかった。



【ドゥ!】

「ぐほ!?」


腰を回転させてのラリアットを腹にモロに食らい、和也は肺から空気が飛び出すのを感じながら吹き飛んだ。


『ご主人!』

「クゥ…!」


ラリアットが飛んでくる寸前に、自ら後ろへ下がり勢いを弱めたおかげで何とか持ちこたえることができた……が、もはや鎌を杖代わりにして膝を着くのが精一杯の状況。


対し、ロボットはエンジン音をたてながら平然と立っていた。


「クソ……オレがこんなポンコツに……手間取るなんてよぉ……。」


口から垂れた血を拭い、ロボットを睨みつける。


『侵入者ノダメージ拡大ヲ確認。コレヨリ排除ヲ開始スル。』

【ガシュ】


ロボットの無機質な声と同時に、銃口がこちらへと向けられた。一瞬、鬼のエンブレムの目の部分が赤く光り、嘲笑ったかのように見えた。


『ご主人、避けないと!』

「わぁってる……がよ……!」


技による体力の消費と、腹に食らった打撃でうまく立ち上がれない和也。ロボットはゆっくりと料理するつもりか、まだ撃つ気配はない。


(野郎…………なめやがって…………。)


睨み、フラつく足を何とか立たせる。


(……こうなりゃダメもとだ。一発かましてやる……。)


和也は大気中に流れる氣を、ある一点へ集中させる。


(集中しろ……ゆっくり……。)


【キュィィ……】


ロボットの機銃から機械音がし、今まさに弾丸が射出されようとしている。


(奴の顔面……鬼の顔を……砕く……!)

