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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
堕ちた星降る町編

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町を護るもの

「さぁ皆さん教えてくださいな。何故貴方達がこんなところで管を巻いて腐っているのかを」


 ラティはギルドの真ん中に立ちそう呼びかける。だけど当然返事は無い。


「まぁ喋らないなら喋るまでお待ちしますわよ? 私たちは何も焦らない」


 言い終わった後、静寂が訪れる前に皆体をビクッとさせる。まるで蛇に睨まれた雛のようだ。確かにラティは元は竜だけど。迫力が前以上、いや押さえが利かないほどエネルギーが溢れているのかな。この圧に人間はどれくらい耐えられるのだろう。怖いもの見たさで僕は何も言わず辺りを見回しながらのんびりする。カウンターで顔を半分出している受付嬢からSOSの視線を受けてるが当然無視。


「随分と盛り上がっておるなぁ」


 結構長い時間静寂は続き、僕はラティに椅子を持ってきて僕も隣に座る。中には気を失い突っ伏す人まで出て来た。凄いなぁ何がここまでさせるんだろう。話すとやられてしまうのだろうか。


「あら、今日は店仕舞いですわよ? 最も元から機能してなかったようなので開いてすらいなかったんですけどね」


 その人物は入り口から巨体を揺らしながら入ってきた。浴衣の様な柄の着物を着てその胸元は鍛えられた胸板が隠しきれていない。眉毛は太く目も鋭い。長い髪は頭のてっぺんで纏めて結わいている。


「はっは! それは仕方ない。彼らは私に操を立ててくれていたのだからな」

「冒険者なのに操? でしたら正式に取り立てて上げれば宜しいのにそれすらせず都合の良い話ですわね」


「おーいキャル、ワシにも酒を」


 受付嬢はキャルというのか、素早く立ち上がるも棒立ちで目を見開いている。この間も続々と冒険者は気を失うものが増えていく。


「ボトルとかありますか?」

「ん? ああ悪いな、そこの紫のだ。コップを二つくれると助かる」


 僕はカウンターまで行きその人に問いかけると、気さくに答えてくれた。言われた通りにすると、近くのテーブルにそれを置く。ビンのコルクを引き抜いて、コップになみなみと透明な液体を注いだ。


「君はいける口か?」

「強くは無いですが、冒険者の付き合いがありますから」


 そう答えると向かいに座るよう促され、開いた席に向かい合って座るとコップを一つ渡されコップを合わせて掲げると、一気に飲み干す。めちゃくちゃ胃にくる。元の世界じゃ御酒なんて殆ど飲んだ記憶が無い。こっちに来てからほぼ付き合いで警備隊の皆と酌み交わしたり、仕事終わりに知り合いの冒険者と少し飲んだくらいだ。ジュースの方がまだ美味しい。


「はっは! 御主は正直だな。まだ美味しさを知らんようだ」

「そうですね。失うものが多く無力感に苛まれる出来事がまだ無くて」


 少し微笑みながら言う。ラティの圧を物ともせず思うまま振舞える強さ。この町に居るとすれば今の頭首しかないと思う。


「分かるか」

「恐らく欠片も。ただどういう時に自分なら飲むかなと考えたら」


 今は順調に着てる。でもそうじゃない時も来るかも知れない。そうなればこの苦さと胃を焼くような液体も好んで飲みたくなるんだろうなと思う。


「本当に正直な奴だ。父上が気に入るのも分かる。だがそれでは冒険者としては大変だろう?」

「まだ駆け出しですから」


 再度コップに注がれる。今度は相手も少し口にし味わうように中で漂わせた後飲み込んだ。それに僕も真似てしてみる。御米の味がとても分かる。


「御主はどうしたい?」

「あの石に近付きたいんですよ。もうここまで来てそれを無しには帰れない。何しろ皆さんあからさまに怪しいぞって態度をしてくるし、それに」


「それに?」

「鬼を見ました。相対して分かったんですが、あの子は苦しんでいる。想像ですが体の中にある自分のものでない何かが増殖し乗っ取られまいと抵抗している、そんな気がします。だからこそ石に近付き確かめたい。何の目的でそんな真似をしているのかを」


「あの石には意思がある、と?」

「石というより中でしょうね。僕はああいう手合いと以前相対したんで」


 記憶の欠片が蘇る。自ら心を砕き復讐に燃えた者、閉じこもる為強固な迷路を築いた者、そして楔を打たれ役目を奪われ憎しみを別の者たちに向けた者。引き篭もりが言うのもなんだけど、いや引き篭もりだからこそ言えるのかもしれないけど、経験てホント大切な財産だ。どんな形でも経験をするだけでプラスしかない気がする。


「御主がそれに犯されないという保障は?」

「そうだと信じています」


 僕の答えに頭首は口を大きく開けて笑った。笑顔でそれを見る。豪快な人だなぁ。サクラダの欠片も見えないんだけど、親子じゃないのかな。


「良かろう。そこまで行けば最早御主を犯せるものなど神以外おらんだろうよ」

「じゃあ」


「ただしな、我らにも面子はある。この土地を代々受け継ぎ護ってきた。それが納得がいかない言い伝えであったとしても、だ」


 コップを置き神妙な面持ちで見られたので僕も姿勢を正しそれに答える。


「なるほど良い戦士だ。息子の知人と聞いていたがあれにも人を見る目があるらしい」


 苦笑いしてそれに答えた。水を差すのも悪いと思って。


「明日の朝、神社に来てくれ」


 そう言って一気にコップの御酒を飲み干すと、手を合わせて一礼し席を立った。僕も席を立ちギルドの入り口まで見送る。そして向き直り互いに一礼し別れた。


「お兄様」

「悪いねラティ、美味しいところもってっちゃって」


 ラティは顔を横に振る。そして手を取り共にその場を離れる。明日は強敵と立ち会う。この世界に来て師匠やヤグラさんに近いレベルの人と手加減無しにやり合う。そう思うと体が震える。

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