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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
堕ちた星降る町編

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星降りの町その四

「わぁ! 美味しそう!」


 着替えてから再度降りて調理場の方へ行くと、ラティの声が聞こえた。見てみると、御婆さんのように三角巾を付けて並んで料理をしているようだった。そんなに持ち込んだものは豪華なものじゃ無かったはずだけど。


「今日丁度漬け上がった野菜達に、鳥の卵を茹でた物を殻を取って切った物、それに干し肉を刻んでからといた卵に野菜を混ぜて更に保存してた肉を焼いた物、それにパン。これが冬の朝食だべ。そんかわし夜は少な目だけんどな」

「野宿で食べたのは簡素なものでしたからやはり暖かい食べ物の有り難味を感じますわね……」


 野宿の時に食べたのは一食だけだったけど、干し肉に冷めたパンを齧っただけ。量を食べない代わりに味などに対して拘りの強いラティらしく、ここに着いた時は心なしか元気が無いように見えた。


「それとアンタはこれだ」


 御婆さんは引き戸の棚からコップを一つ取り出した。見た感じただの水っぽいけど。


「なんですの?」

「いいから」


 言われて口に含むも直ぐに飲み込まず含んだままにしていると、段々と顔が歪んで来た。それをみて御婆さん、すぅっと動いてラティの首を優しく撫でるとラティは驚き飲み込んだそして咽る。


「こ、これなんですの!? 苦いし粘度が高いし」

「ん? 薬」


「薬なんて」

「必要だべ? そんな体で無理してると保てなくなる」


 その言葉に僕は息を呑む。御婆さん一体何者なんだ? ラティが何か見抜いているんだろうか。


「効果はありますの?」

「さぁな。でもおめぇも分かってると思うけど繋がないと大変だぞ? 体積が大きいのを無理やり凝縮してるのと同じだ。押さえ込む力が無くなればばくはつしちまう。ならどうするか、体積を別のものに置き換えて使えばいい」


「貴女は一体……」

「おい婆さん、腹が減って死ぬんだが……」


 調理場に御爺さんが顔を出すと、料理を運ぶように言われラティと二人で運ぶ。その後一緒に食卓を囲んだので色々訊ねようとしたけど、食事中に喋るなと一喝され黙って感謝をしつつ一生懸命噛んで食事を終えた。片付けが終わったので話を聞こうとするも、何故か僕だけ追い出される。夕方まで帰って来るなと御婆さんに言われ、釈然としないものの取り合えず初めての街を散策し始めた。


 町は今シーズンオフっていうのが分かりやすい感じで活気が無い。雪解け以降観光地として賑やかになるんだろうなぁっていう感じで、のぼりが店先に並んでいる。町の中央には湯畑がありこの町が冬なのに過ごしやすいのは温泉があちこちに沸いているからかなぁと思った。


「よぉ」


 湯畑をぼーっと眺めていると、また余計なのが近付いてきた、と何時もなら思うけど今回は違う。


「流石僕のストーカー。ちゃんと見つけてくれましたね」

「よく言うぜあんな分かり易い寄せをされたらな」


 散策途中に神社への階段を見つけて立ち止まり、気配を感じるまでそこに居た後ここへ移動してきた。他にも神社へ至る階段はあったけど、あそこだけ商店街の隙間から行くようになっていて地元の人間じゃなきゃ近寄らなさそうなところだった。


「見つけちゃったんでね。それに森で遭遇したのが何なのか聞いておこうかと思って」


 僕の言葉にサクラダは険しい顔をする。まぁ知らぬ存ぜぬは出来ないだろうし、あれがここの関係であるのは間違いないと思う。御婆さんたちの服装を見れば地元の人間だろうと分かるし、高そうな着物だったので一般ではないのも分かる。


「ギルド長からは様子を見て来いって話だろう?」

「調査依頼。運が悪かったねぇサクラダさん。僕もあれと遭遇しなければ黙って帰ったかもしれないのに」


「嘘付け。その顔はあの石に触れるまで絶対に帰らないって顔だぞ?」

「今は、ね」


 遠くから見ても隕石は大きく、町のどこから見上げても見えるほどだ。僕は何かあの物体には違和感を感じている。ただの隕石じゃない。いまいち記憶がはっきりしないけど、ここじゃないところで感じた敵の感覚に似ている。そう……なんだっけな……場を生成する……。

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