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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
新領域を目指して~雪山区域~
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雪山での出来事

 それから連日朝錬が続く。毎日チーさんが居る訳ではないので僕だけの場合も増えてきた。代わりにクエストをラティと相談して決めてくれたりしている。雪が本格的に積もり始め、町の行き来も出来ないのでチーさんもここを拠点にしていてそれなら一緒にという話になった。


 チーさんが受けるクエストに混ぜてもらっているけど、シルバー一の依頼なので僕らが受けていた物よりも厳しい。チーさんの身体能力があればこそこなせるんじゃないかと思ってしまう。とは言え僕らも謎の存在。身体能力は高いほうである。


「冬実草みっけ!」


 命綱を山頂に打ち込んで崖を走るチーさん。流石にそれは僕には出来ないからゆっくりと崖の間を見ていると、その隙間にオレンジ色の花と実を付けている花を見つけた。依頼はこの珍しい花の収集だ。チーさんが来るのを待ってそれを根っこまで掘って回収する。


「さぁ持って帰るまでが遠足だからねぇ」

「遠足じゃないっすよ依頼ですよチーさん」


 命綱を手繰り寄せて山頂まで戻る。結構な距離を降りてきたので山頂が全く見えない。それにとても嫌な予感がする。


「あまり悪い方向に考えない方が良いと思うけどねぇ」

「考えたくはないんすけどね……勘が……」


 そんな話をしていると、左側から強い風が吹く。


「あ、来た」


 チーさんはその言葉を残して崖を駆け上がる。僕も少し遅れて駆け上がる。声を上げず巨体を揺らして襲ってきたのはかなり大き目のワシだった。狙いは僕。理由は簡単だ。


「急げ急げ!」


 思い切り命綱を手繰り寄せながら駆け上がる。何度か襲撃を受けながら命からがら山頂へと戻ってきた。


「お帰りなさいお兄様、チーさん」


 防寒着に身を包みながらお茶を優雅に椅子に座りながら飲んでいる妹様。僕は肩で息をしながら後ろを親指で指す。すると目を丸くして椅子とティーカップを一気飲みして片付け始めた。


「来るよ!」


 僕は飛んで前転し距離を少しとった後起き上がり振り向くと、ワシが羽を広げて僕が元居た場所に嘴を突っ込んでいた。それを見逃すわけには行かない。片付け終わったラティを抱えてチーさんと共に全力で山道を駆け下りる。


「倒さなくて良いの?」

「倒せってミッションありましたっけ? それに僕らが彼らの領域を荒らしてる気がするんで」


 荒らさなければこの衝突は無かっただろう。だから倒すとしたら被害がある時だけだ。なので今は全力で逃げる!


 山道に入ると草や木が生い茂っているので空からでは見つけ辛いけど、それでもワシは上空を旋回して僕らを探している。慎重に草木の間を縫って下山する。徐々に町が近くなると、ワシは諦めて山へと戻っていった。


「冬だから食料が少なくて襲ってきたんですかね」

「うーん」


 僕もチーさんにそう言ったけど違う気がするし、これまた何やら嫌な予感がした。


「詳細をギルドに報告しよう。ひょっとすると別の依頼が来るかもしれない」

「ですね」


 僕らは気を付けつつ町へと戻りギルドへ帰還。依頼品を提出して報告書に今回の出来事を詳細に記して提出した。


「私は今回楽で良かったですわ。帰りもお兄様が抱えてくださいましたし」

「そりゃ結構。で、ラティはどうなんだい? 勘が何かを告げたりしてないのかい?」


 ギルドで襲い夕食を取りながら三人で寛ぐ。


「……まぁチーさんが思っているのと同じですわよ」

「同じとは?」


「黒鎧」


 それを聞いて嫌な予感の正体に気付く。荒れ地でも暴れていた奴らだ。それに冬支度自体をしているであろう巨大ワシが冬実草を狙ってきたのが、例えば雛や子供の病気の治療だったとしたら。


「なるほどなるほど。愛好家ってのは何処にでも居るからねぇ。快適なところでレアな生物の雛を悪戯に飼ってみたいとかね。私たちのお財布からは出せない値段で依頼を出していたら……」


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