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異世界で美少女になったので動画配信はじめます!  作者: フォルトちゃんねる@vtuber
22/38

いきなり凄いのが現れました

 蒼髪幼女が樹上から飛び込んできて、熊にも似たホブイミテートをぶん投げた。

 けれど、そのまま転んだ蒼髪幼女は、体を起こして顔を歪める。

 立ち上がれない。

 見れば肩と脚に新たな噛み傷ができている。私が手当てした傷とは別のものだ。


「サーシャ! イエナを助けて!」


 私は《身体強化》の脚力で、一歩でミヤを飛び越えた。

 ホブイミテートに体当たり。ぶちかまされたホブは、ワイヤーアクションみたいに手足をバタつかせながら吹っ飛んだ。


「ミヤ、イエナの加勢に!」

「にゃ……にゃあ」


 ミヤは困惑した目を蒼髪幼女に向けながらも、立ち上がって下がっていく。

 蒼髪幼女は私を見上げていた。

 顔色が悪い。両足を投げ出してペタンコと座り込んでいる。

 私の巻いた包帯はまだ残っているのが不思議なくらいボロボロだ。


 ホブイミテートたちは私よりも蒼髪幼女を見て吠えている。


 つまり、たぶん。


「あなたが狙われているんだね」


 森の奥にいるはずのホブイミテートの群れがこんな街道近くに現れたのは、この子を追っていたからだ。


 ガクンと身体が揺れる。私の肩にホブイミテートが牙を立てていた。

 牙は私の肌を破れない。

 私はギュッと拳を握りしめて、ホブイミテートを殴り飛ばした。殴られた魔物は煙に砕ける。


「とにかくこの場を切り抜けなきゃ」


 難しいことではない。

 チート回数を使ったのだから。


 残りは、二十回。


「フォルトっ! イエナは平気よ! 怪我も大丈夫!」


 サーシャが大声で教えてくれた。

 痛恨に悔やんで座るイエナを、二人が庇いあって守っている。

 小イミテートはもう倒したようだ。


(なら、あとは目の前のホブを倒すだけ……!)


 ホブたちを振り返る。駆け出――せなかった。

 ホブたちが並ぶ、さらに森の奥。

 遥か高くに枝を張る森の木を揺すって、たす、たす、と柱のような足をついて歩いてくる巨大ななにか。


 狼のようで、象のようで、猪のようで、蜥蜴(トカゲ)のようで、あるいは大樹のようですらある。

 何かであり、何でもないもの。

 まがいもの(イミテート)


「狙われてるって、そういうことかぁ……」


 私たちがよく見かける小さなイミテートは、胞子のようなものだという。

 ホブイミテートは、胞子が成長した姿だ。

 であれば。

 成長しきった親株はどんな姿をしているだろう?


「エルダーイミテート……っ! この森のイミテート発生源はこいつですわ!」


 イエナが悲鳴のような叫び声で教えてくれる。

 古老の(エルダー)イミテートは狼の顔を木々の合間から突っ込むように覗かせた。

 灰色の瞳がじろりとサーシャたちを眺め回す。

 蒼髪幼女の姿を認めて、私に定まる。


〈〈〈おまえが、我が同胞を追い散らかすヒト種の(ガン)か〉〉〉


 幾重にも重なったようなひずんだ声。


「しゃべった……」


 思わずつぶやいた言葉に、エルダーは目元を歪めて笑う。


〈〈〈ヒトを喰らわばヒトに成る。我らからすれば当然の摂理よ〉〉〉

「うげ。人を食ったのか……」


 あんまり楽しくないことを聞いてしまった。

 死骸を取り込むイミテート種の特徴を考えれば確かにそうなる。

 エルダーイミテートはもう一歩踏み込んで、喜悦に歪んだ視線を私たちに巡らせる。


〈〈〈我らは気分が良い。その娘を置いていけば、ヒトどもは見逃してやろう〉〉〉


 私はそっと振り返る。

 ミヤ、イエナ、サーシャも顔を見合わせていた。

 誰も口を開けない。

 そうだろう。

 どちらを選んでも、自分以外に犠牲者が出るかもしれない。


 ただ……蒼髪幼女とみんなは知り合いじゃない……。


 サーシャが青ざめた顔で杖を握りしめる。


「……あのね」


 声は震えている。

 怖い。逃げたい。見捨てて差し出して助かりたい。

 そんな本能のさざめきがこちらにまで伝わりそうな緊張が、サーシャの総面に満ちている。


「一度は助けようとした女の子なのよ。それに、たった今、助けられもした。見捨てられるわけないじゃない……」


 それでも、サーシャはそう言った。


(サーシャ……!)


 狼面は低く笑う。


〈〈〈左様、そうであろうよ。ヒトとは、互いに助け合うものと聞く。幼子の姿をしたソレを見捨てるようなら、貴様らはヒトの(なり)をしてヒトではない……(ブタ)にも劣る()()()だ。食らってやるのが優しさよの〉〉〉


 ……なんだって?


「じゃあ、幼子を見捨てない"ヒト"はどうするの?」


 エルダーはぞろりと生え揃った牙を見せる。

 せせら笑った。


〈〈〈ヒトの肉は美味い。我らの慈悲に抗ったのだ、喰らわれたとて否やもあるまい?〉〉〉


 つまり。

 どちらにしても食い殺すつもりだったのだ。


 エルダーイミテートが樹上に達する巨大な身体をゆっくりと揺する。

 ぼと、ぼとり、と音を立てて毛玉が落ちた。それはモゾモゾと起き上がり小さなイミテートとなっていく。

 ホブ種のイミテートもまた動き出し、さらに森の奥からももっと集まってきた。


 私たちの全方位を埋め尽くすように。


〈〈〈貴様らの肉、我らと我が子らが有効に利用してやろう〉〉〉

次回更新は明後日2018/10/07です!

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