『ご主人!!』


鎌が声を悲鳴に似た声で和也を呼ぶ。



【ドドドドドドドドドドド!!】



ロボットが体を下から上へ上げていきながら機銃を連射し、波の如く地面を抉りながら和也に迫る。



「食らえ! 『爆撃殺』!!!!」

【ドオオオオオオオオ!!】



弾丸が体に届く寸前、和也は集中させていた氣を一気に膨れ上がらせ、爆破させる。



「グゥッ!!!」

『ご主人、しっかり!』



しかし、弾が一発和也の足に命中しており、集中力が途切れて目標と違う位置を爆破させてしまった。


「チッキショウめ……外したか……。」


痛む足を押さえながら、和也はロボットを見る。




『ガ、ガガ、ガガガガガガ、ガガ………。』




「……へ?」

『あ、あれ? 何か様子が……。』


和也が素っ頓狂な声を上げ、鎌が訝しげに呟く。



ロボットが小刻みに震え、まるで苦しそうにもだえていた。


そして、




【ドスン!】

『ガガァ、ガガガガガガ!!』




いきなり後ろへと倒れ、亀のように短い手足をバタつかせた。


「な、何だぁ?」


ふと、和也はロボットの足元を見てみた。


そこは和也が狙いを外した爆撃殺によって小さなクレーターが開いており、微かに煙が漂っていた。


【バチバチバヂィ……】


そして、ロボットの足の部分……否、アーマーの下部分がショートしたかのように放電していた。


「……これは……まさか……。」


和也は顎に手を添え、考える。


「(…………!)そうか!」


と、パチンと指を鳴らした。



「こいつ、上部分は強いが下からの攻撃には弱いのか!」

『じゃあご主人!』

「おお!!」



さっきの疲れが嘘のように立ち上がり、鎌を腰だめにして構えながら左手を突き出す。


「もっと食らっときなぁ! 『爆撃殺』!!」

【ドォン!】


ロボットの足部分に氣を集中させ、爆発させる。


「オラオラぁ! 『爆撃殺』! 『爆撃殺』! 『爆撃殺』! 『爆撃殺』! 『爆撃殺』! 『爆撃殺』!!」

【ドォンドォンドォンドォンドォンドォンドォンドォンドォン!!!】


それだけに留まらず、何度も同じ技を同じ箇所目掛けて放ち、爆音を轟かせる。


「おまけに持ってけ! 『瘋迅』!!」

【ドドド!】


逆手の状態の左手で雨嵐を引き抜き、風の弾三連発を爆破させた箇所めがけてぶち込んだ。


『ガガガガガガガ……ダメージ上昇、危険。』


ロボットから声がし、浮遊するかのように起き上がったが、体のところどころから黒煙が立ち昇っており、ダメージを受けているのは火を見るより明らかだった。


「ち、もうちょいだったのに……。」


雨嵐を鞘に収め、鎌の柄を両手で持って腰を深く落としたまま脇に構える。


『ガァァァァ……任務続行…ザザ…困難ト判断…ザァ…最終リミッター解除……ザザザ。』

「最終リミッター?」


ロボットのノイズが入り混じった声に首を傾げる和也。ロボットは両腕の機関銃の銃口をまっすぐ和也に向ける。


【ガゴン! ウィィィィィィィ………】


瞬間、腕の前部分が折れるように倒れ、巨大な銃口が現れる。その中から黄色い光が微かに漏れだした。


「何だぁ?」

『ご、ご主人! この攻撃は今までのと違いますよ!?』

「……え、マジ?」

『マジですマジ!』


こんな会話を繰り広げてる間にも、ロボットの銃口からはさらに光が溢れ出す。


「なるほど……最後の大技ってか?」


