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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
新領域を目指して~雪山区域~

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変わり者兄妹

「セオリ、隊長だけど……」


 何時もの凛々しく威厳と爽やかさを兼ね備えたリュクスさんは微塵もそこにはなく、弱ったお兄さんが居る。どんだけ妹に弱いんだお兄さん。


「そんな蚊の鳴くような声で聞こえますの?」

「み、耳は良い筈なんだけど……いや頭も良いんだ!」


「性格は極悪ですけどねぇ」


 ニヤリとするラティ。食べ物の恨みは相当深いんだなぁ。今後絶対にラティの食べ物にだけは手を付けないようにしようと神に誓った。


「本当に根性無しも良い所ですわ。お兄様にこんなに気を使ってもらっている上にご大層にこんな張り紙まで。更には謝るべき相手が出向いているのにろう城とは。冒険者どころか人間としてどうなんです?」


 フフンと鼻で笑いながら煽り全快で喋るラティ。流れ弾がすっごい来るから帰りたい気持ちで一杯なんだけどな……辛い。


「どれだけ頭が良かろうと優秀だろうと言葉が通じる相手とすら気を配れないようでは、動物にすら気を使われてそうですわね」


 言い終わった直後、ゆっくりと扉が開きそこからピンクのプレートアーマーが斧を引き摺って出てきた。明らかに着慣れてない上に力も無いので動きが可笑しい。


「なんですの? その無様な成りは」


 ぎこちない動きでラティに近付いて行くセオリアーマー。何故かリュクスさんが涙ぐんでるのが意味分からんし、どうしたもんかねこれ。ラティは一歩も動かず腰に手を当てて仁王立ち。


「ちぇすとぉおおお!」


 目の前まで来て一旦停止し、肩で息をして落ち着いた後、引き摺っていた斧を持ち上げようと奮闘。やっと背負い投げをするように斧を持ち上げるもラティはゆっくりと移動して空振り。更にセオリアーマーは何故か諦めず、もう一度離れたラティに近付き斧を持ち上げるべく奮闘し空振り。そして号泣のリュクスさん。


「よくやった……! よくやったぞセオリ……! お前は素晴らしい娘だ!」


 力尽きたセオリアーマーをひょいと抱えて扉の奥に消えていく警備隊長。僕らは唖然としてそれを見送るしかなく。


「何なんですの? これ」

「さぁ? 帰ろうかお腹空いたし」


 僕らは考えるのを止めてさっさと帰るべく外に出る。道中で兵たちも涙目だったのは記憶から消す。訳分からんこの屯所。



「おはよう二人とも!」


 昨日一日棒に振り翌日。ギルドの一階でテーブルを囲み二人で依頼を選んでいるところに、とても上機嫌な警備隊長が現れ僕らは辟易した顔で出迎える。それを無視して僕らの手を握り神にでも祈るように御凸に当てた後、二礼された。何なんだこれは。


「もう懲りてこないものだと思っていましたけど。気が済んだでしょ?」

「いやぁ二人の御蔭で妹がまた一つ成長出来た。ここに来て初めての出来事で君たちには感謝しかないよ」


「感謝してるなら帰ってくださいます? 私たち昨日の稼ぎゼロで今日稼がないと大変なんです」


 そうラティが言うと、リュクスさんは小さな袋をテーブルに先に紙を敷いて置いた。ラティはその袋の中を見て、小さく感嘆の声を上げる。そして僕にも見せる。中には銀貨十枚入っていた。紙を見ると”屯所の仕事代”と書いてある領収書だった。


「ま、まぁお仕事であったのなら問題ありませんわ? ねぇお兄様」


 僕は苦笑いしながら頷く。良く分からんけどラティの機嫌が良いならそれに越した話はない。


「で、改めて例の話を」

「まーだ諦めませんの?」


「勿論だよ。うちの屯所の者たちも是非ともお願いするべきだと今日も嘆願されたほどだよ!」


 何でだ。僕らはシルバーにもなってない上に新人冒険者なのにこんなに熱い人気があるとか可笑しいだろ。警備隊が冒険者のスポンサーとして付くってなると普通は制約が結構あるはずだって聞いたけど、前に聞いた程度の最小限のものしかないってギルドにも確認済みだし。これもチート能力ゆえなのかな……。


「兎に角改めて頼む。是非ともまた屯所に来てうちの妹と話して欲しいんだ」

「なんでまたあの面倒なのと」


「君らにも特になる話なんだ! 聞くだけでも聞いて欲しい! あの子優秀なんだよ問題あるけどさぁ!」


 しゃがんだ後一旦テーブル下に身を隠し、テーブルから顔半分だけ出して情けない声を出すリュクスさん。ホント妹の話になると全部捨て去って子供みたいになるなぁ。

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