以前の自分を叱られ反省する
「言葉も無い」
「彼女が僕らを呼びに来たのは例の防具の提供の件ですね?」
話を先に進めようとリュクスさんにそう振る。リュクスさんの話によると、妹のセオリは小さい頃から体が弱く本の虫で幼くして飛び級をして首都の学校に入学。そこで最先端技術を学び今帰って来ているらしい。この世界の学校は小さい頃に計算や言葉その土地の習慣や地理を学んだ後、必ず通うものでも資格ではないので、学びたいなら通うというもののようだ。
「都会ではああいうのが許されたらしい。考えるだけに集中して思いつくままに議論を交わし技術を磨いて」
「そうだなぁ首都の学校ってのは限られた人材のみを掻き集めた、言わば国家戦略の柱の一つ。そこに入れるってのは俺らみたいなのとは違うってこった」
マオルさんが呆れた様に言うと、マミさんがクスクスと口に手を当てて笑っていた。それを見てマオルさんは帽子を目深に被って椅子にもたれる様に深く座る。
「マオルさんとマミさんも選ばれたんですね」
そう尋ねるとマミさんはクスクス笑い続け、マオルさんは視線を上に向けた。
「康久は知らなかったのか? マオルさんとマミさんは自然学生態学の権威だ。今はこの地域を調べておられて、住む場所を探してらっしゃったのでここを町で提供しているんだ」
「タダで世話になるなんて虫唾が走るんでね。今の俺はこの放牧地の管理人。それ以上でもそれ以下でもない」
馬鹿馬鹿しいと言うように肩を窄めて言うマオルさん。権威だって言われても物凄い衝撃は無かった。元々色々お世話になってて尊敬してたからかな。
「出来ればセオリにもお二方のようになって欲しくて警備隊の仕事をさせてはいるんだが……」
また肩を落とすリュクスさん。なんだかとても気の毒になって来た。
「であれば、本人が直接謝りに来るべきではありませんか? そんな風に腫れ物に触るように扱っているから図に乗るのです! 自分の囲いの中でのみ動かして餌を与えて自由にさせるなど、およそ人に対する扱いではありませんわ!」
……何だろう僕を殴ってる訳ではないのだろうけど、胸がとても痛い。
「だが無理強いをするのも」
「では貴方が居ない時に大きな問題を起こした場合どうする気ですの? 周りの兵士に謝らせる? ご冗談を。そうなる前に経験させるのが本当の優しさです! ねぇお兄様?」
これは僕も謝るべきなんだろうな……いや本当に誤るべきは爺さんや婆ちゃんそれにオヤジ……はいいや別に。爺さんや婆ちゃんはここには居ないし……でも謝るべきだろうな。
「あ、はい……すいませんごめんなさい……」
「なんでお兄様が謝るんですの!? まったく誰も彼も」
ふん、と鼻息荒くそっぽを向くラティ。場の空気がとても可笑しな感じになっている。
「確かにラティの言う通りだと思うし、そうしたいのは山々だ。私としてもそこを分かっていないわけではないのだが……」
「いえ、出来るなら少し協力しますよ」
「あ、ありがとう……!」
涙目になりながら僕の手を握るリュクスさん。個人的にセオリさんの気持ちとか立場とか謝れないのとか痛いほど分かるので……自分を助ける感じで協力を申し出た。この世界に来なければ、ウルドさんに世話してもらわなきゃ僕は腐っていたに違いないし。今は皆のおかげでこうしていられるのは痛いほど良く分かっている。御裾分けというかんなんというか。
「……話が進まないのであれば多少は協力しますわ。ですがあくまで協力、それも少しです。そこを忘れて履き違えないように! 良いですわね?」
「「はい……」」
ラティの迫力に気圧される僕とリュクスさん。こうして僕らは山小屋を後にし、リュクスさんと共に警備隊の屯所に移動する。皆敬礼して迎えてくれるもやっぱり雰囲気が可笑しい。建物の中に入り、一階の奥へと進むと大きな扉があって紙に大きく”絶対入るな!”の文字。なんとなく誰のかは想像がついた。




