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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
堕ちた星降る町編

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ラティの補給とか……

「酷い!」


 叫びながら上半身を起こす。どうせ元に戻されてるだろうから抗議の意味は無いけど言わずには居られなかった。この世界に来てから嫌がらせのオンパレードで慣れたとは言え、黙って受け入れるとなればあのドSガンガンやってきそうなので抗議はしておくべきだ。いつか見返さないと死なないのに命が危ない!


「お、お兄様?」


 隣で寝ていたラティはこちらを向いて声を掛けてくれた。


「あ、ああごめん大丈夫」


 駄女神が余計な言葉を掛けるから妙な感じになる。僕は誤魔化すべくラティの御凸に手を当ててじっとしておく。ラティはこの世界の大事な相棒だ。僕が最初に傷付けたのもあるけど責任とかじゃなく、この良く分からない世界で今や唯一心から頼れる存在となっているから一緒に居たいと思っている。


……何だか変な話をしているかもしれない。これもあれもあの駄女神の所為なのは間違いない。イライラする……。


「お兄様、大丈夫ですから」


 ラティが僕の手に手を重ねてきたのでビクッとしてしまう。


「あ、ごめん」


 ごめんが多いんじゃ、と自分に突っ込みつつゆっくり手をどける。いかんぞ意識しすぎるなよ? と自分に念じつつラティに視線を向けるとなんだか熱っぽい視線を向けられていた。いやいやいや勘違いだよこれは。二十年間女性に免疫が無いからきっとその所為でそう見えるに違いない。きっと熱があるんだよ。


「えーっとそのぅ……大丈夫?」

「ええ……」


 あー何か引き寄せられる……。頭の中であの駄女神が煽っているのが気のせいであって欲しい、でも気のせいではないだろう。何か僕らの意思だけではないものが介在している気がする。


「ラティ!?」


 僕の唇とラティの唇が触れた瞬間、強い輝きが放たれ部屋を覆う。ラティの髪は揺らめき神々しささえ感じた。これは一体!?


「あんでまぁ」


 タイミング良く御婆さんが襖を開けて現れた! 見たていたな!?


「凄いのぉ手で触るぐらいが精精だと思ってたのに、一日でなぁ」

 

 ヤグラさんまで現れる始末。


「ちょっとヤグラさんまで何を!」

「朝からお楽しみでしたか?」


 ムカつくわ……御年寄りで達人じゃなければ湯畑に放り投げてやったのに。


「おぉおぉ流石ゴールドまで届きそうな御方は朝から激しいこって」


 恐らく僕はこの町に来てこの時この瞬間最大の速さで人を空へ向かって投げた。一応現時点で階級は上だし年上だろうから容赦する必要は無い。


「屋根、直してけな」

「飛んでったサクラダに付けておいてください。それよりこれは」


 ラティの方を見ると、さっきまで放っていた光はラティの体へ吸い込まれて行き消えた。


「まぁまぁそんな感じよ」

「どんな感じ!?」


 なんか良かった良かったみたいな雰囲気で僕以外が頷いてるけど何一つ理解してないんだけども!


「さぁさ、朝飯を食うべ。そっちのエネルギーの補給もしないとなぁ?」


 ゲスい笑い方をするヤグラ夫妻。最初と違う! そう突っ込もうとしたけど僕以外部屋から出て行ってしまい、消化不良な僕だけが残された。結局何の説明も無く朝御飯を食べ宿を追い出された。何でも清掃とかしないといけないから邪魔らしい。朝の稽古も無しだったし納得がいかない。


「こんちわー」


 ラティは全く気にしてない顔で横に居る。……まぁ良いんだけどさ、うん。


「アンタまだここに居たの!?」


 金髪癖毛そばかすが印象的な受付嬢。はねっかえり感満載の女性が気だるそうにカウンターに肘を着いて片手で本を捲っていた。僕が声を掛けると驚いて立ち上がり距離を取られる。何なんだろう一体。


「居ましたよ。ヤグラさんの宿に泊まってます。それよりちょっと聞きたい話が」

「ヤ、ヤグラ様の御宅に!? アンタ何者なのよ! こっちこないで!」


 ……わしゃ化け物かい。恐ろしい者を見るような目でこちらをみる受付嬢。ここ冒険者ギルドなんだよね? 間違えてるのかな。


「おいあんたら」


 声に振り向くと、そこらに居た冒険者が群れを成して居た。


「何か?」

「この町の話はこの町で始まって終わる。自分のギルドへ帰れ」


「終わってないから来たんですよ。ちなみにどうやって終わらせる気ですか? ただ頭首の家の人間が死んでいくのが繰り返されるだけで、貴方達の安全が保障されるだけでしょ?」

「余所者には関係ないんだよ」


「今はまだ良いでしょうけど、外にまで広がったら誰が責任を取るんです? 貴方達真っ先に逃げる人間じゃないですか?」

「なんでそう言えるんだ!」


「こんなところに昼間から屯して余所者に絡むしか能が無いから」

「やっちまえ!」


 図星だったのか凄い形相で襲い掛かってきた。丁度イライラしてたから暴れたいところだった!


「え?」


 風を巻いて踊るように屯してた冒険者をちぎっては投げを繰り返しあっという間に終わってしまった。


「どうです? まだやりますの?」


 ラティ凄い。このラティには流石に舌を巻く。僕もあっさり処理されそうだ。


「ち、ちくしょう! 覚えてやがれ!」

「待ちなさい。話が聞きたいんですのよ。そこへ座りなさいな」


 逃げようとした冒険者たちはラティの迫力に負けすごすごとギルドの中にある席に着く。


「そこの貴女、この方々にお酒でも出してくださいな」


 受付嬢は壁に張り付きながら頷くと、逃げるように奥へと消えた。暫くするとジョッキを抱えて戻ってきて、各人に迅速に配り終えるとカウンターの陰に隠れた。お酒の席なのに御通夜というか何というか。これ悪い酔いするよ確実に。

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