さらに腰を深く落とす和也。その表情はどこか愉快げだ。


「いいぜ……相手してやるよ!!」

『イエイ♪』


鎌が場違いな返事をした瞬間、




『エナジーツインカノン、FIREファイア。』

【ドオオオオオオオオオオオオ!!!】



ロボットの両腕から、黄色く輝く極太レーザーが地面を削りながら発射され、和也を飲み込もうと迫る。



「鎌ぁぁぁ!!!」

『はいさ!!』

【グゥン】




途端、周囲の空間が緩やかな物となり、ビームがゆっくりと迫ってきた。ただ、そう感じるのは和也ただ一人。


そう、和也の鎌は『運命のディスティニー悪魔をデビル切り裂く刃ブレイカー』………その名の通り、運命を切り裂く。


「よぉし、悪魔はぁ……。」

『右だよご主z』

「左かぁ!!」

【ザァン!】


鎌をガン無視して悪魔と呼ばれるそれを切り払った途端、空間は終了し、ビームは先ほどと同じ猛スピードで接近してきた。




【ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオ!!!】



ビームは和也を飲み込……まず、へと通り過ぎて背後の廊下、壁を破壊して大きな穴を作った。


和也に命中する、という運命・・を切り捨てたためである。


「さぁて………終わらせてやるか。」


鎌を振りかぶり、弾丸の如く駆け出す。ロボットは先ほどの攻撃の余韻で全く動かない。


「うおりゃああああああああ!!!」

【ドッ!】


鎌の刃を地面に突き刺し、そのまま切るように一気に、赤い軌道を描きながら振り上げ、



【ガギィィィィィ!!】



ロボットの足の間に刃を潜り込ませる。


「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

『ガガガガガガ、ガガガ、ガガ、ガガガガガガガガガガ!!』


和也は腕に力を込め、足の間から火花を撒き散らしながら振り上げていく。対し、ロボットは耐えるかのように大きく振動する。


「この……魔槍グングニルをぉぉぉぉぉぉぉぉ……!」


歯を食い縛りながらさらに力を加えていき、より激しく火花を散らす。




「舐めんじゃねぇぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

【ザァン!!!】



そして遂に、鎌の刃は足元からロボットの頭上へと振り上げられ、ロボットは縦一文字に真っ二つとなった。



『ガ、ガガ………任む、シッぱイ………ぞっコウ………カのウ…………。』



ロボットの赤く光る鬼の目がフっと消えた。





【ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!】



最後の言葉……敗北を認めたメッセージを残し、左右に分かれたロボットは大爆発を起こし、炎上した。


爆風が和也を襲うが、和也は鎌を振り切った状態のまま動かず、爆風によって髪を揺らすだけだった。


「……………



フゥ。」

【ガシャン】


やがて爆風が止むと、和也は鎌を落としてその場で大の字に倒れた。


『ご、ご主人!?』

「うっせぇよ……一々大声出すんじゃねぇ……。」

『で、でも』

「寝るだけだ……少し体力回復する……。」


鎌の声を無視し、和也はそのまんま息を大きく吸った……。



(チックショウめ……オレがこんな奴に遅れを取るなんてな……。)


