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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
竜の都編

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説得無用

「落ちろ!」


 ゴロゴロと雲が鳴りピカっと光ると、ピシャン! と言う音の後で轟音が辺りに響く。最終決戦の為に温存していた呪力を放出していく。雷を発生させるだけでもかなり呪力を喰うが、更にそれを狙った相手に当てるので大分消耗してしまった。


だがこれまで我慢に我慢を重ねて溜め込んだ呪力はまだまだ残っている。


「走れ雷鳴! 疾風迅雷!」


 更に雷を呼び風も巻き起こし妖怪たちを纏めて消すべく呪力を放出。ここが使いどころだと思って惜しみなく注いでいく。ちなみに縄と三鈷剣をアンテナとして味方の位置を把握出来ているのでこちらの被害はない。


「随分と優雅だな姉上様は」


 例えどれだけ生成しても出た瞬間に風に飲まれ集められ雷に打たれて消去される。ホント我慢し続けてのブッパだから堪らないものがあるなぁ。現世では貯金すらした覚えが無いが、貯金して高い物を買う時もこんなに気分が良いものなんだろうか。


「まさかこんな手を打って来るとはねぇ……。道中でもっと呪力を消費させるべきだったか」

「一応禁忌以外は一通りマスターしてる。周りの皆の御蔭でここまで呪力を温存で来た。風は僕に吹いている」


「良いだろう、お前が御望みの禁忌の術を見せてやる!」


 別に望んでないし、その姿も元々は禁忌とされている術を使ってのものだからもう御腹一杯なんだけどな、と言いたいところだがそんな場合じゃないので急いで攻撃を仕掛ける。拳がもう少しで顔面に直撃すると思ったが姉竜人は叫び声を上げ、それと同時に体の中から死霊が数多く湧き出て来て阻まれてしまう。


それでも諦めずに風神拳を放つもその死霊たちを吹き飛ばすだけで姉竜人の手前で遮られる。もう一度と思ったところで三鈷剣が雲を吹き飛ばし僕の手元に戻って来たので右手で獲り、縄も戻って来たのでそのまま姉に向けて放つ。


恐らく、これから出す術の為に貯めこんでいた首都の人たちの魂を消費し、その残った残骸である恨みを術として放ったのだろう。となると凄い技を出すとは言え、内部エネルギーはもう大分消耗していて残量もそんなにない筈。攻撃を防ぐのにも力を消耗しているだろうしここは押しまくる!


「ウオオオオオ!」


 姉竜人は僕を無視して地面に向けて青白い炎を右手で放つ。それに対して焔祓風神拳を放ち妨害するも再度放った。姉竜人の狙いは地面にある。僕の仲間を直接狙っているなら妨害された今同じところに放たないだろう。


姉の当初の狙いを思い出し僕は、三鈷剣たちと共に姉の放つ方向へ立ち塞がる。だがブラヴィシすら取り込んでしまった今、この行為に何の意味があるのか……そう言えば師匠の話によるとブラヴィシの良心が今ティアの中にいる。ティアが無事だとなると本体は消滅してもブラヴィシの魂自体は姉と共にいるのか。


「こんな不安定な状態で星の意思を乗っ取ってブラヴィシは平気なのか? また定着しないで新しい体を探す羽目になるんじゃないのか?」

「そうなったらそうすればいい。私はこの子に生きていて貰いたい、それだけだ」


「ブラヴィシが生きている限り姉さんもこの世界から帰らないつもりなのか?」


 僕の問いを無視し攻撃を続ける姉竜人。まぁクロウに利用され魔術師会への推薦も無くなった今、姉の拠り所はもうそこしか無いのかもしれない。僕以上に現実に帰っても罪だけが残り一生塀の中で暮らすと思えば帰りたいとは思わないだろう。


「姉さんはまだ帰れるんだ。現実に」

「帰ったってもう何もない」


「生きていれば色んな出会いがあるさ。正直に唆されてしまったというのを話して罪を償ってくれ」

「罪を償うですって……? アンタのせいで私の人生は滅茶苦茶になったのに……あの子の件が無ければ、お前が野上に目覚めなければこんな状況にはなって無かった……!」


「いや、元の世界ではタダの引きこもりで婆ちゃんの脛齧ってただけだったじゃないか。あのまま野上は消えゆく定めだったんだよ」

「馬鹿言わないで! ずっと続いて来たものが終わって良い訳ない! 私の手で残さないと……私こそが野上の正統後継者なのよ!」


「現実に戻ればそうなるだろう? だから大人しく帰りなよ姉さん。向こうには貴女の邪魔をする人間はもう居ない筈だ」

「嘘よ! どうせ……どうせ魔術師会の連中が来るわ爺さんの約束を果たせって……そうなれば技術も書籍も全部奪われて御終いよ!」


「そこを何とかするのが次代の野上の役目なんじゃないのかな。この星を破壊してもそれはどうにもならない。実績にならないのはクロウが話した通りだ違うかい? だからここは一刻も早く元の世界に戻って」


 僕が話している途中で姉竜人は攻撃を止めて肩を振るわせた後で目を見開き笑い始めた。出来れば大人しく帰って貰いたいが故に頑張って説得したんだけど。


「アンタってその恰好と同じでゴキブリみたいにしぶといからさ、やっぱここで確実に殺してから帰るわ。アンタがどっかで生きてるかと思うとおちおち寝ても居られないしぃ」


 ゴキブリじゃないけどねアリだけどね。瞳孔かっぴらいた状態だからもうこれ以上の会話は無理だろうな。元々僕に対する恨み辛みで始めたんだろうから仕方ないのかもしれないが。





読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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