ボウガンvs竜
目の前に何回目かの死が訪れてようとしている。自分が死んでお爺さんが甦るなら嬉しい。誰も死なず終わるよう次生き返った時には逆の方向に行こう。それなら問題無いはずだ。
そう思いながらきっとそうはならないだろうと言う予感がしていた。多分別の方向に行けば行ったで強化ミミズは出てくるだろうし、フクイラプトルもどきに代わる何かが出てくる。
お爺さんに代わって違う人、黒鎧達かまた別の何か。あまり言いたくはないがこれは宿命なのだろう女神による。何が何でもここはイベントが発生し結果も決まっていると。
「やっぱヤダなぁ分かりたくないなぁ」
誰かの気に入るように動かなければ僕は殺されて戻されるその繰り返し。そんなものは気に入る人間を僕のように強制的にここに連れて来てやれば良いじゃないかとは思ったものの、あのサディストらしいと言えばらしい人選だよなぁとも思う。
改めて不条理を感じ憤るも成す術は無い。ただこのまま死んでやる理由もない。予想通り無力なまま無残に殺されるつもりももうない。
あの黒鎧をもう殺す気にはならないけどこの状況であのクソ女神が予想していない行動を取る。そうでなきゃ死にきれるもんじゃない。
頼るのがアイツから貰った武器で戦うなんて癪だなぁ……そう思いながら周りを見るとあるのは巨体二つに、お爺さんだった跡……胸を締め付けられる。
「ならっ!」
僕は走りだす。本当は近付くのは厳しかったが、どうせ戦って死ぬなら今はこれが良いと思った。
僕は手を合わせて一礼する。そして血にまみれたお爺さんが持っていた武器を手に取りお爺さんの持っていた武器を見る。
弾を装填するレバーと片手で弦を引く仕様のようで大きめのボウガンのようだ。僕で片手で出来るんだろうか、両手で引いてみようか。
初めて触るので色々試行錯誤しながら改めて竜の方へボウガンを向ける。スコープは無いから勘で打つしかない。
竜はこちらへ向かって歩きながら移動を始めている。なるほど。餌ならここにあるってことか。
「ごめんよ……」
僕はお爺さんだった物に置いて行かなければならないので謝罪しつつ武器を右肩に担ぎ場を離れた。迎え撃つなら当たる。だけど確実に死ぬ。
だがそれだけじゃダメだ。死ぬなら確実にアイツも道連れにしないと。僕は可能な限り距離を取る。竜は先ず大きい獲物に向かっていった。
確実に捕食出来る方が先となるとお腹減ってるんだろうか。そんな考えをしつつ大ボウガンを砂の上に置き、弦の張りや弾の確認をしてみる。
弾というか矢尻がネジの様に渦を巻き先端で尖るように細工が施されていた。放つ際に捻りを加えて放たれた矢は空気抵抗を受け更に回転し速度を増して刺さるようにしているような気がする。
砂の上に座り足で大ボウガンを固定する。恐らく衝撃が凄いだろうし一発撃ったら次撃つ為に照準を直ぐに合わせたいからずれない様にしっかりと太股で挟みつつ脚先で掛かる所にしっかり掛けた。
狙うなら目、腹、関節、口内。ここ以外は竜なら矢が通る筈がない。全体に硬く外骨格なのかと思う強度だと考えられるからだ。ならこの四つのポイントを抑えるしかない。
丁度今風は今止んでいる。あとは大ボウガンの発射時の衝撃でどれだけずれるのか、また飛んでいく矢がどの程度の距離から落ちていくのか。一発撃って感触を掴んで二発目で修正するしかない。
「やるしかない!」
僕は自分に気合を入れて弦を両手で思いっきり自分の胸のあたりまで引く。当たるまでの距離や落下の感じ、当たったポイントや刺さったかどうか、しっかり見て記憶しろと自分に言い聞かせ集中力を高める。
「いけぇ!!」
僕は獲物に口をつける瞬間の竜の目を狙って、手を離す。パン! という音と共に弾が弾け飛んでいく。
「ぐぉあああああ!」
相手も動く、というのを忘れ僕は自分の事だけを考えてしまった。相手あっての自分だ。僕は頭を振ってずれた距離を見た。目より斜め右下、目と口の端の間の所。
即座に第二射の準備にかかる。レバーをしっかりと引きガチッという音を聞いて装填されたのを確認。思いっきり弦を引く。
竜は咆哮を上げながらこちらを威嚇している。ずれたのは右下に。なら右斜め上を狙う感じで行く。反動でずれたと思う。
風もないし何より真っ直ぐ飛んで行った。専門家じゃないから解らないが、それを信じて撃つしかない。
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