寝転がりながらも、和也の内心は穏やかではなかった。


(大体、何でオレの攻撃が効かなかったんだ? ……ダイヤモンドでさえオレにかかりゃ粘土みたいなもんだってのに………………



そういえば……あの装甲から感じたことのあるような力を感じたな……。)



そう思考してる間、吹き抜けの上空に広がる空を見上げてみればすっかりオレンジ色に染まっていた……。


(……もう夕方か…………龍二さん達は、優貴の妹……見つけ出せたか……な。)



やがて和也は目を閉じると、意識を心地よい夢の中へと落とす。


後に残ったのは、和也の規則正しい寝息と、ボロボロになった庭園、未だ炎上を続けるロボットの残骸、




「「…………。」」




そして和也に部屋の中へ蹴り飛ばされた時に気絶したままのクルルとレナだった。



<和也チーム、鳶の棟攻略完了>









<ルート:文一チーム>



『排除ヲ開始。』


鷲の棟のエントランスにて、文一達が対峙している天狗に似たロボットが、手にした葉団扇を横に傾けたまま前方、つまり文一らに向ける。


「文一、避ける。」

「わかってる!!」


嫌な予感が一行を過ぎり、文一と湖織は左右に分かれる。


【バババババババババ!!】


葉団扇の葉の先端部分から、マシンガンの如く弾丸が射出される。二人は咄嗟に左右の柱の影に隠れて弾をしのいだ。


「ちょ、何なのよこの見えない矢の数!? 今までのと比じゃないわよ!?」

「……あれは弾丸というもの……矢じゃない。」

「あぁもうダンガンとかそんなんどうでもいい!!」


湖織の長い髪の下からフィフィが怒鳴るが、銃声と壁に当たる音でほとんど聞こえない。


「ク、ソ……!」

『主、反撃しないと!』

「わかってる! ……でもこれだと顔出せないだろ!?」


柱の影から反撃のチャンスを窺う文一だが、相手の弾幕に手も足も出ない。


『一発、ダメもとで反撃してみたら!?』

「簡単に言うなっつーの!!ってうお!?」


反論した瞬間、文一の頭上の柱が弾丸で大きく抉れ、木片が飛び散った。


「んにゃろぉ!! 茜!」

『やっぱ反撃するんだ。』


アンタがススメたことでしょうが。


「装填! 展開!」


柱の影から茜だけを出し、ロボットへ刀身じゅうしんを向ける


発射シュート!」

【ドォヴ!】


弾丸となった魔力が、的確に狙ったわけではないが運よくロボットの胴体へと飛んでいく。



ただ、それだけ。



【ヴン】

「!? へ!?」

『あれ!?』


魔力が当たる寸前……ロボットが消えた。文字通り。ヒュっと。


「な、何で!? どこに……」

「フミヒト! 後ろ見て後ろ!!」


隣の柱から、フィフィが叫ぶ。


「え、後ろ………って!?」




振り返ってみれば、葉団扇を向けて文一を捉えているロボットが。




『リーフシューター・SHOTモード。抹殺スル。』

「させない。」


ロボットが葉団扇の柄に付いているトリガーを引き絞る寸前、湖織が真下から誘宵を振り上げる。


【ガギン ズドン!】

「ん。」

「げ!?」


弾かれて天井目掛けて発射されたのは、マシンガンではなくショットガンだった。高い天井に無数の穴があく。


『ターゲット変更。抹殺スル。』

「それはあなたの方……。」


葉団扇を湖織に向ける寸前、湖織は横へ飛び退き至近距離での散弾を回避し、誘宵で薙ぎ払う。


【ブゥン】


確実に胴体を狙った斬撃だったが、先ほどのように一瞬揺らいだかと思うと周囲の背景に溶け込むかのように消え、刀は空を切った。


「……残像?」

『因みに妖術でもねぇぜぇ? おまけに何の力も感じねぇ。』


構えなおす湖織に、誘宵が場違いなテンションで言う。始終こんなテンションだからシリアスには向いてない。


「……では、一体……。」

『おぉっと、思案すんのは後回しだ。来るぜぇ!』


湖織からかなり離れた位置にロボットがいきなり現れ、葉団扇の銃口を向ける。


「はっ!」

【ドドドドドドドドドド!!】


今度はマシンガンが発射され、湖織は横へ連続で転がって避ける。弾は湖織が通ったところへ次々と着弾する。


「ふっ!」


回転の勢いと手の力をバネにして飛び上がり、近くにあった柱を蹴り、三角とびの要領でロボットへ誘宵を構えたまま突進する。


「はぁっ!」


相手が消える前に、一気に誘宵を胴体目掛けて突き出した。


【ガィン!】


が、ギリギリのところで葉団扇でガードされ、競り合う。


「く……。」


湖織は負けじと押し返すが、相手はロボットでこっちは人間、力は向こうの方が数倍上である。


そう判断したのか、湖織はロボットの胴体を蹴り、自身も後ろへと飛び退き、体勢を立て直して再び切りつける。距離を離しすぎれば相手が消えるか、または葉団扇からの銃撃が飛んでくるため、接近戦へと持ち込んだ。何度か切り結んでいるうち、体に大した傷は与えられていないが、葉団扇の方が傷だらけとなっていった。防御用には向いていないよう。


「とどめ……誘宵。」

『おうよ! かましてやんなぁ!』


一瞬で離れて、巫女服の袖から糸を出すと同時に誘宵の柄に巻きつけて湖織は逆袈裟に一閃する。


「『刀式・風神閃かざかみのひらめき』。」


刀身から突風が吹き荒れ、ロボットの葉団扇にぶつかる。


【ボン!】


風は見事に葉団扇を斜めから真っ二つにし、二つに分かれた葉団扇は小爆発を起こして粉砕した。


『……リーフシューター、破損。修復不可能。』

「覚悟……。」


手にした葉団扇を確認してる隙に、湖織は誘宵を突き出す。



【ブゥン】

「!」


が、ロボットが一瞬で消え、突きは空振りに終わる。


「え、うっそ!? 消えるの速くなってる!?」

「……。」


フィフィが湖織の髪の裏から驚愕の声を上げるが、湖織は冷静に周囲を警戒する。


(気配がない……やはり、ロボットだから……?)

