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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
新領域を目指して~雪山区域~

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警備隊長に装備のセールスを受ける

 何と言うか残当と言えばそうだなと思う。奴らは金に換えられるなら何でも良いし、仲間が捕まろうと大した問題ではないのだろう。と言うかそんなに金を集めて何をしたいんだ?


「やぁ、何やら面白い話題で盛り上がってるね」


 僕たちのテーブルに白銀のプレートアーマーが椅子を持って現れた。見上げるとサラサラ金髪ヘアのリュクスさんだ。


「あらあら町の警備隊長がギルドに何用で?」

「ん? 良いじゃないか偶にはさ。正直宮使いからすると冒険者は憧れの対象なんだ。知ってるかい? 康久が登場して若い奴らの中には冒険者になろうかって奴も出てきてさ」


「まるで英雄みたいだねぇ」

「可能性を感じるんだろうな。我々はあくまで税金で装備を揃えてそれこそ町一番の武器を手に集団で事態に当たっているんだけど、それを忘れてる人間も多くてね」


 リュクスさんは溜め息を吐く。何と言うかアニメのヒーローに憧れる子供みたいな感じなのか。それは隊長としても説得は大変だろうなと思ってしまう。警備兵なら町からお給料も出て怪我や働けなくなっても保障が有るけど、僕らにはそれはない。失敗すれば何も無いし、任務を失敗し続ければ仕事を貰えなくなる。その為に装備も揃えなきゃいけないし。


「この二人は特に軽装だからねぇ」

「そうなんだよね。それが皆に自分も出来ると錯覚させるというか……」


「御伽噺を真に受けてはいけませんわよ?」


 ラティの言葉にチーさんとリュクスさんは溜め息を一つ。リュクスさんは兜を椅子に置いてカウンターに行き、トレイを持って帰ってきた。


「という訳で、どうだろうお二人さん。経済効果も考えて私達の鍛冶師に一つ防具を注文してみては」

「営業されに来たんですの?」


「まぁね。これには思惑があるんだ。一つは君達が僕らと同じ鍛冶師の防具を身に付ければそれだけで憧れてる兵も親近感が沸くし説得しやすくなる。もう一つは我々の装備の良さを宣伝出来る」

「それと町との癒着も疑われる」


 チーさんの言葉に咳払いするリュクスさん。僕とラティは席を立とうとして袖を掴まれる。


「待ってくれ。悪い様にはしない」

「良くなる要因が何も無いですけど……」


「なら良くなる話をしよう。君たちはさっき話したように、今注目されてる冒険者だ。で、君たちの格好も注目されてる。という事はだ」

「歩く看板」


 チーさんの言葉にラティは汚物を見るような目でリュクスさんを見た。半べそ状態のリュクスさん。隊長って本当に大変な仕事だなぁ……こんな仕事もしないといけないなんて。


「ここは私を助けると思って是非……! 何卒……!」

「何なんですの今日は」


「ま、まぁまぁ……ラティ落ち着いて。リュクスさん、そうなると僕らに収入が入るんですよね?」


 目配せするとリュクスさんは大きくヘドバンするように縦に振る。


「仕方ありませんわね。話だけなら聞きますわよ」


 リュクスさんの説明によると僕らに防具を提供する代わりに肩とかに警備隊のシンボルマークを入れるのと、防具の話をされたらさりげなく説明して欲しいというものだった。更に防具の品質の良さと通常で買えば良いお値段がするのものだからと力説された。


「これからの激戦に備えるのにも一役買うと思うんだが。是非導入を検討してくれないだろうか」

「分かりましたわ。前向きに検討いたします」


「良かった! なら是非明日にでもうちの屯所に来てくれ!」

「気が早すぎますわ!」


 そこから言った言わないの押し問答が始まり、僕とチーさんはそれを横で聞きながら食事をしたりお茶をしたりのんびり話したりした。


「えぇ……」


 次の日、鍛錬から帰ってくるとギルドの前に白衣を来た襟足で縛った長いグレーの髪の人物がうつ伏せで倒れていた。


「師匠……どうします? これ」

「うちの前で行き倒れてたらどうしようもなかろ?」


 そうっすね、と言って溜め息を吐き僕はその人物の肩を揺すりながら大丈夫ですか? と声を掛けるも返答無し。耳を顔に近付けると何やら寝息が聞こえる。


「処置室……じゃなく医局かの」

「ですねぇ……」


 ギルド長の指示で僕はこの人を抱えて三回にある医局へ向かい、後をお願いし部屋に戻ってラティを起こした後、カウンターへ行って二人で朝御飯を注文しのんびりテーブルで朝の少しだけ穏やかな時間を楽しんだ。

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