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異世界で美少女になったので動画配信はじめます!  作者: フォルトちゃんねる@vtuber
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リルって変身できるんですね


「えっ!?」


 跳躍も伸びやかに、ひと蹴りでものすごく加速した大鹿は私に背を向けて駆けていく。

 逃げていく。

 馬車の横を素通りするときにリルが飛び蹴りするのも、体を揺すって振り払うだけで効いちゃいない。


「に、逃げた? 待て!」


 危険な魔物を野放しにしちゃいけない。

 サーシャはミヤたちに任せて、リルと一緒に追いかける。

 けど……。


「速すぎワロタ!」


《武の極地》を重ねた疾走はたぶん超速い。通り過ぎる木はカミソリみたいに鋭く消えていく。

 それでも鹿の尻はあんまり近づかない。


「リル、追いつける!?」


 私より足の速いリルがうなずいて先行する。

 大鹿になんとか追いついたけど、飛びかかっても振り払われて私の後ろまで飛んでいった。

 すぐ隣まで追いついてくる。

 私よりも小柄なリルの体格じゃあ、大鹿を止められないらしい。


「ここは……チートを重ねるしかないのか……!?」


 この距離を保てるなら、《魔力強化》を重ねることで戦える。

 でも大鹿一体のために、三枚……!

 三人もの協力を使うのか?


「もっと速く走りたい!」


 そのとき。

 私の中から何かが吸われた。いや、なにかではない。

 MPだ。

 私のMPを減らして魔法が発動している。


「ちょ……り、リル!?」


 暴風が吹き(つど)っていく、


 リルだったものが蒼いバイクに変身していた。


「どういうこと!?」


 剣のような風防、なめらかなカウル、銀色に鈍いボディ、無骨なホイール、そしてガッシリしたシート。

 どこからどう見てもバイクだった。

 そういえばリルは、私が遊んでたバイクのゲームを見てた!

 バイクがひとりでに疾走して私に「そっ」と寄り添ってくる。


「おまえリルだな!? おまえ変化するのか!?」


 驚きのあまり口調が荒くなった。

 リルは「さっさとしろ」とばかりにズイズイ車体を寄せてくる。


「待って、バイクは引っ張られて移動するものじゃないから! 乗るものだから!!」


 分かってなさそうなリルバイクの背中に手をかけて飛び乗る。グラッとしたのは一瞬。

 リルはお腹も震えるような咆哮をあげて、ぐんと加速していく。


「よし……これなら追いつける! 行くよリル!」


 リルバイクの背に伏せて、シートにしっかり手をかける。見よう見まねだからハンドルグリップもメーターパネルもない。

 大鹿の背が大きくなるに合わせて、私は両脚で車体をはさんで身体を固定。両手剣を大きく後ろに流して構えた。


 大鹿が私を振り返る。

 その目には色濃く感情が渦巻いていた。


 この自分が、

 踏みつける立場の自分が、

 ()われる屈辱を味わうなどと。

 そんな憎悪を。


「こちらにも縄張り意識があるんでね!」


 私は全身でねじるようにして、横一文字。

 大振りのスイングで大剣を叩きつける。

 剣の重さと刃の鋭さで、剣はたやすく斬り込んでいき、

 大鹿をバッサリと斬り捨てた。


「ど、ぅおわあ!?」


 斬った反作用で姿勢が崩れた。

 車体が傾ぐ。

 リルは風を脱ぎ捨てるようにして人型の小柄を宙に放り出し、私も中途半端に投げ出された。


 とっさに身体をひねって姿勢を取り戻し、リルを空中で抱き留める。

 両足の踵から、ほとんど座るくらいの低い姿勢で土に接地。摩擦と慣性の合力で吹っ飛びそうな身体を抑えこむ。


「うおあああ止まんねー!?」


 ずぞざーっ! と果てしなく長く滑って、ようやく私の身体は止まった。

 ドサリ。ずいぶん遠くで大鹿が崩れ落ちる。

 腕の中で目を丸くするリルには……怪我はなさそうだ。


「リル」


 蒼髪幼女は私を見上げた。


「急に止まるのはやめようね」


 リルはコクンとうなずいた。

 バイクは急には止まれない。


 みんなは……無事かな……?

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