「!? コオリ、上上!!」

「!?」


フィフィが髪からヒョコっと顔を出し、二階のテラスを指差す。


手すりに両足を揃え、直立不動の如く立つロボットがいた。


『……敵ノ攻撃パターン予測。コレヨリ殲滅モードヘ移行。』


手にしていた葉団扇の柄を落とし、ロボットは両腕を広げる。


『バードスラッシュミサイル、準備スタンバイ。』

【バサァ】


ロボットの背中の鴉のような漆黒の翼が大きく広がり、威圧感を増大させる。


『お〜い湖織〜。こりゃごっついのが来るぜぇ?』

「……わかってる。」




『発射。』

【バシュシュシュシュシュ!!!】



翼から黒い羽が無数に先端を向けたまま飛んでいく。全部、湖織目掛けて真っ直ぐに。


「……落とす。」


誘宵を一振り、湖織の前方に糸が舞う。


「『帯式・周風』。」

【ゴォウ!】


風が激しく吹き荒れ、盾となって湖織に迫る羽を次々と弾き飛ばしていった。


『おいおーい、そんな技の応用なんて本編でも使っちゃいねぇだろぉ?』

「……この際、そういうのは無視……。」


ええんかい。


ともかく、風によって羽は全て床に突き刺さるか宙をヒラヒラ舞い、直撃は免れた。


『! 湖織、避けろ!!』

「!?」


突如、誘宵が声を張り上げる。




刺さった羽と宙を舞う羽が、一斉に光を放ち始めた。





【ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!】





羽が小爆発を起こし、全ての爆発が一つとなって破壊力抜群の爆撃となる。湖織は為す術もなく、爆発の炎に飲み込まれていった。





爆発が止むと、エントランスの床はもちろん、壁に無数の穴が開き、かつての豪華な面影がほとんど無くなっていた。


そんな中に人の気配は




「いつつ……。」




あった。



「コオリ、しっかりして。」

「……フィフィ、ありがとう……。」


腕が多少焼けているが、フィフィが咄嗟に張った防御壁で大事には至らなかった湖織。現に彼女の周辺だけがボロボロの穴だらけとなっており、足元は傷一つなかった。


『ターゲットノ生存反応ヲ確認。コレヨリ抹殺スル。』

【ガシャ】


ロボットが二階の手すりの上に乗ったまま、自らの長い鼻を右手で掴んだ。




【ジャギィ!】



「「!?」」

『うっひょー! こりゃまたスンゲェ!!』


湖織とフィフィは驚き、誘宵に至ってはもう感激。



ロボットの頭が取れ、付け根部分から斧の如くゴツイ刃が飛び出してきたためである。鼻は柄となっていた。



『コロス。』


ロボットが無機質な声で言うと共に、



【ヒュン】



消える。



【バッ!】

「!」


そして湖織の目の前に、手斧を振りかぶった状態で現れた。


【ガァン!】

「くぅっ!!」


大上段からの強烈な攻撃を、誘宵で防御する。



『アヂャヂャヂャヂャヂャヂャヂャ!!?? アヅ、これ尋常じゃねぇくらいアヂィ!?』

「!?」



途端、誘宵から悲鳴が聞こえ、鍔競り状態から後ろへ下がって距離を離す。


「誘宵…?」

『アヂヂヂ……ちっきしょ〜、我の美しい体に火傷負わすとは、何て奴だ…。』


見れば、誘宵の斧を受け止めた部分が熱で赤くなっていた。


そしてロボットの斧の刃を見てみると、あちらも赤く発光していた。


「……ヒートホーク……。」

『あぁ!? 何でそんな某ロボットアニメのモノアイザコ敵が使ってる奴をあいつが持ってんだよ!?』


いろいろ危ないことを叫ぶ誘宵。それ言っちゃダメ。


「……これでは、迂闊には切りかかれない……。」

『当たり前だろ!? あんなん受け続けてる日にゃあ、我の美しい体に醜い跡が』

「アンタ黙ってなさいよ。」


真剣な湖織に対し、何かコントみたいなの繰り広げてる誘宵とフィフィ。


「でもどうすんのよ? 攻撃できないってったって受け続けても同じことだし、一発でも食らったら……。」

「……そもそも、あの力だと……キツイ。」


間合いを離しながらも、構えを解かずに警戒しながら様子を見る。ロボットの方はというと、もはや頭がない状態の体のまま動かない。


「……せめて、一瞬でも隙を作れば……勝機はある……。」

「んなこと言ったって、あいつすぐ消えるじゃない。」

「……そこも問題……。」



殺戮サツリク。』



しびれを切らしたかのように、ロボットが翼を広げて姿勢を低くした。


「! …来る。」

『ちょ、あんま受けんなよ!? 我が死ぬ!』

「いっそ死ぬ気で受けなさい!!」

『マジで!?』


【ドォン!】


フィフィと誘宵がコントまがいのことを繰り広げている間に、ロボットが低空飛行したまま突っ込んできた。


「くっ!」


咄嗟に横っ飛びをして上段からの振り下ろしをかわすと、床に大穴があくと同時に床板の切れた部分が黒く焦げる。その状態から斜め上、湖織目掛けて斧を振り上げるが、間一髪、体を後ろへ逸らすことで凶悪な斬撃を回避する。


