諸事情トラック
紆余曲折トラックの末、私は異世界にいた。
【というわけで厳正なくじ引きの結果、奇跡をあなたに授けます】
そこには天の声だけがあった。
【具体的には、天与の恩恵を授けて別の世界に生まれ変わってもらいます】
「やったぜ」
チートスキルつき転生させてくれるって。
反射的に喜んだものの、なかなか豪快に脈絡がない。
「なぜ撥ねられる必要が?」
【世界のバランス的なアレで今期のぶんの奇跡を消化しないといけないのですが、あなた個人の幸運量保存則には釣り合いませんでした。なので文字通り『身に余る不幸』を浴びせたということです】
チートを与えるのは誰でもよかった。
不幸な人間に与えなきゃいけなかった。
だから私を不幸にした。
……完璧な三段論法に涙が出ますな?
「なにそれ理不尽。神様の勝手な都合でぽこすか殺されたり生まれたりするんですか」
【そんなものですよ、神なんて】
そうかもしれない。
私を死なせたトラックの運転手さん、せめて幸福になって。私も来世で幸せになるよ。グッバイ現世!
「で、私はどんな世界に行って、どんなスキルがもらえるんです? 剣と魔法のファンタジー世界を希望します! 悲惨な戦争とかないほうの!」
【そうですか? じゃあそこに。スキルは身体強化と魔力強化ひとそろいをあげましょう。あと鑑定も】
「最高かよ」
【さしあたっては注意点がひとつ。そのチートスキルはあくまで神の力です】
神に授かるんだから、それは神の力だろう。
「というとつまり?」
【神の力は信仰される力。そのダウングレード版なので、ひととの繋がりの数しか使えません】
は?
ぼっちに向かってなに言ってんの?
【あなたの場合は6回まで恩恵を受けられますね。両親、父方の祖父母、母方の祖母、はす向かいの山田さん】
「はす向かいの山田さんって誰!? むしろその繋がり怖いんですけど!!」
【もう死んだ世界でのことなので、あなたには無関係ですよ】
そうだけども!!
【……それにしても、友人の一人もいないとは。特別に愛犬のジョンも加えてあげましょう。7回です】
「うるさいよ! ぼっちなんだよ!! ありがとうジョン!!」
【異世界でもひとと関わりを持てば増えますよ。せいぜい頑張ってください】
「そもそも、その『人とのつながり』って、どのくらいで成立するんですか?」
友達ってどこから友達なの??
現に学校の同窓生とかカウントされてない。やつらは友達じゃないらしい。私自身、名前うろ覚えで顔も思い出せないけど。
【顔と名前に見覚えがある、くらいに認識されることを目安にしてください。だいたい一致すれば大丈夫でしょう】
「べつに友達にならなくてもいいんですね。よかった!!」
よくねーよ。来世でも孤独な生を送るつもりか。
そもそもスキルに使用制限があったらチート感ないんだけれども!
【それでは。ゴッドブレスユー】
目が覚めてみれば森の中だ。
右を見て森、左を見て山、空を見て白昼に白い双子の月。ここはどこかの丘の中心。
どうやら本当に異世界だった。
「ザッケンナコラー!」
私の産声は罵声でした。
「まだ話は終わってないやろがい! スキル無制限にしろやぁ!!」
青空に叫んでもなにも起こらない。
おのれ理不尽の化身め。
しかし、あまり噛みついて奇跡や転移を取り消されたら死に損だ。仕方がない。
このまま強く生きていこう。
「それにしても声が変……あれ? 髪も赤い。っていうか長い」
後ろ髪が後頭部でくくられて、長くバサーっと伸びている。うっかりすると地面につきそうなくらいだ。
見れば服も違っているし、手足の肌もハリツヤのある柔らかなもの。
顔をなでてみる。
なんか目鼻立ちクッキリしてる気がする。
「これは美少女の気配……私、美少女になっているのでは!!」
鏡で見てみたい! 街はどっちだ?
「……おろ? 誰かいる」
蒼い髪の幼女が丘の端から私を見ていることに気づいた。
騒ぐ私に驚いている。
私は、後で絶対に後悔するタイプのテンションになっていた。にこやかに手を振り駆け寄っていった。
「こんにちは! あの私記憶喪失なんですけどこの世界のこと教え」
「がぶ」
「てくれませィいいッた!!(HP-5) え、痛い!?」
幼女が私の手に噛みついた。
意味の分からなさに混乱する。その間にも幼女のお口は歯を私の腕に食い込ませてくる。
万力みたいに圧力が痛い!
「えっえーとお腹空いてるの?(HP-5)いッた! そ、それじゃあ狩りにでも行こっか~(HP-5)オウフッ! ちょ、痛い痛い痛いって待って(HP-5)イミフッ! っていうかHP-5ってなに! 私の最大HPはなんだよ!?」
と疑問に思った瞬間。
それは例えば、映画の音楽を聴いたら映画のワンカットが頭の中に浮かんでくるみたいに。
私の脳裏に直観された。
HP 9/34
「死にかけてる!!!」
幼女はなにか達観したような目で、無心に私の手にゴリゴリと歯を立てている。
(痛すぎてシャレにならないんやが!!)
引き剥がそうと幼女の顎に手をかけて「んがぶ」ゆッびィ――!!?
「ヤバイこれ死ぬ(HP-5)オオアオ!! くそ、なりふり構ってる場合じゃない……!」
体の底から重要なものが溶け落ちていくヤバさには覚えがある。
まさに生前、トラックにはねられて死にゆく感覚と同じやつ!!
私は死にかけていた。
もう選択肢はない。
(女神のチートスキル、信じてるからね!)
「《身体強化》――っ!!」
きぃん、と耳鳴りがする。
同時に私の腕の痛みが引いていった。
私の柔肌が幼女の歯を押し返している!
「ぃよし、これなら……!」
小さい口から手を引き抜き、「がちん」と空中で噛み鳴らされる幼女の歯。
殺意が高すぎて殺されそう。
お腹空かせすぎでしょ。
私はとっさに、おやつ兼非常食のビーフジャーキーを取り出した。コンビニで買ったばかりの新品。私がトラックにはねられる遠因となったいわくつき。
燻製肉の香りに幼女がピクリと反応した。
「取ってこーい!」
「ばうわう!」
投げた。
幼女はジャーキーを追った。
その隙に私は逃げ切った。
私は生き延びた……!
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