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橋。

作者: 悠太郎

此処は何処か?


森の奥深く…


僕は今、走っている。

ひたすら。息を切らしながら走る。


全身にかく汗が身体中にべたつき、

長袖の白いシャツの腕からは、

へばりついた皮膚とシャツで、

服の上からうっすらと粘り気のある

肌色の地肌が滲み出ている。


僕はふいに、立ち止まる。


どうやらこの先は行き止まりだ。

目の前には相当に深いだろう、崖がある。



崖の下を見ると、深い谷底にいくつもの岩が

転がっており、深く薄暗い底には微かに

小さな小川が流れているように見えた。

崖底は僕の足元から数十メートル下にあり、

落ちれば僕は、確実に死ぬだろう。


そして今。

僕は得体の知れない何かに追われている。


振り返ると、鋭利な刃物を持った

若い男が何か奇声のような声をあげながら、

とてつもない勢いでこちらに全力で走ってくる。

今にも追いつかれそうだ。



…男は目が狂っている。

鬼の形相でこちらだけを血走った目で見続け、

追いかけてくる。凄いスピードだ。

このまま追いつかれたら僕は恐らく、

身体を無惨に切り裂かれたあげく、

そのまま死ぬだろう。


目の前の崖にはひとつだけ、壊れかけた

吊り橋橋が架かっている。

それは今にも壊れそえな簡素な吊り橋

だったが、僕には其れが生命線に思えた。

それでも橋は随分劣化が進んでいた。



…このまま生き延びるには

どうすれば良いのだろう。

僕は焦りながらも自問自答していた。

しかし考える余裕はない。


そもそも何故、こんな所に来てしまった

のだろう。

急がなければ、選ばなければ…




僕は今朝、いつもより少し早い時間に

目覚めた。

いつものようにパンとコーヒーを朝食に、

軽い身支度をした。

携帯電話、煙草、財布だけを持ち、

そして足早に家を出た。



僕は昨日、会社を辞めた。

長く勤めたブラック企業だったが、

昨日ついに僕の中で何かが「キレ」た。


出社後にすぐに上司に呼ばれ、またいつもの

ように小言を言われて腹が立った僕は、

ついに、そのまま黙って上司を遮り帰宅した。


普段は職場の人間関係も悪くなく、

同僚ともそれなりにうまくいっていた。

しかし、上司とはソリがあわず、度々嫌味を

言われ続けていた。

私生活が特に充実しているわけでもなかった

為、溜まったいわゆるストレスを、発散する

ことも出来なかったのだと、今は思う。



後悔は全くなかったが、あと一日待てば、

本来今日は地方から東京へ出張に行くはず

だった。プロジェクトも任されていた。



そして今朝。気分転換でもしようと考えて

ドライブにでた。

カーナビを一度も行った事のないリゾート

施設に設定して車を走らせたのが、

今から二時間前の出来事だった。



それが今。ふと、気が付いたら僕はこんな所で

急遽の選択に迫られている。

昨日の「バチ」が当たったのだろうか。



人生は選択の連続だと思う。

昨日の選択が今日の選択に繋がり、今の選択が

この先の僕を決めてしまうのだろう。



鼓動が早まる。

目眩がし、頭が重く鈍器のようなもの、で

殴られたかのような痛みがしてくる。




振り返ると男がヒステリックにいかれた目つき

で息を乱しながら、僕にどんどん近づいてきた。




僕はこれから、どうすれば良いのだろう。












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