さらに縦横に連続で振り続け、それらを次々と体を逸らすことで回避……だが、所々避けきれずに傷痕が増え、服に焦げ跡がついていく。


「うぁっ……!」

「コオリ!!」


避ける最中、バランスを崩してよろける湖織。それに対し、ロボットは容赦なく彼女の命を刈り取るべく斧を振り上げる。



【ガァン!】


咄嗟に誘宵で防御し、あまりの衝撃で足が床に若干めり込んだ。


『ドァッチチチチチチーーーーー!!!!死ぬ、これはマジで死ぬうううううううううううううううう!!!!』

「えぇい、耐えなさいよ! アンタ男でしょ!?」

『武器に性別もクソもあるかってウオアアアアッチイイイイイイイイ!!??』


斧を受け止めた部分が赤く発光し、誘宵が悲鳴を上げる。フィフィが応援(?)するが、何かもう受け止めてるひとがいろいろヤバイ。


「ぐぅ……!」


そして誘宵で受け止め続けている湖織も、グングンと押してくるロボットの力に耐え続けている。しかしそれも限界に近そうだった。


「あぁもうクソ! 『炎よ、飛び散れ』!!」

【ボォン!】


湖織の頭の上からフィフィがロボットを指差すと同時に、炎が爆発する。同時に湖織が後ろへと飛び退り、間合いを離す。


「もういっちょ! 『氷よ、突き刺せ』!!」

【ドドドド!!】


今度は周囲からツララが五本出現し、次々とロボットがいる黒煙の中へと突っ込んでいく。煙で見えないが、音からして手応えあり。


「どうよ! ありったけの魔力ぶち込んでやったわ!!」


フィフィが勝利の笑みを浮かべながらガッツポーズを取る。


「……ダメですね……。」



が、湖織が諦めムードで呟く。




『…………損傷ダメージ、38パーセント。任務遂行ニ支障ナシ。』

「………うっそーん………。」


煙が晴れると、そこにはロボットが先ほどと同じ直立不動のまま平然と立っていた……が、体中のところどころに傷を負い、中でも胸部の部分に小さな亀裂が走っていた。


『チッキショ〜あのハイテク鳥類めぇ〜……無駄にかってぇ体してやがる……。』

「ど、どうすんのよ!? 魔法効いてないって!?」

「…………。」


慌てる一匹(?)と一本、そして黙ったままロボットを見つめる湖織……。


「…………。」

【チャキ】


そしておもむろに、誘宵を構えた。


「ちょ、コオリ!?」

『おいおいおいおい!? もう我はアッツイのこりごりだぜぇ!?』

「……あそこ……。」


驚くフィフィと抗議する誘宵をよそに、湖織はある部分をじっと見つめる。


「あの胸の部分……装甲に亀裂が入ってる……あそこさえ突けば……。」

『ちょい待てあれほっそすぎやしねぇか!?』

「それしか方法ない……。」


湖織は一歩、足を踏み出して駆け出す



「っ!?」

「え、ちょ、どしたのよ!?」



が、突然膝を着く。


「…………。」

「ちょっとコオリ!?」

「……足。」

「……へ?」

「さっき防御した時……足の傷が開いた……。」


見れば、湖織の右足首から血が止めど無く流れ出ていた。傷口も横に大きく裂けている。


「だ、大丈夫コオリ!? 結構大きいわよ!?」

「……ものすごく大丈夫じゃない。」

「えんらい素直ねアンタ!?」

『オーイ、コントしてる場合じゃないぞー。』



『抹殺、執行。』

「! コオリ、避けて!!!」

「……無理。」



ロボットが斧を大きく振り上げ、今まさに湖織の脳天をかち割ろうとしていた。






「皆、伏せろおおおおおおおお!!!」

「「!?」」



突然、背後の柱から声がし、誰かが飛び出してきた。



「行くぞ茜ぇぇ!!」

『了解だよ主!』

二刃展開ツインズオン!!」


ジャキっと音がし、突き出された剣先から茜色の光が溢れ出す。


「くらえ、連追弾ダブルバレット!!!」

【ドドォ!!】


短い間隔で、二つの魔力が連続で射出され、真っ直ぐロボットのある点目掛けて飛んでく。



それすなわち、



【ドドオオオオオオオオ!!】



