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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
堕ちた星降る町編

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星降りの町その二

「いよぅ坊ちゃんいらっしゃい」

「御婆さん部屋チェンジで」


 引き戸を開けて中に入ると、見たくも無い顔が窓の縁に腰掛けてこちらに向かって手を振っていた。


「あ?」

「もしくはあの部屋備え付けのおっさんを処分して欲しいんだけど」


 僕が部屋備え付けのおっさんを指差すと、御婆さんは首を傾げる。


「おいおい酷いじゃないか冒険者の先輩であり仲良しな俺を置いていくなんてさ」

「先輩であるのは嫌々認めても仲良くは無い」


「疲れてやっと泊まれたのに忌み者まで居るとは……」


 急に御婆さんは声をあげて笑う。僕とラティは目を丸くして距離を取る。


「あんでまぁおめぇたちに掛かればあの子も部屋備え付けの忌み者たぁねぇ。余所者を羨ましいと思ったのは初めてかもしんねぇなぁ」


 一頻り笑った後、溜め息を一つ吐いて寂しそうに笑う御婆さん。この町の一族についての話は御婆さんは知りたくもない話も知っているんだろう。


「何でこんな時期に余所者がと思ったけど、なるほど天啓かもしらんなぁ。あの石に触れる時が来たのかも知れん」

「あの石に触れるって……今まで石には誰も」


「そこまでだ」


 御婆さんが話そうとした瞬間、サクラダが遮りこちらに向かって歩いてくる。


「今アンタに話は無い」

「俺はあるんだよ小僧。余計な真似はするなここを立ち去れ。シルバーになりたいんであれば、俺が推挙してやる」


 僕はそれを聞いて少し吹いてしまった。睨むサクラダに咳払いをして言葉を返す。


「悪いけどアンタに推挙してもらう必要は無い。師匠のお使いでもあるし、アンタには関係ないんだよサクラダさん」

「良い度胸だな新進気鋭か何か知らないが、シルバーランクの俺に敵うと思っているのか?」


「敵うから試験を受けてるつもりさ。こっちにもやらなきゃならない事情がある。足踏みを不必要にするつもりは無い」


 そう言い終えた後、サクラダを睨み返す。相手が動いたら倍の速度で動けるよう体全体に気を通す。師匠の代名詞じゃないけど、一撃で仕留めなければこの距離じゃこっちがやられる。


「おいおい随分と騒がしいじゃねぇか、もう夜だぞ夜」


 僕らの後ろから初めて聞く声がする。御婆さんの旦那さんだろうけど、今はサクラダから目を離す訳には行かない。


「アンタには仮がある。まとめてここで返してやっても良いんだぜ?」

「言うじゃねぇか。倍返しだ」


 サクラダの体が動いた! 僕はそれを感じて一撃叩き込むべく動作に入る。


「話、聞いてっか?」

「……え? はい?」


 目の前には長い白髪をオールバックにし口髭顎鬚も長く、赤いちゃんちゃんこに下は茶色の着物を着た目の細い御爺さんと天井が見えた。


「はい? じゃねぇんだ。今は夜で寝る時間だ。やるなら明日の朝にでもやりな。ジジイは夜早いんだから寝てぇのよ」

「す、すいません」


 手を引かれ起こされて、右手で後頭部を押さえながら頭を下げる。視線を横に向けるとサクラダが腰掛けていた窓が壊れて居るし、サクラダが居ない。


「あ、あの!」

「なんだよでけぇ声だすなよにーちゃん」


「是非、稽古を付けて頂きたいんです! お願いします!」


 これは凄い人が居た! そう思って畳っぽい草で編んだものを使っている床に正座して頭を下げた。


「声がでけぇんだよなにーちゃんは」

「是非!」


「……おらそこらのジジイだけど、朝早いから」


 それだけ言って外へ出て行く音がした。僕は残念だなぁと思いながら頭を上げ立ち上がる。


「この子の師匠ってだれだべ」

「ああデラウンのギルド長ですわ。古い異名では”一撃”の名で知られていましたの」


「ああ! ショウちゃんか! ワシらもうこの町から出ないもんで外に疎くてねぇ……そうかいそうかい、ショウちゃんが今やギルド長ねぇ」


 ラティにギルド長の話を聞くと、御婆さんは目を丸くして驚き懐かしそうに言った。


「御婆さんは師匠をご存知なんですね!? 是非話を聞かせてください!」

「人の昔の話を言って回るのは好きじゃないんでねぇ。弟子なら尚のこと、自分の口から話したいなら話すだろうし、アンタもめったなこと言うもんじゃないよ?」


 しょぼんとする僕を他所に、御婆さんとラティは布団やらお茶やらを部屋に運び入れ始める。僕も急いで手伝いその日は就寝した。


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