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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
堕ちた星降る町編

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鳥と鬼

「マジか」


 暫く山道を下って行くと前方に黒い点が列を成して動いていた。そして真ん中には何かを捕らえたのか籠が見える。


「お兄様、雪の中に」


 ラティに促され、雪を掻いて穴を作って入り下を見る。腰に付けた望遠鏡で覗き込むと同じデザインの黒い鎧を着た集団だった。となると


「来ましたわ」


 見上げるまでも無く前方の雪には大きな黒い影が。その直後疾風が駆け抜ける。


「どうします?」

「勿論」


 ラティの問いに笑顔で答え即座に背中のボウガンを下ろし雪の上に設置し構える。数十秒後、黒鎧の集団に巨大ワシが襲い掛かる。視線がそれに集中した瞬間、弦を引いた後直ぐに装填し弦を引く。


「お見事」


 籠の上部に一発、更に黒鎧たちが巨大ワシに退治する為動き空いた右横に一発。巨大ワシの羽ばたきにより巻き起こった風が籠を倒し、中から小さいワシが出てきた。黒鎧たちは籠が壊れた音に驚き振り向いた瞬間、巨大ワシが襲い掛かり数名がその足と口に捕まり上昇し上空で開放。雪の上に落ちるかと思ったけど、巨大ワシの羽ばたきと滑空により巻き起こった風に乗って更に下へと飛ばされた。


その様を見て黒鎧たちは散り散りになって逃げ始める。僕はボウガンを仕舞ってラティと穴からその後の様子をじっと見ていた。これ以上手出しをするとこっちが双方に睨まれるだろうし、巨大ワシなら後は自分で出来るだろうとも思った。


 暫くすると黒鎧たちは一人も居なくなり、巨大ワシは子供を回収するとこちらに向かって飛んできた。そして穴の上を通る時、視線だけこちらに一瞬向けて去っていく。一応警戒して二人で空を見上げながらゆっくりとした時を過ごして下山を再開。何とか深夜前には山を降りきった。川の近くでテントを張り遅めの夕食を取る。川には魚が居たけど、ここの辺りの生態は分からないので取らずに持ってきた物で済ませた。


 木々の隙間から見える夜空には星が綺麗に映る。電気が無いってのはこんなにも自然を美しく見せるものなのかとちょっと感動している。それにこんなにのんびりとした気持ちで夜空を眺めるのは初めてな気もした。


「まったく間の悪い」


 二人で他愛も無い話をしながら夜空を楽しんでいると、火の明かりに釣られたのか何かが先の方からこちらに向かって来ている。何か分からないうちはボウガンを打てない。ここはもううちのギルドの管轄から外れている。なるべく厄介な話を増やしたくは無い。師匠から頂いた篭手を改めてしっかりとはめて切り株から立ち上がり構える。ラティは後ろでパフィーさんの贈り物の鞭を構え援護の体態勢を取ってくれている。


「あれま」


 森から出てきたのは、白い袴に鮮やかな色合いの着物を着た……鬼だった。頭には二本の角、そして息を荒げ開いた口の中は尖った犬歯が二本伸び更に他の歯も尖っている。顔は血管が浮き上がりビキビキしていた。鬼、としか形容しがたい者がそこには居た。


 そして襲い来るその手の爪は長く伸びている。これで引っ掻かれたら大分抉られるに違いない。紙一重で小さく動いて避け、伸びた手を掴んで更に引いて地面に倒し即座に手を離し距離を取る。標的は僕じゃない気がしたけど、今は僕になったようで捕らえようとその爪を武器に迫ってくる。この素早い動きはヴァンパイアと同等かそれ以上かもしれない。風切り音が後から聞こえるだけでもその速さが分かる。避けているけど切り傷が増えている辺り完全回避とはいかないようだ。しかし元々鬼としてこの星に存在していたようにはその着ているものからして思えない。そうであるなら僕らでもない限り、その体が持たないんじゃないか?


「追います?」


 肩で息をし始めたと同時に後方に飛び退き去って行った。頭も切れるようだ。しかし何の目的でこんなところに居たんだ? 黒鎧でも狩りに来たんだろうか……。

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