亀裂部分。



『ガガガガガガガ!?』


魔力を食らい、体から電流を迸らせながら大きく仰け反るロボット。胸の亀裂が先ほどよりかなり大きくなっていた。亀裂からは複雑に入り組んだ機械が見える。


「湖織!!」

「はい。」

「『光よ、かの者の傷を癒せ』。」

『うおらぁ!! 倍返しにしてやるぜぇ!?』


フィフィが呪文を唱えると、湖織の体の傷がみるみる塞がっていく。足の裂傷も塞がり、立てるようになった湖織は、一気に駆け出した文一を追う。


魔力装填エーテルリロード二刃展開ツインズオン……」

「刀式……」


文一は走りながら茜の二つの弾倉に魔力を注ぎ込み、湖織も同じく袖から出した糸を誘宵の柄に巻きつける。




斬撃破斬ブレイドオブブレイド!!!」

風神閃かざかみのひらめき。」

【ズゴォ!!】




茜色の刃と、風を纏った刃が亀裂にぶつかる。




『ガァガガ、ガアアアアアアアアアア!!!』

【ゴォォォォォォォ!!】


斬られた亀裂部分から血の如く赤い火が噴出し、飛び退く文一と湖織。さらに亀裂以外にも、首部分から炎が噴出し、体の至るところが小爆発を起こす。



『ガガガガガガガガガガガガ……』




【ガシャァァン】



やがて爆発が止み、そのまま大の字に後ろへと倒れ、動かなくなった。体中からは未だに黒煙が立ち昇り、時々バチィ、と電流が弾けるかのように鳴る。さながら痙攣しているかのよう。



『……………ニニニ、任務、失敗………ガァァァ………続行、不カ、ノ、ウ………………。』



体が手にした手斧、もとい頭部から途切れ途切れの声が聞こえ、やがて目から光が失われていく。




【ボォォォォォォン!!!】




突然、ロボットの体が爆発し、炎上し始めた。もう二度と動くことがないくらい、完膚なきまで破壊された。


「…………。」

「…………。」

「……えっと…………これ、私達の勝利?」

『あったりめぇよー。ふぃ〜さすがの我もヒヤヒヤもんだったぜぇ?』


炎上するロボットを見つめる文一と湖織。フィフィと誘宵に至っては、何とか勝てたという勝利の余韻に浸っていた。


「…………。」

「…………。」




【ドサ】




「「はぁぁぁぁぁ……。」」


突然、二人は並んでロボットと同じように大の字になって倒れる。


「やっべぇ……魔力ほとんど使い果たしちまった……。」

「……湖織も体力もう無いですー……。」

「…お前、誘宵の憑依があっただろ…。」

「それでも限りっていうのがあるんですー…。」

「……そうか……。」

「……それはそうと、文一。最後にいいとこ取りしてある意味卑怯ですー。」

「しょうがないだろ? 力溜めてたんだからさぁ……いつ隙が出来るのかずっと待ってたんだぞ?」

「その間湖織はボロボロになったですー…。」

「………何も言い返せないな。」

「ですー……。」

「あぁぁぁ………やばい、体が全然動かないや……。」

「……同じくですー……。」

「…………。」

「…………。」


もはや喋る元気もなくなってきたのか、黙り込む二人。


【ヒュ】

「あ、主ぃ〜……。」

「あ〜あ、こりゃダメね……完璧体力無くなってるわ。」

『ヒャハハ、二人仲良くねんねしな〜っと!』


茜は文一の傍で武器化を解き、フィフィは茜の頭の上で首を振った。


「……体力回復したらすぐに龍二さん達のところへ行こうな。」

「……はいですー……。」


二人はボロボロになった鷲の棟のエントランスで、しばしの休息をとることにした……。




<文一チーム、鷲の棟攻略完了>




この度、短編を都合により急遽長編という形にしました。短編に評価してくださった皆様方、ごめんなさい。

かぁなり長くなる話ですので、どうか生ぬるい(!?)………いや、あったかい目で見てくださいませ。


次回は<後編>、龍之チームと龍二チームです。

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