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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
新領域を目指して~雪山区域~

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妹は解体士

「鬱陶しい……」


 ラティは目を据わらせ見下すようにリュクスさんを見ている怖い。それでも引かないリュクスさんも怖い。出来れば他所へ移動したいけど、何故かラティには布の服の裾を、リュクスさんには足を掴まれていて動けない。何してんのこの人たち。


「と、兎に角屯所に行けばいいんですよね? もし行って良くなかったら諦めて貰えますよね?」


 この状況怖いのでどうにかしようと移動する方向で提案してみる。リュクスさんは無表情のまま何度も頷き、ラティは蝿を掃う様に手を振った。二人の了承を得て屯所へ向かう。


「まぁそこに掛けなさいよピンクと康久さんでしたっけ?」


 前回の”絶対入るな!”の張り紙が剥がされた扉の奥へと入ると、そこは体育館位の広さになっていて大きなデスク以外は恐竜の骨や亀の甲羅のようなものが散乱していた。


「……何で前回のあれでこんなに態度が大きなままでいられるのかしら……」

「ま、まぁまぁ」


 明らかに歓迎してないと言ったようなボロボロの椅子が二つ用意されていた。ラティは当然座らず腕を組んで目の前に仁王立ち。僕は一応座るも直ぐに壊れた。それを見てケラケラと笑うセオリさん、ていうかセオリ。ちょっとでも同情したのが馬鹿みたいだ。


「いやぁ面白いね。それで僕らに話ってなにかなぁ?」


 ラティが間を詰めようとしたので割って入り話を切り出す。リュクスさんは小さくなり過ぎてこれ以上小さくなったら見えなくなりそうな感じになってる。


「貴方達が依頼で倒したものを町が引き取って売ってお金にしているのは知ってるわね?」

「全てではないけどそうだね」


 衛生上の問題もあって、ギルドと協力し恐竜などの討伐依頼に関しては獲物を引き取り解体して売っている。町の依頼は町の主導。その場合売り上げとして出たプラスは半分は冒険者に還元される場合が多い。


「それをやってるのは私よ」


 顎を突き上げ鼻を鳴らしてそう言った。なるほどこの娘は解剖医というか解体士なのか。


「だからどうしたんですの?」

「ふん馬鹿な女」


「あー! そうだね! そういう人が居てくれるからこそ、討伐した生き物たちを余す事なく生かせるし、人の生活にも寄与出来て僕らの生活も潤うんだね!」


 水と油みたいな関係というのを久しぶりに見る。爺さんとオヤジみたいな関係だなラティとセオリ。


「そうよ。貴方達に私達がスポンサーとなって成果を挙げて宣伝になれば、町の警備兵への信頼なんかも高まるわけ。それを狙っての話だから勘違いしないようにね」

「そ、そりゃどうも」


 ゴールポスト前のサイドバックのようにラティをマンツーマンディフェンスする僕。袖を引っ張られるだけでなく脇腹まで殴られてるところまで再現しないで欲しい。そしてリュクスさんはいい加減僕を助けて欲しい。


「今回の貴方達にしようと最後まで推したのは私なの、感謝しなさい?」

「あ、ありがとうございます……」


「何故私が貴方達にしたかというと、どうやら貴方達色々な人間に目を付けられているようだから変な生き物とも戦ったりするみたいだし。簡単に言うとその生き物を私に回しなさい」

「お断りしますわ」


 は、早い……! 早いよラティさん! 言い終わる前に喰い気味で拒否した。まぁそんなのは出来ないから当然なんだけど。その場合ギルドにお願いする相手を申請して、ギルドも町も承認しなきゃ出来ない相談だ。手続きも面倒で知り合いも居ないからしてこなかったし。


「貴方達は知らないかもしれないけど獲物を確認して討伐達成した場合、依頼主によっては確認だけで良い場合もあって、貴方達がギルドに任せているのを私を指名して」

「お断りしますわ」


 断固拒否と言わんばかりに話を切るラティ。今度は攻守が入れ替わったのかラティがマンツーマンディフェンスしてくる。何故か脇腹を掴まれて足を踏まれている。そしてリュクスさんは話が進むと思って一瞬近付いたのにまた部屋の隅に逃げたズルい。


「……指名してくれれば解体したものを商人に直接売れる。私はその資格もある。今までよりも儲かるわ」

「お断りしますわ」


「何よりその素材で新しいアイテムを生み出せたりすれば冒険にも役立つし」

「お断りしますわ」


 全く同じトーンで拒否するラティ。セオリは僕に話しかけようとするも、優秀なうちのセンターバックのガードに阻まれてどうしようもない。

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