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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
堕ちた星降る町編

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星降りの町その三

「おはようございます!」


 次の日、自然と明け方目が覚めた僕は早過ぎたかもと思いつつ、ゆっくりと下へと降りて行くと宿の入り口は開いていて御婆さんが掃き掃除をしてた。


「あんでま、早いねぇ若いのに」

「そうでもないっす。師匠との稽古も大体これくらいから起きて体を解してるんで。あ、それ代わります」


「あんたは客なんだから気にしねぇでゆっくりしてろ」

「いいからいいから」


 ほうきの柄の上の方を持ち笑顔で粘っていると、諦めて溜め息一つ吐いた後交代してくれた。当然考え合っての掃き掃除だ。何もしなかったら米粒一つ得られないのはこの世界に来て学んだ。教えて欲しいなら先ず自分から行動しないと。


「おめ、何やってんだ?」


 丁寧に葉っぱ一つ残さずそしてチンタラやらずに履き掃除をしていると、僕たちが町の入り口からここまで来た方角から御爺さんが来た。手拭を頭を覆うようにして顎で結び、下は袴で背中に籠をしょっていた。


「お、お疲れ様です!」

「人の話、聞いてっか?」


 駆け寄って籠を持とうとすると、昨日と同じように倒されてしまう。ひょっとすると師匠も本気を出すとこれくらいの速度で僕を投げられるのかもしれない。


「にーちゃん、にやにやすんな気持ち悪い」

「すみませんつい……」


 倒されながら後頭部を掻きつつ笑顔で謝ると、溜め息を吐かれながら手を差し出されてそれを掴んで起き上がる。


「で、何してんだ?」

「御婆さんのお手伝いです! 師匠との鍛錬が無いので今日はそこに当てようかと……」


 素直に答えると、答えている途中で中に入ろうとするので急いで追いかける。


「着いて来なくてええぞ」

「お手伝いします!」


「まだ掃き掃除、半端だ。前とうちの脇、それに裏のちっちゃい庭も」

「もう終わってます!」


 何とか手伝おうと籠を持ち上げようとするも、引きずられながら奥へと進みつつ会話していた。本当かどうか確認する為、一旦外へ出て見回る。唸り声を上げる御爺さん。


「どうです? 嘘じゃないでしょ!? こうみえてもうちの地元の神社の掃き掃除を爺さんに言われてやってたんですから。”引き篭もりならそれくらいしろ!”ってね」


 自慢にもならない自慢をすると、お手上げだと言うように掌を空に向けて上げた。そして籠を下ろしてくれたのでそれを抱えて後に続く。


「あんれま、爺さん珍しいね? どこか痛いのかい?」


 奥の調理場に入ると御婆さんが三角巾のような感じでカラフルな布で髪の毛を覆うように包み、襷がけをしながら何かをテーブルの上でこねていた。


「ぼ、僕がお願いしてお手伝いさせて頂きました! 勿論掃き掃除も完璧」


 そう笑顔で御婆さんに言うと、目を丸くした後ケラケラと笑った。


「いやいやこりゃ大変だ。明日は雪かね」

「やかましいわ。それより風呂に居っからな」


 籠を御婆さんの近くに置くように、そして付いて来いと言われ調理場にあった扉から外に出ると、そこは露天風呂のようになっていて水が張られていた。


「俺を投げてみろ」

「え?」


 二度も言わないと首を横に降る御爺さん。僕も二度目は聞かずに御爺さんに近付く。その間に二回くらい背中がぴりぴりしたけど、御爺さんの着物の襟を掴んだ。


「どうだった?」

「二回」


 うちの師匠のように懇切丁寧に聞かない人なんだろうな、と思ってそう答えた。背中のぴりぴりは恐らく御爺さんの間合いに入ったのを感じた僕の感覚が体で反応したんだろう。


「良いぞ」


 そう言われたので何とか態勢を崩して投げようと試みるも、全く崩れない。踏ん張ってる訳でもなくダンスするように僕の動きに合わせて動いている。


「ふん」


 鼻でもかむ様な感じで鼻息を一つ。僕は身構えていたのに気付けば張られた水の中。急いで自ら顔を出す。


「あれ……」


 御爺さんはその場には居らず、白いタオルだけが置かれていた。一体何なんだ……襟を掴んで屈んでいて且つ重心は低く身構えていたのに。今度は余計な動きをしないでみようかな。


「無駄だぞ。じっとしてるだけでも数秒後にはここだ」


 振り返ると朝から嫌なものが視界に入る。昨日投げ飛ばされたんじゃないのか?


「これはこれはサクラダ様。朝からこんな古びた宿に何用で?」


 縁で腕を組んで立っていたサクラダは足で僕の頭を踏もうとしたので避けて、その足を掴んで引きずり込もうとしてみた。しかし敵もさるもの。そう簡単には掴まらない。


「おめぇらうっせえぞ!」


 暫くやりあっていると、御婆さんが出てきて一喝された。サクラダは逃げて取り残された僕はしょんぼりしながら謝り水から出て部屋で着替えた。

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