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異世界で美少女になったので動画配信はじめます!  作者: フォルトちゃんねる@vtuber
16/38

ありがとうと決起集会です

「……帰ってきちゃった」


 影が存在感を強めてきた、夕暮れの始まりのころ。

 私はパソコンの前に帰ってきた。

 動画のアップロードは終わって、予約公開の時間も過ぎて公開されている。


 目を閉じて深呼吸。

 不安なのか、恐怖なのか、それとも期待なのか。

 なんとも言いがたい感覚が胸を焦がして落ち着かない。


「ふう……。よし」


 いざ――。

 公開した動画の結果を一覧できるビルボードページを開いた。


 再生数は……61。


「………………そっか」


 なんだか奇妙な感覚だ。

 喜びとか不安とか、いろんな気持ちがグルグルしてる。

 けど、一番強いのは。


 ……安心した、かもしれない。


 それはそうだ。

 もっと改善すべきことはたくさんあった。

 それでも、そんな私の動画を見かけて、再生してくれた人がこんなにもいる。


 もちろん途中で見るのをやめた人も少なくない。(平均視聴時間など、そういう情報がなんとキッチリ分析されているんである。ビックリした。)


 けど。

 なんてったってこの数は、一人ひとりの積み重ねだ。

 誰かが動いてくれた結果がここに出ている。

 なんというか……ありがとう。


「……よし。サーシャたちと合流しなきゃ!」


 そっちもそっちで、頑張らなくちゃ。


 §


 ギルド会館で三人を待って合流。

 依頼の精算を終えて戻ってきたみんなは、少しくたびれた感じだ。


「お疲れー。依頼大変だった?」

「なかなか素材が集まらなくてね。でも心なしかスライムの数が減って、森が歩きやすかったわ」

「サーシャ……それ、私が生態系を崩したってこと……?」

「崩れるほど生態系に組み込まれてませんわよ、スライムなんて」

「んにゃ。食べないし食べられないからにゃ」


 そんな話をしながら食事処の酒場へ。

 サーシャが慣れた調子で個室の席料を払っていると、ふとヒゲ親父な店主が私に笑った。


「今日は囚われてないのか?」

「え、ええ、はい」


 急に話しかけられてどもってしもうた。

 いつもなら、ここで曖昧に笑って誤魔化すのだが。

 小さく呼吸をして、口を開く。


「……逃げても捕まるので、無駄なんです」


 店主は、声を上げて笑ってくれた。

 私が頑張って冗談を言ったと汲んでくれたようだ。

 このオーバーリアクション。……店が人気になるわけだ……嬉しいじゃないか……。


 ともあれ。

「いつもボックス席買ってるの?」

「なるべくね。落ち着いて話しながら食べたいから」


 ボックス席の間仕切りを兼ねる暖簾をあげながら、サーシャは当然のように言う。ふうん、と思いかけたとき。

 ちょいと服の裾を引っ張られた。

 見ればミヤさんが恥ずかしそうに猫耳を伏せて、はにかむように笑っている。


「ミヤは耳がいいから、急に叫ばれたりするのは苦手なんにゃ」

「あ、なるほど」


 するとイエナが金髪をなびかせてスルッとボックス席に入る。


「みんなの利益ですわ。わたくしだって美人を理由に絡まれるのは御免こうむりますもの」

「あ、確かに」


 こうも美少女ぞろいだと、ウェイ系は一言言わずにいられなさそう。

 そして、なんか納得する。みんならしいなって。

 一人のために、みんなで理由を持ち寄っているんだ。


「フォルトは今日なにしてたの?」


 サーシャが私にも席を促しながら聞いてきた。


「あ、うん。買い物したよ。薬とか」

「えっ!?」


 すごい反応されてビックリする。

 おそるおそる席に座った私は、どうやら怒られるわけではないみたい。イエナさんが落ち着いた声で尋ねてくる。


「どこで買ったんですの? 不良品掴まされていません?」

「ヴェッ、不良品?!」


 慌てて買ってきた薬を【ストレージ】から広げてみる。消毒液、包帯、そして軟膏だ。


 これを売っていたのは魔女っ子みたいな三角帽子の少女だった。

 確かに……あまり薬を商うような年齢ではなかったのかもしれないけど……。ええ? あの子が悪徳商法を??


 手に収まるサイズの円筒形に入った軟膏に、ミヤが顔を近づけた。すんすんと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。


「この軟膏は珍しい形状ですにゃ? どうやって使うにゃ」

「フタ開けて、ツメ押さえながら逆さにしてポンっと」


 冒険者仕様なのかと思ったけど、違うのか。ミヤのみならず、サーシャもイエナも感心している。


「匂いはちゃんと薬っぽいわね。試してみた?」

「うー……うん。見た感じ効いてそうだったけど……」


 試したのは蒼髪幼女だ。なんか人体実験したみたいになってしまった。


「偽物じゃなさそうにゃ。むしろこの形状は面白くてイカしてるにゃ」


 ひとすくい指に取ったミヤがそう結論づけて、場は一気に弛緩した。

 サーシャが苦笑して私に顔を向ける。


「街に慣れるまでは、欲しいものは私たちに相談してね」

「ハイ……」

「で、それよりも」


 イエナが呆れたふうに碧眼を細めて、薬に気を取られる私たち三人を眺めていた。


「武器を買うお金は残してるんですの?」

「あ」


 みんなにすごい顔で見られた。


※再生数とチャンネル登録者数は掲載時点でのものです。



昨日09/19にアップロードしました動画、


https://youtu.be/3Ay6FrbEc2w


TRPG「ソード・ワールド2.5」を扱ったネタで公開いたしました!


初回動画と同時に収録しておいたものです。よろしければよろしくお願いします!

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