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異世界で美少女になったので動画配信はじめます!  作者: フォルトちゃんねる@vtuber
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私の武器を買ってみます

 翌朝一番に、私はギルド会館の裏庭でミヤに模擬剣の素振りをさせられた。

 今日は二人だけだ。

 黒髪の支援魔法使いサーシャは外に出る準備を。

 金髪お嬢様のイエナは朝寝坊をしている。


「うーん」


 簡単に基礎を教わって、ぶうん、ぶうん、と面打ちの素振りをする。その姿をミヤが目をすがめてじっと見る。

 独特の緊張感に胸がざわざわする。


「み、ミヤ……? なにかおかしい?」

「ああいや、あんな雑な教え方で正しい素振りができるわけないにゃ。すばやく振り下ろしてピタッと止めることだけやってほしいにゃ」

「うん。やってるつもりだけ、どっ! と……」


 素振りをする私の動きを見定めて、ミヤは口を開いた。


「ダメダメにゃね」

「えっ!」


 思わず剣をおろしてしまった。

 ミヤは何食わぬ顔でフォルトを見つめ返す。


「筋力がなさすぎるし、身体の軸もブレっブレにゃ。重い武器を扱える身体ができてないにゃね」

「そ……そうかあ……」


《身体強化》があるから気にしていなかったけれど。転生後のこの肉体も非力らしい。

 前世と違って魔法というものがあるのは救いだ。


「護身用に軽い武器を持つのがいいにゃね」

「軽いっていうと、ナイフとか?」


 ナイフとかダガーを構える軽戦士な私の姿が思い浮かぶ。

 ふむ、似合ってるじゃないか?


「んー……」


 だがミヤ師匠の反応は微妙。


「正直、刃物を持たせるのは不安にゃ。フォルトは戦いなれてないから、不意打ちを食らったりして動揺したとき、刃物だと自分や仲間を怪我させちゃう危険があるにゃ」

「……たしかに」


 サムライのタマシイ、日本刀だって扱いを間違えば手や足をバッサリやってしまうと聞く。

 私が日常的に出刃包丁を振り回す生活を送るんだぞ! そう考えると不安しかない。


「でもそれじゃあ何で戦うの? やっぱり素手?」

「よっぽどの達人でなきゃ武器持ったほうが強いにゃ、素人にはオススメできない。ミヤにいい考えがあるにゃ」


 ミヤはニヤッと笑って、私を街へ案内した。


 職人通りの鍛冶屋さんへ。

 樽に放り込まれて剣が売られているような、実戦メインの冒険者向け武器屋さんだ。ミヤは手慣れた様子で店番の少年に声をかけ、奥から商品を出してもらっていた。


 いや。

 商品じゃなかった。


「では長さはこのくらいでいいですか?」

「いいにゃ。フォルトの手はちっちゃいからにゃ」


 そう言って少年が布をグリップみたいに巻きつけていくのは――鉄の棒。

 売り物ではなかった。

 材料だ。

 鉄の棒を今まさに目の前で加工して武器を作っている。


「一応、ちゃんと端材を溶かしつけて重心を先端に移してるにゃ。素材そのままじゃないにゃ」


 私の表情に気づいたのか、ミヤがそんなことを耳打ちしてくれる。

 そうだとしても、たった今その加工が終わる程度の作業には違いない。

 少年はグリップを巻き終えると、騎士に剣を捧げ持つように両手で差し出してきた。


「ライトメイスです」


 嘘つけぇ! そんなちゃんとした武器っぽい代物じゃないだろぉ!?

 もちろん言えなかった。ミヤは機嫌よさそうに代金を支払っている。


「この武器はミヤがおごってあげるにゃ」


 ほぼ原価でバリ安だもんね!?

 表の樽で売られてる投げ売りの剣が高く見えるよ!


「あとは小盾(バックラー)も欲しいにゃ。鉄板を表面に打った木製の」

「え、木製でいいの?」

「木でも頑丈なのは重いにゃよ。鉄の塊を持って森を一日中歩き回れるかにゃ?」


 なるほど、絶対に無理だ。

 そんなわけで私は右手にライトメイス、左手にバックラーを構える軽戦士となったのだ。


「……なんか上品なゴブリンみたい」

「ブフっ!!」


 ミヤが吹き出して笑った。


「なにわろてんねん」

「ウッウン!(咳払い) 重さはどうかにゃ? 持っててつらくないかにゃ?」

「大丈夫。どっちもほどよい重さ」

「それ持ってえんえんと森を歩き回るからにゃ。重くてまともに振れない、なんて本末転倒は困るにゃ」


 冒険者稼業って全体的に持久戦なんだなぁー……。


 買い物を終えた私たちは、ギルド会館へ。

 まだちょっと眠そうなイエナと荷物の点検をしてるサーシャと合流した。

 イエナは私が腰にさしてるライトメイスを見るなり、こくんとうなずいて。


「うっかり間違えて自分を殴っても打撲で済む。いいチョイスですわね」

「んむにゃ」

「私をどんなうっかりちゃんだと思ってるの?」


 憤慨する私は、なんだか生暖かい目で見守られるんであった……。


「ともかく、森に出発しましょうか」


 サーシャが笑って誤魔化した。

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