表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界狩猟物語  作者: 田島久護
竜の都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

666/675

竜人との戦い

「ウアアアアア!」


 空へ向かって叫び声をあげた後、晴天だった空は曇り辺り一面北極に移動したのかと思うほど冷え始め、全ての命が呼吸を止めたような気がした。身震いし落ち着かなくなり野生の勘と言うかDNAに刻まれた命の危険を察知する能力が働いたのか、一刻も早く距離を取らないと不味いと体が自然とゆっくり後退りし始める。


姉竜は上空へと浮かび上がり、陽があった場所に覆い被さる位置に移動し終えるとどす黒い炎の塊となった。やがて空気が振動し始めそのどす黒い炎の塊も振動し、中心部分から亀裂が入り始め端まで行くとガラスの割れた音がする。


「風神拳!」


 どす黒い炎が割れた中から黒い煙が出てこちらに向けて凄い速度で飛んで来たので風神拳を繰り出す。だがそれはその煙を吹き飛ばしただけで、中から現れたのは立派な角の生えた女性の竜人だった。


「効かないね虫けらが!」


 拳が眉間を捉えるまであと一センチくらいのところで何とか転げる様に避けるも、そのまま地面が叩れ表面部分が吹き飛んだお陰で吹き飛ばされる。更地なのでぶつかるところも無く転げていたが、目の前に竜人が現れサッカーボールキックの体勢になっていた。


咄嗟にクロスアームブロックをして防ぐも衝撃を殺しきれず更に吹き飛ばされ始めたので、ティアを直ぐに頭から剥がして遠くへ放り投げた。


「所詮お前は虫。私は竜だ。勝ち目があると思っているのか!?」


 このまま転がっていては蹴られ続けて火山にでも落とされかねない。背中で跳ねて自ら回転し勢いを殺していると蹴るのが好きらしくまた蹴られそうになった。何とかインパクトの瞬間に上手く転がり、竜人の体を走って避けてから空中で浮遊しつつ体勢を立て直す。


「まさか竜に変身する研究をしていたとはね……ブラヴィシを利用したのか?」

「ブラヴィシと言うのはあの子の為の革に過ぎないのさ。使えなくなったから再利用するのは当たり前だろう? あとお前に不意を突かれてダメージを負わされた帰り道に遭遇した竜の戦士を捕獲してね。それも素材に使い、更にパルヴァの部下も念には念を入れて使った。結果、このパーフェクトな姿になったんだよ!」


 高笑いする姉竜人。悪魔の次は竜でその次は竜人か。バリエーション豊富で何より。出来れば隠し玉はもう無しにして欲しいもんだ。それにしてもあの竜の戦士すらもあっさり取り込むなんてホント凄いな、この人の執念は。確実に身内の僕がここで始末しないと、この世界に生きる者たち全てを殺し尽くそうとし兼ねない。クロウもそれを見逃し利用するのは間違いないだろう。


「パーフェクトだろうと何だろうとお前はここで狩猟される運命だ」

「たかがアリ如きに私が倒せる訳ないだろうが!」


 クロウと戦って分かったが、武術の素養の無い人と格闘戦を行うと不規則さはあるが隙が大きく、急に格闘家の才能に目覚めて体を慣れさせないと上手く戦うのは難しい。僕も一度この星を離れ蟻人間として生きた時の経験があったからこそ格闘をやれてる。


殴り掛かって来て手が伸び始めたところで側面の腕にこちらの腕を当て逸らし、不用意にもう一方の手やどちらかの足を出して来ればそれを利用し放り投げる。嫌な話だが姉には小さい頃から暴力を振るわれて居たので、殴り方や蹴り方の癖が分かっていた。なのでどれだけ早くされようとある程度予測が出来る。


「糞ッ! 何故捕まらない!」

「不意打ちを狙った方が良いんじゃないか? アンタの御蔭で防御するのには慣れてるんでね」


 捉えられず苛立ち、手で印を結び始めたので姉竜人の周囲をゆっくり回り続ける。捕らえるという一点に囚われ執着しているので、十中八九動きを止める術を出して来るのは間違いない。なので集中出来ない様にしながら何か出して来た時に即対応出来る様にしておく。


「つけあがるなよ! 悪鬼羅刹曼荼羅陣!」


 姉竜人の背後に青白い炎による大きな陣が出現し、そこから餓鬼や赤鬼に青鬼、三頭犬にしゃれこうべなど妖怪の群れが現れこちらを目指して飛んで来る。それに三鈷剣と縄が反応し迎撃してくれているので、僕も二つに合わせて風神拳を放ち消していく。


姉竜人をチラリと見るとこれだけの召喚を行った御蔭で、鱗の呪という崩れた文字が大分減っていて大分消耗しているのは間違いない。何とかここを凌げば一気に押し返せる!


光雨魔法(リヒツ・レーゲン)


 下からその言葉が聞こえて即座に防御の体勢を取る。空から光の雨が降り注ぎ妖怪たちはそれに触れると焼かれているのか湯気を出し始めた。


「相棒!」


 声がする方を見るとそこには大和での相棒鬼童丸が玉藻に手を引かれて来ていた。


「鬼童丸、主は自分で飛べぬのか」

「酒井様!」


 玉藻たちの横を素早く通り過ぎ、酒井様は踊る様に宙を舞い妖怪たちを妖刀ヒトワタリで切り刻んで行く。


「康久!」


 妖怪たちを神刀皇で切り伏せながらこちらへきて僕の背に自分の背を当てるルナ。


「酒井様たちはルナが?」

「違うわよ。鬼童丸たちはアタシたちを気に掛けてくれていて、ルロイとの交渉が不調に終わった後何とか国を説得してきてくれたそうよ」










読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