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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
新領域を目指して~雪山区域~

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雪山の朝錬

「まぁそう直ぐには何も起きないじゃろうが、その時が来たら相談させてもらおうかの。それとは別に鍛錬はこれから毎日朝やるでな」

「え!?」


 僕は驚きのあまり立ち上がりその衝撃で筋肉痛が誘発、背筋を伸ばして硬直してしまった。


「それよそれ。御主は楽したわけじゃないじゃろうが、修行した時より体の使い方が荒くなっとる。その所為で妹と同じくらいの筋肉痛になっとる」

「は、はい……」


 めっちゃ痛いし動きたくないし動けない。こんな有様で鍛錬なんて出来るんだろうか……。


「それにいくら若いとはいえ激しく動いた後は体を解さなければガタが来るのも当たり前じゃよ? 温泉に入る程度では何ともならんわ」


 そう良いながらギルド長は立ち上がって僕の前に立ち、腕を揉み解した後で背骨の辺りを揉み解してくれた。すると僕の筋肉は緊張が解けて椅子に倒れこんだ。


「覚えておくと良い。こうして揉み解すのは大事じゃが、強くやりすぎると駄目じゃから筋肉に聞きつつやると良い。痛いか痛くないか、効いてるのか効いてないのか。本当のところは御主じゃなければ分からんからの」


 僕は頷く。そう言えばうちの爺さんも、肩を揉んだ時良い時と悪い時で反応が違ったのを思い出す。長年掛けてそれを掴んだなぁそう言えば。


「今回だけは商談成立でサービスじゃ。御主ら二人とも今より格段マシにしてやるからの。チー、お前は妹の方を頼む」

「あいあいさー!」


 体が満足に動かない僕らはあっさり連行され、処置室で御餅みたいに捏ねられたり揉み解されたりした。数時間後軟体動物の様になってしまい、何とかベッドに辿り着き就寝。


「おはよー康久!」


 バゴーン! とドアをぶち壊された音に飛び起きる。体が動く感動より先にドアをぶち壊した上に窓まで破壊したそのパワーに驚いた。そして何も言わせずまた連行され突いた先は雪掻きされた山の中腹だった。


「いや寒っ!」

「気にしないきにしない! って人間は体毛が無いから寒いのか」


 顔は人に近くて耳が頭に付いているけど、体は豹柄の毛で覆われるのが見えるしそれ以外は皮の鎧とスカートを履いてるしブーツも履いてる。が僕は裸足で鎧も身に着けていないんだけど。


「よう来たの。気合が入っておるではないか良い良い」


 長く伸びた顎髭を右手で触りながらご機嫌なギルド長。ただ拉致られただけなんですけどね。


「じゃあ後は宜しく」

「宜しく、ではないチー。御主も弟子故久々に稽古を付けてやる、というか久しぶりじゃからどんな感じか組み手をして見せてもらおうか」


 ギルド長とチーさんは向き合い一礼すると、互いの右手首を合わせる。そこから左で牽制したり体の動きで牽制しつつなんとか右手首を取ろうとしているのが分かる。


「ほっ!」

「なんと!」


 一瞬針の穴を通すくらいの隙を突いてギルド長が右手首を掴み、引いて押してバランスを崩したところを懐に入り背負い投げた。チーさんは素早く自ら回転し着地した。だけど攻撃を仕掛けようとしても、ギルド長は重心も低く体勢を崩せそうに無い。


「とまぁこんなもんじゃ」


 数度繰り返した後、最初に投げたのと同じ様な状況になったけど、今度は着地する瞬間を狙ってギルド長は素早く回り込み低く投げて勝負あり。全部この為の布石だとはチーさんも思っていただろうけど、それでも避けれない。


「またやられた」

「御主元々の身体能力は高いんじゃから、経験を積めばこんな爺くらい何とでもなるわい。はい次ー」


 流れ作業のように僕の番が来た。以前は何とか渡り合えた気がしたけど、今回は面白いように投げられる。裸足だからとかじゃなく、恐らくギルド長がほんの少しだけ今本気を出しているんだと思う。あっさり崩され投げられる。しかもフォローするように僕を叩きつけずに起き上がらせて。


「お前さんは”投げられない”っていう一点のみを考え過ぎてて簡単に崩せる。そこを良く考えるように。ではまた明日」


 何も言えずただ一礼して皆でギルドに帰った。ここまで皆の注目を得て、気付かないうちに慢心していたのかもしれない。そう思うと余計に恥ずかしかった。

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